近年の雇用形態は、「日本的経営」が凌駕した時代とは、大きく異なっています。
派遣社員という働き方が一般的になり、専門能力のある人は業務請負という形態で働くこともあります。
正社員であっても、年俸制の導入や成果報酬制度の強化により、より成果を重視されるようになりました。
また契約社員という流動性の高い雇用形態の人も多数います。
労働政策の流れをみていると、今後、この流れはまだ強化されるように感じています。
派遣社員という働き方が一般的になり、専門能力のある人は業務請負という形態で働くこともあります。
正社員であっても、年俸制の導入や成果報酬制度の強化により、より成果を重視されるようになりました。
また契約社員という流動性の高い雇用形態の人も多数います。
労働政策の流れをみていると、今後、この流れはまだ強化されるように感じています。
簡単に言えば、雇用の流動性と専門性が高まっているといえるのではないでしょうか。
流動性が高まれば、組織に対する帰属意識は弱くなってくると思われます。
(一方で、技能を修得できない若年層がフリーター化し、失業率も大きく改善できないでいます。雇用と求職のミスマッチも多く発生しています。専門性を高めたくでも、そうできていない状態の人が多数います・・・)
こうなると、「働いただけの給料はもらう」という考えの人が増えていてもおかしくはありません。
企業内にいれば、「給料だけではなく、帰属することに伴う安心感」のようなものも働く動機になるハズなのですが、帰属意識が希薄になればなるほど、直接的給与=働いた分だけきちんともらうことが働く動機付けの要因として、重要視されるはずです。
ところが、この「働いただけ、もらうのが当たり前」という意識を新入社員は強く持っているわけではないようです。
「10のことをして10 報(むく)われることを考えるより、12のことをして10の報酬に満足し、残りの2を相手に貸しておくぐらいの考え方を持っている人間が、最後に大きく報われる」という設問の回答傾向は、次のようになっています。(今回より、2013年のデータから)
そう思う 73.3%
わからない 18.3%
そう思わない 8.4%
この設問、そう思う=「残りの2相手に貸しておくくらいが良い」というの考え方の人が2006年に65.1%を記録して以降、この数年、少しずつではありますが、上昇傾向にあります。
どうやら、組織にいくらか貸しを作り、働いた分以下の給与でも良い、という思考の方がまだ全体的に強いようです。
安定型の雇用を求めているためか、企業に対する依頼心がそうさせるのか、判断は難しいところですが、少なくとも、従来の「日本的雇用慣行」的な思考はまだまだ残っているようです。
第一次世界大戦下の西部戦線で対峙していたイギリス軍とドイツ軍。
1914年のクリスマスの日、その前線で、敵同士でサッカーの試合をした、という史実があります。
キリスト教というヨーロッパの共通文化を持つ両国でクリスマスに戦闘することは考えにくく、自然と休戦状態となり、双方の兵士が自発的に交流を持ったと考えられています。
実際、その翌年からは、このようなことは起こりませんでした。
現場の士気を気にする上部からの圧力があったのでしょう。
こちらが攻撃しないから、向こうも攻撃しないだろう、と考えるのは戦場では相当なお人好しで、そんな人は、すぐに殺されてしまいそうですが、こう着状態にあったこの戦場では、双方が時間を決めて、被害が出ないところに砲撃するというようなルールが暗黙的にできていたそうです。それがそのとき、前線全体の利益になったからです。
このように、長い関係を結ぶ両者の間には、双方の利益になることを考えるようになっていくことがあります。
戦争当事者間でもそういうことが起こるのですから、企業内においてはもっとお互いの利益を考える行動が起こるわけです。
「12のことをして、10をもらって2を貸しておくと、良いことが起こる」と考えるのは、自然な心理だと思います。
そういう意味で、この回答傾向の変化を「新入社員は組織に帰属したいという志向が高くなってきている」と私は解釈しています。
仕事で貸し借りをすることは、円滑に仕事を回していく上で重要なことです。
これは、社内外、両方で通用することで、お互いに譲り合い、認め合うことで、うまく全体を流していこうという日本人的なスタイルが私は好きです。
ある食品スーパーでは、卸やメーカーから「あそこと商売しても儲からない」と言われながらも、一方で密接に取り引きをしたがるところが絶えないそうです。その裏には「いざというとき、無理を聞いて仕入れてくれる」「年に一回、謝恩パーティーがあり、社長自らメーカーの担当者にお礼を言う」など、ウェットな関係作りが功を奏しているのです。
これも長期的関係を見据えた「貸し、借り」の関係でしょう。
では、実際の現場で新入社員が「貸し」を作れるかというと、「貸す」ほどの仕事ができる新入社員はごくまれで、ほとんどの新入社員は借りる方になります。
問題は、いつまで借りる方でいられるのか、どのように返すのか、ということでしょう。
(三年経ったからと言って、自動的に一人前にはなりませんが)「三年で一人前」というように、三年程度というのが平均的な「貸す方にも回れる」一般的な期間ではないでしょうか。
本当に借りを返すには、10年くらいはかかる、というのが実感だと思います。
この感覚は、「企業特殊的人的資本」が重視される日本的雇用の形態からきていると考えられます。
「一般的人的資本」重視であれば、雇われたその日から「貸す方に回れる」仕事をしないといけません。
新入社員の「貸す方にも回れる」までの期間を短くすることが生産性向上の課題となります。実際、私のお客様でも、「以前なら、一年目で目標達成(もちろん、かなり低い目標ですが)するのが2割くらいいたのに、今年はゼロ」などという企業もあります。
どうも、帰属意識とともに依頼心も強くなっているようで、自律的に動けない人が増えたようです。
早期育成は課題ですが、そのための明確な解決策を示すことは残念ながらできません。
育成そのものは、ベースに置くべき指導理念は一緒でも、実際の対応は個別であり、多種多様なやり方があるからです。
育成担当者にはいくつもの引き出しを持たせ、その場で最も適切な打ち手を打てるようにするしかないと思います。
流動性が高まれば、組織に対する帰属意識は弱くなってくると思われます。
(一方で、技能を修得できない若年層がフリーター化し、失業率も大きく改善できないでいます。雇用と求職のミスマッチも多く発生しています。専門性を高めたくでも、そうできていない状態の人が多数います・・・)
こうなると、「働いただけの給料はもらう」という考えの人が増えていてもおかしくはありません。
企業内にいれば、「給料だけではなく、帰属することに伴う安心感」のようなものも働く動機になるハズなのですが、帰属意識が希薄になればなるほど、直接的給与=働いた分だけきちんともらうことが働く動機付けの要因として、重要視されるはずです。
ところが、この「働いただけ、もらうのが当たり前」という意識を新入社員は強く持っているわけではないようです。
「10のことをして10 報(むく)われることを考えるより、12のことをして10の報酬に満足し、残りの2を相手に貸しておくぐらいの考え方を持っている人間が、最後に大きく報われる」という設問の回答傾向は、次のようになっています。(今回より、2013年のデータから)
そう思う 73.3%
わからない 18.3%
そう思わない 8.4%
この設問、そう思う=「残りの2相手に貸しておくくらいが良い」というの考え方の人が2006年に65.1%を記録して以降、この数年、少しずつではありますが、上昇傾向にあります。
どうやら、組織にいくらか貸しを作り、働いた分以下の給与でも良い、という思考の方がまだ全体的に強いようです。
安定型の雇用を求めているためか、企業に対する依頼心がそうさせるのか、判断は難しいところですが、少なくとも、従来の「日本的雇用慣行」的な思考はまだまだ残っているようです。
第一次世界大戦下の西部戦線で対峙していたイギリス軍とドイツ軍。
1914年のクリスマスの日、その前線で、敵同士でサッカーの試合をした、という史実があります。
キリスト教というヨーロッパの共通文化を持つ両国でクリスマスに戦闘することは考えにくく、自然と休戦状態となり、双方の兵士が自発的に交流を持ったと考えられています。
実際、その翌年からは、このようなことは起こりませんでした。
現場の士気を気にする上部からの圧力があったのでしょう。
こちらが攻撃しないから、向こうも攻撃しないだろう、と考えるのは戦場では相当なお人好しで、そんな人は、すぐに殺されてしまいそうですが、こう着状態にあったこの戦場では、双方が時間を決めて、被害が出ないところに砲撃するというようなルールが暗黙的にできていたそうです。それがそのとき、前線全体の利益になったからです。
このように、長い関係を結ぶ両者の間には、双方の利益になることを考えるようになっていくことがあります。
戦争当事者間でもそういうことが起こるのですから、企業内においてはもっとお互いの利益を考える行動が起こるわけです。
「12のことをして、10をもらって2を貸しておくと、良いことが起こる」と考えるのは、自然な心理だと思います。
そういう意味で、この回答傾向の変化を「新入社員は組織に帰属したいという志向が高くなってきている」と私は解釈しています。
仕事で貸し借りをすることは、円滑に仕事を回していく上で重要なことです。
これは、社内外、両方で通用することで、お互いに譲り合い、認め合うことで、うまく全体を流していこうという日本人的なスタイルが私は好きです。
ある食品スーパーでは、卸やメーカーから「あそこと商売しても儲からない」と言われながらも、一方で密接に取り引きをしたがるところが絶えないそうです。その裏には「いざというとき、無理を聞いて仕入れてくれる」「年に一回、謝恩パーティーがあり、社長自らメーカーの担当者にお礼を言う」など、ウェットな関係作りが功を奏しているのです。
これも長期的関係を見据えた「貸し、借り」の関係でしょう。
では、実際の現場で新入社員が「貸し」を作れるかというと、「貸す」ほどの仕事ができる新入社員はごくまれで、ほとんどの新入社員は借りる方になります。
問題は、いつまで借りる方でいられるのか、どのように返すのか、ということでしょう。
(三年経ったからと言って、自動的に一人前にはなりませんが)「三年で一人前」というように、三年程度というのが平均的な「貸す方にも回れる」一般的な期間ではないでしょうか。
本当に借りを返すには、10年くらいはかかる、というのが実感だと思います。
この感覚は、「企業特殊的人的資本」が重視される日本的雇用の形態からきていると考えられます。
「一般的人的資本」重視であれば、雇われたその日から「貸す方に回れる」仕事をしないといけません。
新入社員の「貸す方にも回れる」までの期間を短くすることが生産性向上の課題となります。実際、私のお客様でも、「以前なら、一年目で目標達成(もちろん、かなり低い目標ですが)するのが2割くらいいたのに、今年はゼロ」などという企業もあります。
どうも、帰属意識とともに依頼心も強くなっているようで、自律的に動けない人が増えたようです。
早期育成は課題ですが、そのための明確な解決策を示すことは残念ながらできません。
育成そのものは、ベースに置くべき指導理念は一緒でも、実際の対応は個別であり、多種多様なやり方があるからです。
育成担当者にはいくつもの引き出しを持たせ、その場で最も適切な打ち手を打てるようにするしかないと思います。
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