「職業人の価値はその人の地位や身分ではなく、役割や責任の重さによって決められる」という設問の解答傾向は、次のようになっています。
そう思う   63.1%
わからない  24.5%
そう思わない 12.5%


 そう思うが2001年に73.8%、その後2007年に62%まで下った後、2011年に66.9%まで上昇、2014年に61.9%になったのち、やや上昇したところです。

 2001年当時と比べると、「職業人の価値=役割・責任思考」が10%程度減ったわけですが、その分「職業人の価値=地位や身分」という人は3%程度しか増えておらず、
その分「わからない」が増えています。

 志望動機との関連でこの回答傾向を見ると、予測どおりではありますが、そう思わない=職業人の価値は地位や身分で決まると答えた人は、給料や休日よりも、会社の知名度や将来性を重視する傾向が高いことがわかります。つまり、安定性を求めている、と考えられます。

 近年、新入社員の企業に対する依存意識が高まっていると感じます。以前に紹介しましたが、企業説明会で給与や社風、有給消化率等を聞く学生が増えたと、大学の就職課に方がおっしゃっていました。同様に、企業側もあらかじめそれらの説明をするようになったと聞いています。

 不安定な時代ですから、安定を求める思考を持ったとしても、おかしくありません。しかし、時代が求めているのは、その逆。

 グローバルの洗礼を受け、ITCの進化に伴い業務のあり方が変わっていく中、新しいことに挑戦したり、リスクを取って行動する人材があらゆる企業で求められています。

 たとえ、地域の小さな工場や店舗であっても、グルーバル化やITCの進化の恩恵を受けることができます。
 最近、小さな印刷所が作っている方眼紙のノートが、その社長の孫がツィッターでつぶやいたことで、品切れを起こす人気商品になったとの報道がありました。
 開いたときに、平らになる、その特殊な構造は、方眼紙を使う人たちにとっては、大変、便利だそうです。
たった一回、孫娘が呟いただけで、小さな町の印刷所が息を吹き返したわけです。

 巨大商社だろうと、家族経営の工場だろうと、ITCを活用すれば同じ土俵に立つことができるのが現代。そこに知恵を出し、チャレンジすることが求められています。

 にもかかわらず、「地位・身分思考」のような安定志向で仕事に取り組まれては、困りますね。
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 安定志向に関しては、様々な調査でも裏付け結果が出ています。

  一般財団法企業活力研究所の行った「企業活動の将来を担う若者の能力開発・能力発揮のあり方に関する調査研究報告書」では、
 「今の会社でできるだけ長く働きたい」で「強くあてはまる」と「まああてはまる」を選んだ人は、44.6%。経年比較はできませんが、キャリア志向というより、安定志向の人が多数のようです。

 その他、日本能率協会の2014年「会社や社会に対する意識調査」でも「独立・転職志向について聞いたところ、調査を開始した 1999年以降、初めて「定年まで勤めたい」(50.7%)が過半数に達した」と書かれているなど、若者の安定志向を裏付ける調査結果は多数、あります。

 安定志向が悪いわけではありません。それこそ、30~40年前であれば、入社した会社を勤め上げるのが当たり前の雰囲気もあったわけで、その方がどれくらい安定志向だったか。
 将来の成長がある程度見えている中での安定志向の方が、不安定な中で求める安定志向よりも質が悪いかもしれません。
転職市場がここまで大きくなったのは、この30年程度の中での現象ではないでしょうか。「転職」をあおり、転職により「キャリアを積む」という幻想を与えてきた、その市場がおかしいとすら思います。むしろ、「今の会社でできるだけ長く働きたい」というのは当たり前ととらえて良いのではないでしょうか。

 ただし、「入社したからと言って、安穏としていてよい」わけではありません。企業内の競争は激しいし、長期戦であることは変わりません。
 グローバル化やITCの進化など対処しなければならない問題は多数あります。これに応えていくには、多少のチャレンジは必要です。

 企業の中で、安定志向で入社してきた人にリスクを取って行動させるのは、それほど簡単ではないかもしれません。
ただ、「共生の精神」を持った彼らは、一定の道筋が見え、途中で認められ、褒められ、仲間がいれば、新しい道に進むことができます。

 「職業人の価値=地位や身分」と考える人は、次の二問で「そう思う」と回答する率が、平均よりも10%程度少なくなります。
・企業が存続している背景には、必ず社会に役立っているという事実がある。
・職場でも責任を持たない人に、自由(やりたいようにやれる)がないのは当たり前だ。


 つまり、社会に役立たない会社もあるだろうし、「責任持たなくても、自由にやらせて欲しい」というわがままな傾向が増えるということです。

 職業観が、自分本位で権威的になりがちといえるでしょう。
安定志向と合わせて、この点も押さえておく必要があると思います。
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