現実と理想のギャップが生じた原因は何か

M&A後の経営 3年先を見据えた統合人事のあり方
村上氏:当初の文化的摩擦や擦れ違いが、拡大してしまったというケースも珍しくない。心理学用語で「スキーマ(思い込み)」という用語あるが、統合初期の大変な時期に、相手にネガティブな思いを持ってしまうと、相手の良い点があったとしてもそれを正しく認知・記憶できず、悪い部分ばかり強く印象に残ってしまうことがある。それが少しずつ相手にも伝わり、積み重なった擦れ違いが信頼関係を損ねる。きちんと相手の発言の前提・背景、文化的な違いを考慮することが重要。

堀之内氏:ベネフィットの現実と理想のギャップについてだが、日本企業の場合、国民皆保険制度が整っているため、ベネフィットのかなりの部分が法定給付で賄われる。裏を返せば、日本人が海外の会社を見る際、ベネフィットの部分を軽視する傾向につながっている。

櫛笥氏:経営者報酬に関しては、「リテンション」というキーワードに対する日本と海外の経営陣との間に誤解があることが多い。日本的な感覚での「リテンションパッケージ」は、「あなたには引き続き買収会社に残って頂き経営を任せたい」というメッセージが含まれている。しかし、受け手の方は「辞めるよりはいたほうが得だ」といった認識しかしていない。 買収側に対してリテンションパッケージを何のために入れるのか、きちんと認識されておらず、相手にも伝えきれてない場合が多い。

片桐氏:日本の人事部のグローバル化が遅れていたのが大きな原因である。伝統的に(日本人相手の)労務管理や精緻な賃金テーブルの管理といったオペレーション業務ばかりしてきたので、グローバルなM&A戦略実行の文脈の中で人材マネジメントはどうあるべきか、を理解しリードできる人材が圧倒的に少ない。

ギャップを解消するには、どういう打ち手が日本企業に必...

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