次世代の人事について考える「NEXT HR」に関する調査の第2弾を報告する。
AIやビッグデータ分析といったHRテクノロジーは、人事に影響を及ぼすと考える人が4割以上に上った。その影響として、定形業務や単純作業はHRテクノロジーが行うようになり、人事は今以上に戦略性や人間力が求められるところでの活躍が期待されるだろうとのコメントが数多く記載された。
一方、そうした変化に対して自社の人事は準備ができているかというと、6割以上が準備ができていないと回答した。では、どんな準備をするべきなのか、また人事のキャリアとしてどのようなスキルが必要なのか。

詳しい調査結果や人事の皆様のコメントを、ぜひご覧ください。

44%が「HRテクノロジーが人事の業務に影響を及ぼす」と回答

HR総研:NEXT HR ~次世代の人事について考える~vol.2

「AI、ビッグ―データ等を使ったHRテクノロジーの進化は、人事の業務に大きな影響を及ぼすと思いますか」という質問に対して、「そう思う」が44%、「そう思わない」は14%、「どちらともいえない」は42%となった。半数弱がHRテクノロジーの進化が今後に影響を及ぼすと考えている、という結果である。1001名以上では50%が「そう思う」と回答しており、企業規模が大きい方がより影響を感じているようだ。

ソフトバンクがAIを活用した新卒採用を導入して話題となったが、ほかにも既存の社員のデータを活用して離職を防止したり、社員の心身の健康状態を見える化して業務生産性の向上をはかったりなど、データ分析を行うHRテクノロジーがすでに活用されている。これからの人事は、こうしたデータやHRテクノロジーを人事がどのように活用していくかが重要になってくるだろう。

[図表1]AI、ビッグ―データ等を使ったHRテクノロジーの進化は、人事の業務に大きな影響を及ぼすと思うか

「データによる客観的人事に」「人事業務はより戦略的、人間力重視に」

HR総研:NEXT HR ~次世代の人事について考える~vol.2

HRテクノロジーが影響を及ぼすとしたら、どのような影響で、人事はどう対応すべきだろうか。自由記述式で聞いたところ、64名が回答してくださった。

まず「人事への影響」については、定型業務・単純業務は人が行うことが減少し、人事担当者はより付加価値が高い業務を行うようになるという意見が出た。

・人を知っていることが人事屋の武器だったが、そこはAIに取って代わられる。(1001名以上、メーカー)
・定型業務がなくなりコア業務へシフト(智恵の必要性の増大)(301~1000名、商社・流通)
・計算、入力等の作業に近い業務は全てAIやロボット等に置き換えられていき、人事業務の主流は、ヒトとしての知恵や発想が必要な「採用・タレントマネジメント・評価」という軸に絞られてくることが予想される(300名以下、サービス)
・人海戦術でこなしている大量の人事系事務がなくなる。(300名以下、情報・通信)

人事はどう対応すべきかについては、データ活用・分析、戦略人事への移行などの声が多かった。

・これまで日本企業は、従業員を公平(画一的)に取り扱うことを是としてきたが、従業員の働き方は、一人ひとり異ってきており、雇用形態も含め、多様な対応をしていく必要があり、HRテクノロジーは欠かせないと考えている。(1000名以上、サービス)
・必要なデータを必要なタイミングで入手できるので、より戦略的な対応ができる。(1001名以上、サービス)
・人が人を判断する・AIが人を判断するというそれぞれの、プラス要素・マイナス要素を正しく把握したうえで、どうすべきかを考えることのできる能力が、人事として求められてくる。(1001名以上、メーカー)
・機械的作業は人からテクノロジーに移る。その時に社員が伸ばすべき価値とは何か、そこが採用から育成部分でも考えるところですし、採用や育成実務のあり方にも大きく影響すると思います。(1001名以上、流通・商社)
・自社にあった人材の見極めが主観ではなくデータで確実に分かるようになうが、その人材を自社に引き付ける事ができるかは人事のスキルに掛かっている。その為、人事は人間力を高め続ける必要がある。(300名以下、商社・流通)

環境変化に対応できる準備はできていないが6割以上

HR総研:NEXT HR ~次世代の人事について考える~vol.2

「変化が激しい現代、自社の人事部門がその環境変化に対応できる準備ができていると思いますか」という質問に対して、「そう思う」はわずか10%、「そう思わない」が62%である。6割以上が、環境変化への準備ができていないと考えているという結果となった。

[図表2]自社の人事部門は環境変化に対応できる準備ができているか

変化への準備は、意識変革、IT・HRテクノロジー、多様性への対応がポイント

では、どのような準備が必要なのだろうか。「自社の人事部門として、この激しい環境変化に対応するためにどのような準備が必要だと思いますか」と質問したところ、100名以上が記述での回答を寄せてくださった。

まずは「意識変革」という意見。
・古い考えを持った人事担当者の意識を変える。変わらなければ違う仕事をさせるなどする。変革の阻害要因を遠ざける。(1001名以上、メーカー)
・変化に対応して成長できるよう、一人ひとりが常に問題意識を持ち、どうすればよいかを考え、行動し続けるようにするための、人財育成を通じたチーム成長を柱とした環境整備。(301~1000名、サービス)
・多用な人材の準備と、柔らかい発想で変革を受容する心の準備。(301~1000名、メーカー)

「IT、テクノロジーの活用、リテラシー向上」を目指す意見。
・ITの新技術を最大限に正しく活用してそれを使いこなす必要がある。より効率的に、より的確に対応できるための方法を見極めなくてはいけないと思う。(301~1000名、情報・通信)
・AIがピープルアナリティクスを行うために、まずはデータを蓄積すべき。(301~1000名、コンサル)
・ITリテラシの向上、世間の人事を取り巻く環境の習得および自社の状況分析など。(301~1000名、情報・通信)
・HRテックなるものの必要性に関し、社内理解を促す。(1001名以上、サービス)

「多様性」への対応について、メーカーからの意見が多い。
・多様な働き方を可能にする制度・環境整備の推進を、時代や自社経営層の要望を先取りし進めるべき。(1001名以上、メーカー)
・企業の礎となる人の活用方法について既成概念を捨て、多様な働き方に対応できる制度の構築と整備が必要(301~1000名、メーカー)
・多様な価値観に合わせた人事制度、年功序列なシステムの改定、社員教育の充実(301~1000名、メーカー)
・異文化・異分野でも柔軟に適応できる多能な人材を、より多く確保・開発する。(1001名以上、メーカー)

人事のキャリアにはコーチング・カウンセリング、グローバル、経済、戦略、分析、交渉力が必要

NEXT HRのアンケートの最後の設問は、「個人として、この激しい環境変化に対応するために人事のキャリアでどのような準備が必要だと思いますか」である。キャリアカウンセリング・コーチングなどの「人」にしかできない能力の向上や、グローバル視点・英語力の向上、情報収集力と問題解決能力など、変化に対応するためのさまざまな人事スキルが必要だとコメントをいただいた。

■コーチング、キャリアカウンセリングのスキル
・コーチングスキルを磨き、適切なリーダーシップが発揮できる人材を一人でも多く作っていく。(1001名以上、メーカー)
・人事を纏める者ものとしてのみならず、産業カウンセラー、心理カウンセラーとしての役割を担いつつ、且つ、点ではなく線として各個人の成長=業務貢献を意識した対応。キャリアカウンセリングの技術向上。(1001名以上、サービス)
・人間にしかできない仕事(キャリアカウンセリング)スキルの向上(1001名以上、メーカー)

■グローバル、英語力
・日本にとどまらない活躍の場に自らをおくこと。(1001名以上、メーカー)
・最新情報をいち早く入手・活用するための英語力。(1001名以上、メーカー)
・現状に甘んじることなく、広くグローバル経済や新しい動きにアンテナを張り巡らし、すぐ動ける態勢を整えておく。そして、機を見てすぐに動くこと。(300名以下、情報・通信)

■経済・国政の理解、経営的視点、戦略思考
・経済変動や国政と、法改正の関連について理解を深める。(1001名以上、メーカー)
・経営的視点で考える力。(1001名以上、メーカー)
・会社の移行に沿った戦略的な提案を矢継ぎ早にできるような知識及びスキルの向上。(1001名以上、サービス)

■分析力、論理構成力、交渉力、説得力、PDCA
・人事の「カン」に頼った運用は、AIで劇的に変化し、出来なくなる。その際に、分析を行う事ができ、自社の事業に沿った人事運用をする準備が必要。(1001名以上、メーカー)
・仕組みづくりのために必要なIT力及び論理構成力。(1001名以上、商社・流通)
・専門的なデータ分析手法、施策への展開能力、PDCAを回せる能力(1001名以上、運輸)
・交渉力、説得力の強化(変化を望まない方々との調整に、これまで以上に労力が割かれそう)、情報分析力(収集できる情報が膨大になっているので、適切に分析する必要がある)(301~1000名、情報・通信)

NEXT HRを担う人事担当者として、これらの個々のスキルを身に着けていくとともに、今後、企業・組織にとって人事としての役割とは何なのか、再考する必要があるだろう。今回のアンケート調査を通じて、「急激な変化を先取りして組織を変革するためには、従来の枠にとらわれない新しい発想を取り入れて、人事そのものが変革していかなければならない」と人事の皆様が考えていることが明らかになったと言えるだろう。

【調査概要】

調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および非上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年7月26日~8月15日
有効回答:313件(1,001名以上:35%、301~1,000名:30%、300名以下:35%)

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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   Eメール:souken@hrpro.co.jp

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