●人事職としての転職経験は、大企業は4人に1人。その他は2人に1人。
人事職としての転職経験の有無について質問したところ、全体の44%が「(転職経験が)ある」と回答した。メーカー、非メーカーともに、転職経験者の比率は4割前後で変わりはない。企業規模別で見ると、従業員数1000名以下の企業では、転職経験の有無がほぼ半々であるが、従業員数1001名以上の大企業では、転職経験者は26%にとどまっている。この傾向は昨年の調査結果と比較しても変わらない。やはり、中堅企業や中小企業では、人事経験者の中途採用ニーズが高く、大企業では少ないことが分かる。
【図表1】人事職としての転職経験の有無
●8割強が「今後も人事部門でキャリアを積みたい」と回答
「今後も人事部門でキャリアを積んでいきたいか」と質問したところ、51%が「ライフキャリアとしたい」と回答した。「ある程度人事でキャリアを積みたい」(34%)も含めると、実に85%が人事部門でのキャリアアップを希望していることになる。
人事部門を一度でも経験した人は、その魅力の虜(とりこ)になってしまうらしい。
【図表2】人事部門でキャリアを積んでいきたいか
●人事担当者は自己研鑽にも積極的
続いて、「人事分野の専門家として能力向上に努めているか」と質問したところ、「常に努めている」(50%)、「努めている方だと思う」(30%)という結果となった。これら80%の回答者に、「どのような能力向上に努めているか」を訊ねたところ、「専門知識の高さ」(66%)がトップとなった。続いて、「情報感度」(49%)、「情報収集力」(42%)が続く。
前回のレポートでは、「人事に必要とされる能力・スキル」として、「コミュニケーション能力」(76%)が1位に挙げられていたが、実際に「コミュニケーション能力」の向上に努めていると回答した人は38%にとどまった。コミュニケーション能力が必要と認識をしていても、個人レベルでの能力開発は難しいのかもしれない。
【図表3】人事分野の専門家として能力向上に努めているか
【図表4】どのような能力向上に努めているか(「常に努めている」「努めている方だと思う」と回答した人のみ)
●大企業に多い「メンタルヘルスケア」「キャリアカウンセリング」資格取得者
自己研鑽に余念がない人事担当者が保有する「人事業務関連」の資格について質問した。
「人事業務関連で保有している資格はない」(41%)が最も多いものの、保有資格のトップは「衛生管理者」(33%)となった。この資格は労働安全衛生法により、従業員数50名以上の職場では選任が義務付けられているため、理解できる結果である。
従業員規模別に見てみると、従業員数300名以下の中小企業では「社会保険労務士」(14%)の保有者が多い傾向にある。
従業員数1001名以上の大企業では、「メンタルヘルスマネジメント検定」(20%)、「キャリアカウンセラー」(15%)、「産業カウンセラー」(11%)の3つが、他の企業規模より多くなっている。
「心の悩み」や「キャリア相談」など、従業員との対話で必要となるスキルの取得が注目されているようだ。一方、「社会保険労務士」や「企業年金プランナー」となると、逆に中堅・中小企業よりも少ないようだ。
【図表5】人事業務関連で保有している資格
●会社の支援は「社外セミナーや研修参加」が6割でトップ
では、人事部員のスキルアップや情報収集に対して、会社はどのような支援をしているのだろう? 調査の結果、「社外セミナーや研修参加」(61%)がトップとなった。社内稟議に回す際も、決裁者が一番納得しやすい、という背景もあるだろう。
企業規模別で見てみると、従業員数301~1000名の中堅企業では、「関連書籍購入」(42%)が他に突出している。一方、従業員数1001名以上の大企業では、「異業種交流会」(35%)、「同業界の人事担当者との交流会参加」(33%)の割合が高い。人的交流が人材の成長に寄与することを、大企業の人事責任者は、肌で感じているのだろう。
【図表6】人事部門のスキルアップや情報収集のために、会社はどのような支援をしているか
●社外の人事ネットワークは「5名以下」が6割
同業、異業を問わず、「交流会」が盛んになっている昨今、「仕事上の情報交換ができる社外の人事担当者、及び人事経験者との人脈・ネットワークの人数」について質問したところ、「5名以下」と回答した企業が60%に及んだ。中には「ネットワークはない(0名)」という回答が24%もある。
昨年の調査では、「5名以下」と回答した企業が72%だったので、今回の調査では12ポイントダウンしたことになる。
交流会への参加を積極的に支援している大企業でも、「10名以下」と回答した企業が69%だったことを考えると、まだまだ心もとない。人事部門で必要とされるスキルとして、「情報収集」や「情報感度」を重視する企業は約半数存在したが、「人的ネットワーク」から得られる「他社事例」は、まさに「知恵の泉」である。社外の人事ネットワークの数と質は、極めて重要な財産だ。
【図表7】仕事上の情報交換ができる社外の人事ネットワークの人数
●人脈構築のスタートは「社外に出ること」
では、社外ネットワークを1名以上持っている人は、どのようにして人脈を構築しているのだろうか。
調査の結果、「人事担当者向けセミナー・勉強会」(48%)、「人事担当者向け研修」(36%)、「異業種交流会」(29%)が上位を占めた。
いずれも、「社外に出る」ということがキーポイントだ。
フリーコメントを見ると、人脈構築のために「定期的」な交流を持ち続ける、という回答が多い。やはり「人脈」は、一度の名刺交換では得られない。その後の接点を保つ努力が必要、ということだろう。
・定期的に交流(1001名以上/サービス)
・勉強会とその後の懇親会でざっくばらんな話をしながらの情報交換(1001名以上/サービス)
・定期的な情報交換会(1001名以上/メーカー)
・定期的な情報交換(301~1000名/メーカー)
・定期的な会食(300名以下/マスコミ・コンサル)
【図表8】人脈の構築方法
【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】人事の課題とキャリアに関するアンケート調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2018年6月8日~6月15日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び未上場企業の人事責任者・ご担当者
有効回答:165件
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