ハイパフォーマンスマネージャーに共通する2つの特性
私は2002年、ワークハピネス創業に参画し、組織開発、人材開発の各種プログラムの開発・実践に携わる中、コンサルティングやトレーニングで1万人を超える人にお会いしてきた。そこから得た結論として、ハイパフォーマンスマネージャーの特性とは何かということをお話したい。マネージャーには、結果を出しやすい人もいれば、頑張っているのになかなか結果に結びつかない人もいる。何が違うかというと、「ぶれない軸でチームを導くConsistency」と、「部下の資質を見出し、可能性を引き出すSponsorship」だ。
私は2002年、ワークハピネス創業に参画し、組織開発、人材開発の各種プログラムの開発・実践に携わる中、コンサルティングやトレーニングで1万人を超える人にお会いしてきた。そこから得た結論として、ハイパフォーマンスマネージャーの特性とは何かということをお話したい。マネージャーには、結果を出しやすい人もいれば、頑張っているのになかなか結果に結びつかない人もいる。何が違うかというと、「ぶれない軸でチームを導くConsistency」と、「部下の資質を見出し、可能性を引き出すSponsorship」だ。
当たり前のことだと感じる方がいるかもしれないが、これらを実行することは難しい。まず、ぶれない軸といっても、環境変化が激しい中で、自分の軸に自信が持てずに結局ぶれてしまいがちだ。先の見通せない時代、正解がわからない状況の中でチームが混乱に陥っていく。あるいは上からも下からもいろいろなことを言われ、自分がした意思決定にどんどん自信が持てなくなる。すると、それを正当化するために、周りが悪い、上が悪いなどと他責になる。
一方、それなら、ぶれないようにしようと思うと、逆に固執が起きる。環境変化が激しいのに、自分の狭い考えや価値観に固執することによって、部下に自分の価値基準や成功体験を押しつけ、「いいからこうやれ」と、考える機会を奪ってしまう。結果、部下の主体性が失われてしまう。
ぶれない軸とは、チーム運営をしていく上で絶対に譲りたくない自分の軸となるコア・バリューであり、自分のコア・バリューを絶対に見つけ出さなければいけない。しかし、コア・バリューに対して、絶対に手放した方がいい固執、それによってチームに悪い影響を与えている可能性がある固執というものがあり、この2つは似ているようで違う。コア・バリューと固執の境目をきちんと見極められるかどうかが重要なことだ。
一方、それなら、ぶれないようにしようと思うと、逆に固執が起きる。環境変化が激しいのに、自分の狭い考えや価値観に固執することによって、部下に自分の価値基準や成功体験を押しつけ、「いいからこうやれ」と、考える機会を奪ってしまう。結果、部下の主体性が失われてしまう。
ぶれない軸とは、チーム運営をしていく上で絶対に譲りたくない自分の軸となるコア・バリューであり、自分のコア・バリューを絶対に見つけ出さなければいけない。しかし、コア・バリューに対して、絶対に手放した方がいい固執、それによってチームに悪い影響を与えている可能性がある固執というものがあり、この2つは似ているようで違う。コア・バリューと固執の境目をきちんと見極められるかどうかが重要なことだ。
ぶれない自分の軸=コア・バリューでチームを導く
では、コア・バリューとはどういうものか。チーム運営をしていく上で絶対に譲りたくない自分の軸とは、誰かに与えられるものではなく、自分の中にあるものだ。いままでの原体験の中でほとんど無意識に培われているコア・バリュー、これが一番パワフルであり、自分の軸となっていく。そもそもバリュー、価値観というものは、過去の経験と、それを自分がどう意義付けしているかによって築かれており、これが良い意味でも悪い意味でもその人の行動パターンを支配する。たとえば、子供の時に犬に追いかけられる経験をした人は、怖いと思い、あとで「ああ怖かった、犬って怖いものだ」とふりかえりをする。自分の中で犬全体を一般化することで価値観ができ、犬が目の前に来ると避けるという行動パターンを取るようになる。
マネージャーがチーム運営する上での価値観もこれと同じだ。自分がどんな経験をし、どう意義付けたかによって、それは無意識のうちに自分の中に培われている。そして、マネージャーが持っているコア・バリューが自分の会社の経営理念やマネジメントの仕事ときちんと整合していると感じた瞬間に、マネージャーは非常にパワフルになる。自分のバリューを体現することが毎日の仕事であり、会社の経営理念を実現することだと心から腑に落ちれば、目の前のことは大変ではあっても、一生懸命頑張れる。仕事が楽しいと思える状態になる。
よく企業の方々から「経営理念が浸透しない」という悩みをお聞きするが、やはり、自分の価値観と経営理念がつながっていると自分の中で腹落ちしない限り、難しい。マネージャーが自分自身を深く探求し、自分はこういう価値観を大切にしている、それが経営理念とマッチしているのだなと思えるきっかけをつくらないと、理念というものはなかなか浸透しないと思う。
しかし、マネージャーが自分のコア・バリューを発見し、そのバリューを軸にしてチーム運営をしていくと、ぶれなくなる。リーダーが示すミッション、ビジョン、戦略、そして日々の言動に一本の軸を通せるようになっていくと、チームメンバーも安心して働ける。逆に、そこがぶれていて、マネージャーは昨日はあれでいいと言ったのに、今日は怒られたというようだと、メンバーは萎縮し、パフォーマンスを発揮できなくなってしまう。
違いを認めて、部下の資質を見出し、可能性を引き出す
ハイパフォーマンスマネージャーのもうひとつの特性である、部下の資質を見出し、可能性を引き出すことも、やはり実際は簡単なことではない。ギャラップ社が世界142カ国23万人のフルタイム、パートタイムの従業員を対象に行った調査データが、昨年、日本経済新聞で紹介されたが、結果は驚くべきものだった。63%は意欲がない従業員で、24%は意欲を持とうとしない従業員、地域別に見ると、仕事で幸せを感じる意欲ある従業員は日本では7%にすぎなかった。なぜ意欲を失うのだろうか。やはり、自分が尊重されて、自分の資質、強みを活かせていると思えないと、仕事はどんどんつまらないものになってしまうのではないか。また、これもギャラップ社による統計だが、強みを活かすことにフォーカスしている人たちは、熱意を持って仕事に取り組んでいる人たちが、そうでない人たちの6倍にも上り、1人あたり1日の生産性は7.8%、チームが生み出す収益性も8.9%向上しているという定量的な調査データがある。自分の強みを活かせていると思えれば、自分自身、仕事を楽しんで充実感を得られるし、個人の生産性もチームの生産性も上がるということだ。
だが、部下の強みを活かすことができているマネージャーが多いかというと、違うだろう。人間には、どうしても無意識に自分の価値基準で人を裁いてしまう傾向があるからだ。とはいえ、人の資質はそれぞれ違う。多様性がある。違いは違いでしかなく、違うことは間違っているのではない。違いがあるから、自分ひとりでは考えつかないようなアイデアが出てくる。違いとは創造性の源泉、イノベーションの源泉だ。このことが本当に腹に落ちるかどうかが大きなポイントだ。違いをただの違いとして受け入れられず、無意識からにせよ、よかれと思ってにせよ、「お前、俺と違っているのはおかしいぞ」といろいろなことを押しつけてしまうマネージャーには、ダイバーシティマネジメントは難しい。
違いを違いとして認めるためには、どうして違いが出てくるのか、人間探求を深め、人のメカニズムを深く理解することが必要だ。たとえば、これは脳機能の世界でいわれることだが、人の行動の原理原則は大きく分けて2種類しかない。どういうことかというと、人は安全・安心欲求を持っていて、「痛み」を避ける行動と、「快」を求める行動を無意識に取っている。ただ、何を「快」と感じ、「痛み」と感じるかはその人の価値観が決める。そして、価値観とは過去の経験の一般化だ。
マネージャーが変わればチームが変わり、グッドサイクルが回り出す
マネージャーが、この部下は経験が違うからこう思うのだ、こう思っているからこの状況でこう行動してしまうのだといったことを理解できるようになれば、それをうまく活かせる方法はないかといった、大きく包み込むような考え方ができる。そして、部下の可能性を引き出すためには、一人ひとりの資質をマネージャーがきちんと見出し、その人にとって望ましいアイデンティティを付与するということが大事だ。マネージャーが「ぶれない軸でチームを導くConsistency」と、「部下の資質を見出し、可能性を引き出すSponsorship」を実践できるようになれば、チームは変わる。関係の質が高まり、思考の質が高まり、行動の質が高まって、最終的には結果の質、つまりチームパフォーマンスが高まるというグッドサイクルが回り出す。イノベーションも生まれやすい。
ハイパフォーマンスマネージャーを育成するには、まずベースとなる価値観にアプローチし、ConsistencyとSponsorshipを身につけることが重要となる。当社ではこうした考え方に基づくさまざまなコンテンツをご提供しているので、お役に立てれば幸いだ。「仕事とは楽しいものだ」というのは、私自身のコア・バリューでもある。ハイパフォーマンスマネージャー育成のお手伝いを通して、仕事を楽しめる人、つまりバリューやミッションに共感し、自分の資質を活かして成果を出せる人を、もっともっと日本に増やしたいと思う。
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