様々な人のキャリアに触れる人事パーソンは、自身の役割・キャリアについてどう考えているのだろうか。HR総研にて2015年2月25日~3月10日に実施したアンケート調査より、「人事のキャリア」に関する調査結果をレポートする。
人事のキャリア・専門性の深耕
まずは、今後も人事部門でキャリアを積んでいきたいと考えているかを聞いたところ、「ライフキャリアとしたい」がほぼ半数の49%、「ある程度人事でキャリアを積みたい」が41%と、大半の人事担当者が、今後も人事のキャリアを深めていきたいと考えていることが分かった。
〔図表1〕今後も人事部門でキャリアを積んでいきたいと考えるか
また、人事分野の専門家として能力向上に努めているか聞いたところ、「常に努めている」29%、「努めている方だと思う」51%と、実に8割が能力向上に努めていると回答している。
人事のキャリアを継続したいと回答する方が大半であるため、納得できる結果である。
〔図表2〕人事分野の専門家として能力向上に努めているか
なお、どのような能力向上に努めているかを訊ねたところ、最多回答は「専門知識」58%、次に「情報感度」44%、「コミュニケーション能力」「企画・戦略立案力」41%となった。自らを専門家と認識し、能力向上に努めている状況が伺える。
一方で、「ダイバーシティへの理解」「語学力」「異文化理解力」などへの回答は10%前後に留まっており、グローバル関連のインプットに対しては優先順位が低いようだ。
〔図表3〕どのような能力向上に努めているか
人事にとってのキャリアパスはどうあるべきか
人事部門のキャリアパスはどうあるべきか聞いてみたところ、「最初は現場に配属し、その後管理部門での経験を積むべき」と考える人事が過半数(51%)であり、次に多い回答「人事の専門家としてずっと管理部門での経験を積むべき」(29%)を大きく上回った。
〔図表4〕人事部門のキャリアパスはどうあるべきか
一方で、人事部門で最も多い異動パターンを聞いてみたところ、「人事としてずっと異動せず、特定の領域に取り組む」(21%)、「人事としてずっと異動せず、担当領域を変更していく」(19%)、「管理部門の中で異動」(22%)と管理部門内での異動がメインであり、「現場を経験してから人事へ異動」(20%)するケースは、あまり多くはないことが分かった。
〔図表5〕人事部門で最も多い異動パターン
なお、「人事部門のキャリアパスはどうあるべきか」に対し、「最初は現場に配属し、その後管理部門での経験を積むべき」と回答した方に、人事部門の人材を配置・育成する上での課題を聞いたところ、
・ビジネスを理解する力と人事管理の専門知識を兼ね備えた人材の育成が進まない。センスの問題となると開発することに限界。
・現場のことが分からないと、何も前に進まない。
・専門的な知識を得るとともに、社内や経営全般の視野をもった人材が必要。
など、自社のビジネス・現場の状況把握を重視する声が多く上がっている。
変化する「人事に求められる役割」
人事の役割は何か? 人事担当者でも明言をためらう設問かもしれない。もっとも有名な定義がある。『MBAの人材戦略』で著名なミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授が提唱した4分類――(1)戦略パートナー(Strategic Partner)、(2)管理のエキスパート(Administrative Expert)、(3)従業員のチャンピオン(Employee Champion)、(4).変革のエージェント(Change Agent)だ。
今回はこの4分類から「最も求められる人事の役割」の「現在」と「今後」について聞いた。「現在」の役割としては「人事管理を精密に行う(人材管理のエキスパート)」33%が最多回答、次に「ビジネスの成果に貢献する(ビジネス戦略のパートナー)」が31%でほぼ同数であった。
〔図表6〕最も求められる人事の役割(「現在」「今後」)
一方で、「今後最も求められる役割」としては、過半数(53%)が「ビジネスの成果に貢献する(ビジネス戦略のパートナー)」と回答している。
フリーコメントでも、
・経営層から人事が果たすべき期待とプレッシャーがかなり厳しくなってきており、そうした声に応えていくことは人事の役割が高度化していくことを意味している。
・より経営判断のスピードアップが求められる状況の中で、単なるHR部門として管理のみを行うのではなく、今後の展開や必要な対応策を即時に提供できるHRが今後求められると感じている。
・管理から活用、経営に対する事務局からパートナーへの転換が重要になるとここ一年ほど肌で感じている。
など、経営に貢献するために「人事」も役割を変えていく必要があるとする意見が多数寄せられている。
人事のパフォーマンス、自己採点は何点?
なお、現在の人事のパフォーマンスの点数を訊いたところ、「100点」と回答したのは1社のみだった。及第点と言える「70~100点未満」も7%ときわめて少ない。
「50~70点未満」(49%)、「30~50点未満」(30%)、「30点未満」(13%)となかなか厳しい自己採点をしている。
〔図表7〕現在の人事のパフォーマンスに点数をつけるとしたら何点か
フリーコメントでは、
・管理にとどまっている
・まだまだ経営のパートナーとなりえていないから。
・オペレーションとしては90点、戦略推進としては30点。
・労務事務的なルーティンは、無難に処理している。新たな課題にも取り組むマインドは持ち合わせている。ただ、新たな課題に取り組む知識とスキルは不足している。
など、今後求められる役割での価値発揮を前提に、現状に対しストイックに自己採点している様子が伺える。
【調査概要】
調査主体:HR総研(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2015年2月25日~3月10日
有効回答:146件(1001名以上:35件、301~1000名:48件、300名以下:63件)
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