「自己変革と、組織変革の両方が繋がっている」このことが肝要である。人間は、弱い動物である。一人ではなかなか変わることができないが、上司を巻込み、職場メンバーの数名で、変わっていくことができたら、自己変革も組織変革も継続することができる。そのことが、とても重要である。
35歳からはじめ、62歳の現在まで、27年間、研修講師として、受講生の人達を見ていて、「研修を受講することで、自己変革を起こすことのできる人」の特徴は、以下の3点に要約できると思う。
1.健全なコンプレックスを持つことができる
「同期のメンバー・同世代のメンバーと比較して、自分は大きく劣っている。今のままでは、生涯に亘り、上のポジションは、絶対に目指せない。そうすると、当然ながら、豊かな仕事にも、豊かな生活にも巡り合うことができない」そういう、健全なコンプレックスを、研修を通じて、強烈に持つことができる人は、研修後、大きく変革できる可能性を秘めている。研修中に、見出した自分自身の問題・課題を解決していこうと、真剣に努力し始める。
研修を主催する側(人事教育部門・研修講師)は、そういう健全なコンプレックスを生み出すような「仕組み」「仕掛け」を、研修の中に、うまく組み込むことが、重要である。
「自分は、他メンバーよりも優秀だ。他メンバーよりも、よくできている。自分はうまくいっている」という自惚れからは、一切何も生まれない。絶対に変革できないし、成長もできない。
一人ひとりの受講生に対して、健全な危機感を醸成し、受講生の尻に火をつけることである。「今のままでは、明るい将来が絶対にやってこない」と、受講生に、強烈に思わせることである。
2.研修後に、信頼できる人との対話を行っている
研修中に得た気付き、考え始めたビジョン、自分自身の生い立ちからくる問題・弱み、目指すべき目標・・・・といった熱い思い・気持ちを、自分の心から信頼できる上司・先輩・同僚・伴侶(妻・夫)・親友・恋人・・・・と、研修後、数時間かけて、真剣に対話している。単に、自分の心の中に、ため込んでいるよりも、信頼している人間との「対話」は、深いところでの決意と覚悟を生み出す。人間は、誰でも、「変わる」ことを恐れる。なぜなら、今の自分、現状維持のままの自分が、一番、気楽で、自然で、普通の状態だからだ。できれば、「現状維持」「現状のまま」が一番良い。
しかし、外部環境が激変する時、「現状維持が最悪の意思決定であり、自分の成長の最大の足かせ」になっていくのは、明白だ。とすると、自ら立てたビジョンに向けて、一歩前に、踏み出していくしかない。そのキッカケを作るのが「研修後の信頼できる人との熱い対話」なのであろう。
3.素直さと、粘り強さを持っている
研修中に、講師や他メンバーからフィードバックされた内容、指摘された事柄をまずは、謙虚に、素直に受け止めることのできる人は、行動変容しやすい。「たかが2日・3日程度で、何がわかるか?」と安易に考え、素通りする人は、絶対に変革できない。そうではなく「確かに短い期間だが、自分自身の問題の本質を突いている。自分自身の問題をよく見てくれている」と考える素直な人、柔軟に受け止めることができる人は、変わる可能性がとても高い。
同時に、研修中に決めたビジョン・目標に向けて、歩み出し、「変革に向けての習慣」を地道に続ける人は、まず間違いなく行動変容していくことができる。そういう人間的な素直さと、粘り強さを持っている人は、変わる可能性を、大きく秘めている。
以上3点を有している受講生は、確実に行動変革を起こし、同時に、組織にダイナミックに働きかけ、組織変革を起こしていく。我々研修講師は、そういう「自己変革・組織変革」をダイナミックに起こす人に出会うために、存在していると言っても良いだろう。
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