何かで読んだ話ですが、ある建設会社で、何もしない部長がいたそうです。
セクハラまがいの行為はするわ、昼間から喫茶店で漫画を読んでいるわ、どうにも仕事をしているようには、見えなかったそうです。
中途入社で入った女性社員は、その部長を忌み嫌い、避けていたそうですが、大きなクレームが生じた時、「このかばんを持ってついて来い」とその女性社員を連れて、先方へ行ったそうです。
社員「なぜ、私が・・・」
部長「お前、背も高いし、見栄えがいいから、ちょうどいいんだ。とにかく付いて来い」

と、無理やり連れて行かれたそうです。
結果、部長は、見事にクレームを収めたそうで、以後、女性社員の部長に対する見方が変わったとか・・・

「部長」という肩書きはもっていますが、日常、なんの価値もなさそうな人です。
しかし、実際、大きな役割を持ち、会社に貢献している人だったりするのです。
つまるところ、日常は、待機状態なわけです。それを知っている他の社員は、別に、普段、部長が何をしていようが構わないのです。


「クレーム対応力」がこの部長の職業人価値であり、この部長はそこにアイデンティティをもっているのだと思います。
言い換えれば、職業人の価値というものは、表面的な地位や役職というものではなく、その人が仕事をする上で背負って立つ本質的な仕事の技能や信念、経験といったものからなるアイデンティティそのもので決まるのだと思います。修養なくして、価値はうまれない、ということです。
また、その価値は、他者に認められて初めてできるものだともいえます。


さて、「職業人の価値はその人の地位や身分ではなく、役割や責任の重さによって決められる」という設問があります。
この設問の新入社員の回答傾向は、次のようになっています。


そう思う   64.3%
わからない  23.1%
そう思わない 12.6%


2/3程度の新入社員は、役割や責任の重さに職業人の価値を見出すようです。

さて、「職業人の価値はその人の地位や身分ではなく、役割や責任の重さによって決められる」という設問があります。
この設問の新入社員の回答傾向は、次のようになっています。


そう思う   64.3%
わからない  23.1%
そう思わない 12.6%


「そう思わない」と、職業人の価値を「地位や身分」に表されるもの、と考える人たちの特徴を見ると、他の答えをする集団と比べて、次のような思考をする傾向が高くなります。


・サラリーマンには自由が少ない、自由が欲しい(仕事拘束観)
・知識より成果が大事(高い業績思考)


この集団は、「好きにさせてもらって、やったら、やっただけ(あるいはそれ以上)、評価されたい」ということのようです。
端的にこれがわかるは、
「10のことをして、10報われることを考えるより、12のことをして、10の報酬に満足し残りの2を相手に貸しておくぐらいの考え方を持っている人間が最後に大きく報われる」
という設問で「そう思う」という回答が10%程度、下がる=10のことをしたら、10報われたい=のです。


ちょっと歪んだ(ある意味、自分に正直な)業績思考を持っているといえるでしょう。


「職業人の価値はその人の地位や身分ではなく、役割や責任の重さによって決められる」で「そう思う」と答える率は、多少の上下動はありますが、この12年で結構へっています。
第29回 職業人の価値は地位ではなく責任の重さによる?
こう考えると、ちょっとドライな職業意識を持つ新入社員が増えてきているように感じます。
「やっただけもらう」というのもプロとして悪くはないのですが、長くひとつの企業で働くことを考えると、この「相手に貸しておく」という部分は大変重要なはずです。終身雇用+年功序列という雇用環境が崩れ、「貸しても返ってこない」「返ってくる前に転職する」ということが増えたために、正答率が減ってきているのかもしれません。今後もさらに減っていきそうな予感がします。
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