前回のコラムでは、たとえ故意ではなくとも、労働法を正しく知らないせいで「ブラック企業」とみなされたり、企業の「コンプライアンス」が問われたりするケースもあるという話をした。
今回は「名ばかり管理職」の何が問題なのか、問題にならないためには何にどう気を付けたらいいか、解説していきたい。
まず「管理職」の定義を把握しよう
労働基準法では、「管理監督者については労働時間、休憩、休日に関する規定は適用しない」とされている。つまり、本当の“管理職”なら、1日に何時間働いても休日出勤をしても割増賃金の支払いは不要ということだ。
しかし、前回のコラムにも書いた大手ハンバーガーチェーン店の店長が起こした訴訟では、「(ハンバーガーチェーン店の店長は)管理監督者には該当しない」として、企業側に未払い残業代として、約750万円の支払い命令が出た。
また、この訴訟をきっかけに、割増賃金(残業代)の支払いが必要ない本当の「管理職」の定義が明らかにされた。
上記大手ハンバーガーチェーンのように、「未払い残業代がある」と、会社に支払い命令が出た場合、金銭的な負担もあるが、会社のイメージに関わる部分の影響も大きいと考えられる。
管理監督者と位置付けている人が本当に時間外・休日労働の割増賃金の適用除外となる管理監督者といえるのか再度検討することが重要だ。
本当の「管理職」にも、支払や付与が必要なものがある
上記4要件を満たせば、その人は「名ばかり管理職」ではなく、本物の「管理職」とみなしても良いことにはなる。ただ、ここでもう一つ注意が必要なポイントが出てくる。
それは、管理職には法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)や法定休日(週1日以上の休日)の規定が適用されないため、1日に何時間働いても休日出勤をしても割増賃金の支払いは不要ではあるが、深夜労働(午後10時から午前5時までの労働)に対する割増賃金は必要だということだ。午後10時から午前5時までの間に労働した分については、通常の労働者と同様、2割5分以上の割増賃金を支払わなければならない。
次回はまた他の「よくある給与計算の間違い」を紹介したいと思うが、給与計算には、本当に様々な法律知識が必要になる。一度自身の知識とスキルのブラッシュアップをしたい、もしくは、人事担当者にもっと知識を身に着けてもらいたいと思っているのなら、「給与計算実務能力検定試験」の受験を検討するのもお勧めだ。
- 1