「企業が存続している背景には、必ず社会に役立っているという事実がある」という設問の回答傾向は次の通りです。
そう思う   87.0%
わからない  8.2%
そう思わない 4.8%

この数値、「そう思う」と答えた割合は、2000年が74.7%、その後、若干の増減はありますが、全体的に増加傾向にあり、昨年83.9%、そこから2015年は3.1%も増えました。それほど、「企業は社会に役に立つ存在である」という認識は深まってきたようです。
あるお客様の応接室に、「企業は公器」と書いた額が飾ってあります。この言葉、元々は、松下幸之助の言葉のようです。
その後には、「したがって、企業は社会とともに発展していくのでなければならない」と続くようです。
松下幸之助の「共存共栄」の考え方ですね。
まさしく、企業が存続している背景には、この社会に役に立っているという事実があり、だからこそ、社会の発展に寄与し、自らも成長することができるわけです。

ところが、企業不祥事の「事件」を私たちは目にすることがあります。名だたる企業でも、巨額の粉飾決算や製品試験データの改ざん等、社会の発展ではなく、自社の利益のみを追及したかのような行為をしてしまうことがあります。
そのような不祥事の背景には、先送り主義や前例主義、危機意識の欠乏等の日本企業が持つ古い考え方があるのではないでしょうか。
本来ならば、早々にリスク回避のために公表して、是正しなければならないものを延々、隠し続け、誰かが発見するまで放置する。
いつか誰かが帳尻を合わせるものだと、暗に思っているので、問題は解決されないまま次の経営者に引き継がれていく・・・国の借金も似たようなものでしょうか。

そのような、企業不祥事を目にした若者は、「企業は公器」ではなく「企業は単なる金儲けの道具」と感じてしまい、「企業を通じての社会へのお役立ち感」を持ちづらくなってしまうのだと思います。

幸いにして、9割近い新入社員が企業の公益性=「社会に役に立っている」ものと信じて入社してきます。あとは、それをどう実感させるかです。そこが、この意識を継続的に持たせ、自律的に行動させるカギになると思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あるお客様の新入社員研修に、「店頭調査」を盛り込んだことがあります。
簡単に言えば、入社したての新人にその会社の製品を買っていただいているお客様に、直接インタビューさせるのです。インタビュー項目やまとめ方なども自分達で考えさせ、最後は役員・幹部の前でそれを発表する、という次第です。
すると、それまで表面的に感じていた「内定先企業の評価」とは別の観点からの評価をたくさん手に入れることになり、自社への自信をより強く持つようになりました。

そこを皮切りに、絶えず、利用者、使用者の声を現場に届けることで、自社の商品・サービスに対して自信を持ち、社会的なお役立ちを意識できるようになると思います。もちろん、悪い情報も開示し、そこに向かって改善活動を行う姿勢も見せていく必要があります。

別のお客様では、「ブランドブック」というものを作成しています。社内から公募したお客様接点での出来事を多数、載せています。
いかに喜んでいただけたか、時にはお叱りの声を乗り越えて評価していただいたかが書かれています。お客様からの情報も、絶えず新鮮なものを社内に流通させることが必要なのだと思います。

これらのことをやっていたとしても、まだ落とし穴があります。
先に上げた、先送り主義や前例主義、危機意識の欠乏等の悪い日本的慣行からくる社内制度や企業風土、管理者の行動、これらがあると、うまくいきません。社内の仕組みや上司が、コンプライアンス順守の姿勢に欠けていたり、真のお役立ちの方向を向いてないと、たいがいの施策は意味を持たなくなります。

例えば、
・仕事の改善提案をしても、上の反応がない(先送り主義。これまで通りやっておけばいい)。
・明らかにお客様に不利な取引条件があるが、それを言わない(前例主義。バレなければ平気)。
・社内政治に熱心で、互いに足を引っ張り合っている。
・何か問題があると、人に原因を求める。
・「何を言うか」ではなく、「誰が言っているのか」が意見が通る前提にある。
等といったことです。

企業風土の問題、とまとめると大きすぎますが、「社会の公器」にふさわしい行動がとれているか、チェックする体制は持っておくに越したことはありません。
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!