「人事の課題とキャリア」に関する調査レポート第3回は、「組織の実状」と「個人の取り組み」の観点から、「人事担当のキャリア」についてレポートする。HRテクノロジーの導入やタレントマネジメントの検討など、人事を取り巻く環境は、次第に専門性と複雑性が高くなっている。そんな中で、人事担当のキャリアパスやスキル形成に、何が求められているのだろう。
気になる結果は、以下の調査レポートでご確認ください。

●「最初は現場に配属し、その後管理部門での経験を積むべき」という意見が半数以上。しかし、管理部門以外への初期配置は、わずか17%にとどまる。

「人事のキャリアパスはどうあるべきか」という質問に対して、「最初は現場に配属し、その後管理部門での経験を積むべき」という回答が55%でトップとなった。以下、「ローテーションの一環であって人事の専門家でなくても良い」(20%)、「人事の専門家としてずっと管理部門での経験を積むべき」(19%)と続く。この傾向は、従業員規模別で見ても変わらない。
しかし、「人事部門で最も多い異動パターン」を聞いたところ、「営業や製造など現場を経験してから人事に異動」という回答は、わずか17%にとどまった。
「人事としてずっと異動せず、特定の領域に取り組む」「人事としてずっと異動せず、担当領域を変更していく」「総務や経理など管理部門の中で異動」など、管理部門での経験を積ませるケースが、実に62%という結果である。
「最初は現場から」という理想はあれど、実際には現場を経験できないまま、管理部門の中でキャリアを形成していくケースが多い、という実態が浮き彫りとなった。
【図表1】あるべき人事担当のキャリアパス

HR総研:人事の課題とキャリアに関する調査 人事のキャリア

【図表2】人事担当で最も多い異動パターン

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●人事部門の人材配置・育成課題が「ある」という回答は、約8割

人事担当のキャリアパスについて、理想と現実にギャップがあることが分かった。改めて「人事部門の人材を配置・育成する上での課題があるか?」と質問したところ、77%が「ある」と回答した。
具体的にどのような課題があるか、フリーコメントを求めたところ、「ローテーションを行うこと自体が難しい」という意見が散見された。以下の抜粋コメントから、理由と背景を確認して欲しい。

・業務効率化により人材が絞られていく中でローテーションを行うことが徐々に難しくなってきている(1001名以上/メーカー)
・これまで入社時は、労働時間管理や給与計算など基本的な作業から入れたが、今の時代アウトソーシングや自動化でブラックボックス化されており、基本を知らずに管理業務がメインとなって育成せざるを得ない(1001名以上/情報・通信)
・人事部門に一度配属してしまうと、動かすことが難しい(1001名以上/商社・流通)
・守秘情報を扱うという意識の関係上、ローテーションをかけにくい(301~1000名/メーカー)
・他の部門で成功しなかった人やメンタル不調に陥った人が異動してくる。新卒で入るケースも少なからずあるが、10年以上異動がなく同じ業務を続けている(301~1000名/メーカー)
・多様な人材(他部門から異動、他社から中途入社、学歴が異なる新卒採用、適性も様々)で大企業ほどの人数ではないため、業務領域を固定する者、様々な経験を積ませる者など個別に検討せざるを得ない(301~1000名/メーカー)
・他部署に異動が難しく、属人的になりがち(300名以下/メーカー)
・人事部門も他部門とのローテーションの一環で異動があるが、他部門と比べ専門性が高く、身につかないうちに異動となるケースが多いと感じる(300名以下/金融)
【図表3】人事部門の人材配置・育成課題の有無

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●「人事職」として転職経験は約4割。企業規模が小さいほど高くなる傾向。

人事のキャリアを語る上で、「転職」の動向も気になるところだ。「人事職」としての転職経験について質問したところ、「(経験が)ある」という回答は36%だった。企業規模別で見ると、従業員規模が小さくなるほど「人事職」としての転職経験の割合が高くなっている。
「人事職」のキャリア採用は、中堅・中小企業ほどニーズが高い傾向にあることが分かる。
【図表4】人事職としての転職経験の有無

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●約半数が「(人事職を)ライフキャリアとしたい」と回答。大企業では3割にとどまる。

「今後も人事部門でキャリアを積んでいきたいか」と質問したところ、「ライフキャリアとしたい」(42%)がトップとなった。ただし、大企業では30%にとどまっており、「ある程度人事でキャリアを積みたい」(49%)がトップとなっている。
企業規模が大きくなるほど、たくさんの部署や職種が用意されているため、キャリアの選択肢も広がるのだろう。
それでも、「ライフキャリアとしたい」「ある程度人事でキャリアを積みたい」という肯定的な意見は、全体で80%を占めている。これまでの調査結果でも、同じく8割以上が肯定的な回答であり、一度人事を経験した人にとって、「人事職」の人気は依然として高いようだ。
【図表5】人事部門でキャリアを積んでいきたいか

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●人事部門の能力向上の取り組みとして「社外人脈」が3位に浮上

「人事分野の専門家として能力向上に努めているか」と質問したところ、「常に努めている」「努めているほうだと思う」という回答が79%に及んだ。
これらの回答者に、「どのような能力向上に努めているか」と聞いたところ、「専門知識の高さ」が62%でトップとなった。以下、「情報感度」(50%)、「社外人脈」(48%)、「企画・戦略立案力」(42%)、「コミュニケーション能力」(35%)、「情報収集力」(35%)と続く。
昨年度調査では、「社外人脈」は4位(39%)だったが、今回調査では9ポイント上がって、3位に浮上した。
HRテクノロジーの導入やタレントマネジメントの検討など、人事を取り巻く環境は、次第に専門性と複雑性が高くなっているのが実情だ。専門知識の高さも必要だが、実際の事例の収集も欠かせない。その手段として、セミナーやWebサイトなどの公開情報の収集が挙げられるが、やはり価値が高いのは、「社外人脈からのリアルな一次情報」だろう。
これからは「社外に出ていく」という取り組みが、人事部門により求められる。
【図表6】人事分野の専門家として能力向上に努めているか

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【図表7】どのような能力向上に努めているか(「常に努めている」「努めている方だと思う」と回答した人のみ)

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●人事業務関連の資格保有率は、中小企業ほど高い傾向

続いて、人事業務関連で保有している資格について質問したところ、昨年の調査同様、「衛生管理者」(28%)がトップを占めた。企業規模別で見ると、300名以下の中小企業で、資格を保有している割合が高いことが分かる。特に「社会保険労務士」の資格保有者は、企業規模が小さくなるほど高くなる。
一般的に「士業」にまつわる業務はアウトソーシングが多いイメージがあり、近年は「労務管理」の業務効率化ソリューションも普及してきている。企業規模が小さくなるほど、こうした作業が内製化されており、「業務に直結する資格」として、ニーズが高いのかもしれない。
【図表8】人事業務関連で保有している資格

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●会社の支援は「社外セミナーや研修参加」が約6割。大企業では「交流会参加」を推奨し、中堅企業では「関連書籍購入」支援の割合が高い。

人事部門のスキルアップや情報収集のために、会社はどのような支援をしているのだろう。調査の結果、「社外セミナーや研修参加」の割合が61%で最も高かった。以下、「同業界の人事担当者との交流会参加」(34%)、「異業種交流会参加」(31%)、「関連書籍購入」(31%)が続く。
企業規模別で見ると、大企業では「同業界の人事担当者との交流会参加」(40%)、「異業種交流会参加」(45%)の割合が、他と比べて高い。一方で、中堅企業では「関連書籍購入」(38%)が他に突出している。
人事部門の能力向上の取り組みとして「社外人脈」が3位に浮上していたが、大企業ほどその意識が高いようだ。
中堅企業では「交流会参加」の支援はまだまだ低く、セミナーや書籍などの公開情報収集、あるいは「研修」という観点からの支援が高いことが窺える。
【図表9】人事部門のスキルアップや情報収集のために、会社はどのような支援をしているか

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●約7割が、社外の人事ネットワークは「5名以下」と回答。「0名」は2割。

「人事領域」という職種に関して言えば、「採用」を除いて「他社と競合する」というケースはあまり存在しない。そのため、社外に仕事上の相談が出来る人事ネットワークを持っていると、人事施策やソリューションを検討する際、非常に役に立つ。
そのような社外ネットワークを持っているか、と質問したところ、「5名以下」と回答した企業が66%という結果となった。一方で「ネットワークはない(0名)」という回答が21%も存在した。
企業規模別で見ると、大企業や中堅企業でも「ネットワークはない(0名)」が17%存在しているが、中小企業になると26%と跳ね上がる。社外に出る機会が少ないことも影響しているのだろう。
社外のネットワークから得られる情報は、公開されていない「一次情報」の宝庫だ。「ネットワークはない(0名)」と回答した企業は、ぜひ「交流会」などへの積極的な参加をお薦めしたい。

「社外人脈の作り方」に関する具体的な方法についても、広くコメントを募集した。気になる結果は、ログインしてご確認下さい。

【図表10】仕事上の情報交換ができる社外の人事ネットワークの人数

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】人事の課題とキャリアに関するアンケート調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2019年5月8日~5月15日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び未上場企業の人事責任者・ご担当者
有効回答:137件

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Eメール:souken@hrpro.co.jp

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