先行き不透明な経済社会状況に対応できるリーダー人材を育成する「ピアコーチング」
先が見えない状況に直面しているという意味で使われる「VUCA」。「Volatile(もろい)」、「Uncertain(不確実な)」、「Complex(複雑な)」、「Ambiguous(不明瞭な)」の頭文字による造語で、現在の予測困難な社会経済環境を反映して、近年よく耳にするようになった。GEヘルスケア・ジャパンとロシュ・ダイアグノスティックスの2社は、この先行き不透明な状況を生き抜くために、社員個別の問題を社内で解決するだけではなく、目指す先が異なる人たちと短期間で進むべき方向を見出し、解決に向けた道筋を共創していく必要があるとして、リーダー社員育成の手法である「ピアコーチング(Peer to Peer Coaching)」の共同実施を企画した。類似したビジネス環境と組織課題に着目し、参加者同士が知識や経験を分かち合うことで互いに新たな気づきを与え、解決に向けた行動変化の促進を目的としている。課題解決に向けて自発的に動けるリーダー像をゴールに設定
ピアコーチングは、社員のパフォーマンスや能力、エンゲージメントの向上に対して重要な責務を担うリーダー社員の育成が主眼だ。「課題の解決策は自分の中にある」という考えを主軸に置き、ピア(同等の立場としてペアを組んだ相手)同士で知識や経験を分かち合いながら、自ら解決策を導き出す。さらに「課題解決に向けて行動」に移せるようになることが最終的なゴールだ。「格の高いリーダー」の増加が組織のカルチャー変革へとつながる
今回の共同実施の中では、前述の4つの段階の中でも最終段階である「アウトプットセッション」で、多くの新たな気付きがピアグループチームで共有されたという。具体的には「臨機応変に対応するリーダーシップの大切さ」、「リーダーが主体的に行動することの重要性」、「企業を超えた越境体験をもとに行動変容につげることができた」などが挙げられた。参加者たちにとっては、社内だけでは得られなかった多くの気づきを得る機会となったようだ。ピアコーチングを通して「格の高いリーダー」が増加すると、彼らの行動変化はチームのメンバーへも伝播していくのではないだろうか。連鎖反応のように部下たちもリーダーの姿勢にならおうとするだろう。「ピアコーチング」によるリーダー社員の育成が、組織のカルチャー変革を起こせれば、先行きが不透明でVUCAな状況でも、進むべき方向性を見失わない強いチームの構築は可能なのではないだろうか。