HR総研では2015年4月にアンケート調査を行い、2016採用において「これまでの採用戦線の状況を見て、今回の新スケジュールについて」自由記述を求めた。200件以上もの回答で目立つのは、「学生側に負担と混乱がある」という声だ。「後ろ倒し」という情報について、企業の実態を調査しながら自ら早めに行動している先取り派と、「後ろ倒し」を文字通りに受け取って企業研究などを進めていないのんびり派の二極化も指摘されている。混乱は企業側も同様で、「4〜5月は2015年新入社員の受け入れと新入社員研修をしながら2016年度採用活動も行わなければならない」といったマンパワーの不足や、「短期集中で大手と重なるため苦戦しそう」という意見が聞かれる。残念ながら、日本の企業人事からは、今回の「後ろ倒し」はほとんど評価されていないという結果である。
そんな中、学生はどのように就職活動をしているのだろうか。もっとも活用しているのは定番のナビだろう。今年はマイナビが掲載社数でリクナビを上回ったことが話題となっているが、もう一つのニュースは日経ナビが終了し、「キャリタス就活」がスタートしたことだ。動画を使って企業のリアルな姿を掲載するなど学生に寄り添った情報を提供し、学生のナビ活用に変化をもたらすだろう。
最近では新卒ダイレクトリクルーティング、または逆求人型と呼ばれるWEBサイトが注目されている。HR総研調査で「逆求人型Webサイトについて」学生に質問したところ、文系では「知っておりすでに登録している」「知っており今後登録する予定(もしくは興味がある)」があわせて50%、同様に理系でも45%にのぼった。まだ新しいサービスであるが、学生の口コミで利用者が増加しているようだ。「ナビでは掲載企業が多く、自社が認知されにくい」「求める人材からのエントリーが少ない」という企業では、こうしたサービスの利用が有効だ。
また大学や体育会・クラブ/サークルのリーダーなどの層にターゲティングしてアプローチする手法もある。厳選された少人数の学生に対して、少数の企業で合同説明会を行うもので、欲しい人材に会えるのが特長だ。そうした学生達が自社を選んでくれるかどうかは、説明や面談を行う人事やリクルーターの腕にかかってくることも心得よう。
HR総研が2015年4月に調査した「2017年度卒採用でより重要になると思う施策を選択してください(複数回答可)」という質問では、「学内企業セミナー」が50%で最多、続いて「キャリアセンターとの関係強化」(38%)となった。2014年12月調査では「自社セミナー・説明会」がトップで62%だったが、今回は34%と後退している。自社独自での活動よりも、大学との連携を強化することによって自社が求める人材を確保していく動きが重視されていると言えよう。「就職ナビ」(32%)に続いて「インターンシップ」が27%と比較的高いポイントを得ている。2016採用の「後ろ倒し」により困難になった採用活動をサポートする施策として取り入れようとしている企業が多いのであろう。しかしインターンシップは実施に非常に手間がかかり、採用スタッフが少人数の企業ではやりたくてもできない現実がある。そうした不足を補う方法としては、学生に社会人と接する機会を提供する少人数イベントに活動に参加するのも手である。
ナビ、ダイレクトリクルーティング、ターゲティング、イベント参加など採用活動のチャネルが多様化すると、管理をどうした良いかということが課題となる。複数の採用チャネルからの応募者を一元管理して、社内の採用プロセスに載せていくには採用管理システムを使うのがお勧めだ。クラウドで手軽に始められるシステムで自動メール機能も備わったものを選べば、連絡のし忘れやフォローの不足で大事な候補者を逃してしまうことも防げるだろう。少数精鋭の採用チームでは、採用活動のインフラ整備が勝負を分けるとも言えるだろう。