いままでの伝統的なヒューマン・リソース・マネジメント(HRM) では、管理者の視点から、仕事・業務内容に合わせて人材の活用が進められてきた。一方、マネジメントの視点を従来の管理者的な発想から、現場・職場の「人」中心の考え方にシフトし、人材へ投資、すなわち「人材」から「人財」へと発想を転換し、人財に合わせた仕事・業務内容を実施していくのが人財育成重視のヒューマン・キャピタル・マネジメント(HCM)。その基本的な考え方として、人中心の考え方を起点にして、さらにグローバルで、組織横断的に人財活用と人財開発を進めようとしているのが「タレントマネジメント」ということになる。
バートランド・デュサート氏は、オラクルのHCMトランスフォーメーションにおける技術アドバイザーとして、主に複雑なHR業務の遂行に関するニーズを抱えた、大規模なグローバル企業のエグゼクティブ・クライアントを担当する第一人者。HCM、タレントマネジメントへの大きな変革の背景等について、さまざまな角度からお話をお伺いした。
バートランド・デュサート氏は、オラクルのHCMトランスフォーメーションにおける技術アドバイザーとして、主に複雑なHR業務の遂行に関するニーズを抱えた、大規模なグローバル企業のエグゼクティブ・クライアントを担当する第一人者。HCM、タレントマネジメントへの大きな変革の背景等について、さまざまな角度からお話をお伺いした。
企業の組織的能力を、さらに有効活用していくために
--デュサート氏が今、特に注力されていることは何でしょうか?
私が今、特に注力しておりますのは、お客様に対して適切なHR戦略づくりに何が必要になるのかを明らかにすること、それから「HCMマネジメント」において、より良く活用、管理をすることにより、適切なビジネスの結果につながるようにご支援を差し上げることです。具体的には、それを実行するにあたって必要となるツールやテクノロジーのご提案、ソリューションをご提供するということになります。多くの企業様が過去、HRのコアのプラットフォームを導入、10年、20年と利用されていますが、そういった企業様は、最近「タレントマネジメント」を利用する、あるいはHCMソリューションをさらに活用して、自らのケイパビリティ(企業のさまざまな組織的な能力)をさらにうまく使いたい、あるいはもっと最新のテクノロジーを活用していきたいというニーズが増えてきています。
多くの企業が、タレントマネジメントをよりうまく行いたいと考えている
--タレントマネジメントの対象者ごとに、主な傾向・変化を教えていただけますでしょうか?
多くの企業が、主に3つのオーディエンス(対象者)に対して、ユーザーエクスペリエンス(ユーザーの体験)を変えようとしています。一つ目のオーディエンスは、企業の従業員です。極めて使いやすい、あるいはモバイル環境で利用できるようなアプリケーションを使って人財情報のやりとりをする、そういったユーザーエクスペリエンスを、よりコンシューマーグレードに近いカタチで実行するということを、いま行おうとしています。たとえば、上手にシステムを使って、HR担当者との間でいろいろなカタチで継続的に会話をしたり、質問のやりとりを行ったり、ディスカッションを行ったり…。ユーザーエクスペリエンスをこうしたカタチに変えようとしている、というのが、社員向けの取り組みとなっています。
二つ目のオーディエンスは、事業部のリーダーやマネージャーです。こちらの方々についても、コンシューマーグレードの使いやすさ、デザインやアプリケーションを提供するということに加えて、マネージャーレベル、リーダーに対して提供したいものとして、予測分析機能やさまざまな意思決定のサポート機能、インサイト情報(洞察に富んだ情報)なども提供したいと考えています。具体的には、従業員の今後のパフォーマンスを予測する機能、特定の事業部においての離職率を予測していくといったインサイト情報を、マネージャーレベル、リーダーに対して提供したいと考えているわけです。
三つ目のオーディエンスは、企業経営者(シニアエグゼクティブ)で、こうした方々に向けたエクスペリエンスの変化を起こそうとしています。こうした方々に対しては、先ほどご紹介した予測機能、あるいは事業経営を行ううえでの人財・人事に関する情報のインサイト情報を提供することが必要だと考えています。しかも、組織をまたがった、大変スケーラビリティのあるカタチで提供することが必要だと考えています。
ビックデータの時代の分析機能は「インテリジェント化」へ
--最近は非常に多くのデータが組織内で生まれていますが、分析のあり方も変わってきていますか?
そうですね、今はビックデータの時代ということで、人にまつわるデータの量も、大変増えてきている環境と言えます。いままで分析機能というのは、定期的にレポートを出すといったカタチで分析を行うことが主体でしたが、これから必要な分析機能というのは、もっとインテリジェント化したものです。インテリジェント化した情報というのは、どこかの組織・部門の中で、特に注意をしなければならない兆候があった場合、それをアラートとして表示してくれる、あるいは特定の事象に対して特に注意を払うべきものであるということで、注意喚起をしてくれる…。そういった情報を提供してくれるものが必要になってきています。どこかの部門で少し心配な兆候があれば、それをいち早く察知できるような情報の呈示が求められているわけです。例えば、特定の部門において、人の離職率が高くなる可能性があるという予兆をいち早く得て、判断をし、適切な手を打つことができるようになってきています。