リポートを2回に分け、初回は人事自身がどのようなキャリアで現職に就いたか、人事という職種についてどのように感じているか、そして日々の研鑽状況にフォーカスしたいと思う。さっそく内容を紹介してみよう。
規模が小さいほど人事業務の掛け持ちが多くなる
まず回答者がどんな業務に就いているかを見てみよう。全体で見ると「新卒採用」が最も多く77%、続いて「教育・研修」71%、「中途採用」70%までが70%を超えた業務だ。
残りの業務を担当している割合はぐっと低くなり、「労務」や「人事管理」はともに55%、「人事戦略」46%、「契約・派遣・アルバイト採用」は43%だ。
この業務別パーセントを合計すると466%になる。つまり掛け持ちが多いことを意味している。大企業の場合は、採用、教育、労務が別になっていることが多いので、規模別に業務パーセントを合計してみた。
「1001名以上」の企業は331%、「301~1000名」の企業は440%、「1~300名」の企業は532%。予想どおり規模が小さいほど掛け持ちの割合は高くなっている。
「他部門を経て人事部門」に異動がかなり多い
人事部門への配属について聞いてみたが、「入社時から一貫して人事部門」は「1001名以上」では31%と高いが、「301~1000名」では半分に減少する。もっとも「1~300名」では29%と、「1001名以上」に近い数字だ。
「人事→他部門→人事」というローテーションで人事部門に戻った割合は「1001名以上」と「301~1000名」の11%に対して、「1~300名」では3%と低い。「入社時から一貫して人事部門」の比率が高いことと併せて考えると、中小企業ではローテーション機会が少ないことが推測される。
最も多いのは「他部門を経て人事部門」で、どの企業規模でも半数に近い。現場の仕事を経験・理解してから、人事へ配属するのは納得できる施策だ。
興味深く感じたのは「専門職として中途採用」がかなり多いことだ。「1001名以上」では9%と低く、人事にはプロパー社員を充てているようだが、「301~1000名」と「1~300名」は20%前後だ。規模が小さい企業では専門性の高い人事職人材を自社内で育成しづらく、外部から調達する傾向が強いことがうかがえる。
8割の人事担当者は人事の仕事が「好き」
人事という仕事に対する「好き」の度合いを聞いたところ、圧倒的多数が「好き」である。どの企業規模でも「とても好き」「好き」を合わせると8割に近い。中でも「1001名以上」では「とても好き」が38%と高くなっている。「どちらともいえない」もあるが、「嫌いだ」「とても嫌いだ」はほとんど皆無。人事担当者は、自分の仕事にやりがいを感じ、プライドを持っているようである。
担当領域別での違いを見てみると、「とても好きだ」と回答した割合が多いのは「海外人事」の40%、次いで「教育・研修」(30%)、「新卒採用」「中途採用」(29%)が続く。逆に割合が低いのは「福利厚生(社会保険、施設、法定外福利)」(23%)、「契約・派遣・アルバイト採用」「労務(就業管理、労使関係、安全衛生)」(24%)となっている。管理業務的な色合いが強い領域ほど、満足度は低いといえる。
人事の専門家としてのキャリア形成
「人事の専門家としてキャリアを積んでいきたいか」との設問でも前向きな姿勢が読み取れる。「できれば他部門に転出したい」「直ちに他部門に転出したい」はほぼゼロだ。
「ライフキャリアとしたい」「ある程度のキャリアを積みたい」が圧倒的に多く、9割前後に達する。特に「1001名以上」では「ライフキャリアとしたい」が多く、6割に達している。仕事への満足度が高く、積極的な姿勢が感じられる。
人事分野の専門家として研鑽を積む
「人事分野の専門家として能力向上につとめているか」という設問でも前向きだ。「常につとめている」「つとめている方だと思う」が圧倒的に多い。
ただし規模によって違いがあり、「つとめている」は「1001名以上」では94%に達しているのに、「301~1000名」では80%、「1~300名」では75%と下がっていく。
そして「どちらともいえない」は「1001名以上」では5%だが、「301~1000名」では14%、「1~300名」では18%と増えてくる。
回答から読み取れる傾向からは、規模が大きいほど自己研鑽に熱心のように見える。
スキルアップに使う費用は毎月1万円未満が半数以上
自己研鑽に熱心な人事担当者だが、では毎月業務に関連する書籍費や会費にどの程度自己投資をしているのだろうか。規模に比例している項目は「ほとんどない」だ。「1001名以上」では9%だが、「301~1000名」では12%になり、「1~300名」では18%と増えていく。
全体で見ると、自己投資している人のボリュームゾーンは「5000円未満」(30%)、「5000円~1万円未満」(26%)、「1万円~2万円未満」(19%)だ。規模別で見た場合に異なる傾向値を示しているのは「1001名以上」の「1万円~2万円未満」(29%)と、「301~1000名」の「5000円未満」(38%)だ。
全体的に言えば、半数以上の人事担当者が毎月自己投資している金額は「5000円以上」で、「1万円以上」の人も4割に達している。
このようなデータで「5000円」「1万円」という数字を読んでも実感が湧かないが、決して少ない数字ではないと思う。書籍の価格を1冊1000円程度とすると、5000円なら5冊、1万円なら10冊だ。人事にかかわる領域の本だけでの読書量としては多いと評価できる。
次回は人事の抱える課題と、変わりつつある人事の役割にフォーカスしてリポートする。
【調査概要】
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:WEBアンケート
調査期間:2012年3月2日~2012年3月15日
回答者数:292名
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