市場が日米欧に限定されていた時代から、BRICsを中心とした新たな市場の出現を経て、今後、舞台が更なる拡がりと深みを見せていくことが予見されている中、グローバルな人的資源の活用が、多くの企業で重要な経営アジェンダとなりつつあることは周知の事実である。そんな中で、人材マネジメント上の主要基盤であるグローバル・グレードの活用目的にも変化が見られている。

 マーサーが2011年夏に米国とカナダの380社を対象に実施したGlobal Leveling Surveyによると、グローバルでの職務評価の推進やグローバル・グレードの導入を行う主たる目的(参考Ⅰ)に関して、「社員の育成とキャリアパスの明示」(68%)、「グローバルな処遇体系導入の促進」(65%)が主となり、その適用範囲も、85%の企業が「役員相当層だけでなく、管理職層及び営業以外の専門ポジションに拡げている」と回答している。

 弊社パートナーのDarrel Ciraによると、「数年前まで、多国籍に活動している企業において、役員相当層以外の層にもグローバル・グレードを適用している企業は半数程度であった」「適用範囲を拡大している企業の増加は、国境を越えた人材活用の促進、社員へのグローバルなキャリアパスの明示といった、グローバルでの人材活用基盤としてのグローバル・グレードの機能強化に、多くの企業が力を注いでいることを示している」のである。

 実際、グローバル・グレード導入における障害に関しては、実に68%もの企業が「リソースと時間」という“実行力”にあると回答しており、以前の理由の中心であった「ローカルやビジネスラインの抵抗」(38%)を大きく上回る結果が確認された。この取り組みの重要性は所与のものとされ、実行上の課題がクローズアップされている現状が見て取れる。

 一般に、グローバル・グレードの導入の目的には、

 第一段階:情報の把握
  人件費の把握 / 人員分布の把握
 第二段階:情報の利用
  要員計画 / 組織管理 / 異動・配置
 第三段階:目的を持った活用
  サクセッションプラン / キャリアパス設計 / 人材育成 / 人材確保(代謝)
の3段階がある。

 この3段階を見ていただいて分かるとおり、今回の調査に参加した米国・カナダの企業は、既に第三段階を見据えたグローバル・グレードの高度化を指向していることは明らかだ。

 ちなみに、こうした第三段階を意識した整備を推進している企業では、「1. グローバル・グレードを事業・組織戦略を浸透させるための有効な道具として内容を整備。新たな組織戦略の展開・浸透ツールとして活用。」、「2. グローバル標準のツール・インフラをうまく活かしながら、グローバル・リージョン・ローカルレベルでのガバナンス・プロトコルを整備。統制と分権の最適化を通じて、機動的な意思決定が行われる体制を構築。(参考Ⅱ)」、「3. グローバル・グレードを起点とした人材管理の新たな基盤やプロトコルを整備。特に、人材の可視化プロセスを標準化。」等の取り組みを進めている。その取り組みに関して、更に先を行く企業の例もある。

 日本企業では、一部の先進企業を除けば、依然として第一段階から部分的に第二段階に移行しているケースが多いのではないだろうか。もちろん、グローバル化の拡がりと深度は企業によって様々であるため、段階論が全てではない。だが、各社のグローバル化のスピード感に照らした、制度高度化のロードマップを考えていく上では、参考となる情報であると思う。

参考Ⅰ: グローバル・グレード導入の主目的

Source: Mercer

参考Ⅱ:グローバルでの役割グレードの管理主体の状況

 本社人事リージョン人事ローカル人事
役員層83%9%8%
マネジメント層55%27%18%
専門人材層35%32%32%
Source: Mercer, Global Compensation Strategy and Design Survey

(2012.01.23掲載)

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