新入社員の意識調査の結果によれば、「上役と若い部下が断絶状態になる場合は、世代のギャップだからという認識も必要である」という設問に対して、
そう思う    21.3%
わからない   19.7%
そう思わない  59.0%
となっています(2011年新入社員研修での数値)。
新人の6割近くは、世代間ギャップで断絶したりはしない、と考えているわけですね。
しかし、実際、先輩・上司の側から見たときに、うまくコミュニケーションが取れていないということはないでしょうか?実は、先輩・上司の側が「世代のギャップ」を感じる人が多いのかもしれません。

ある企業様の新人を指導する「指導員研修」の冒頭、自己紹介の場面で36歳の指導員が、
「こんなおっさんが指導員でごめんなさいという感じです」
とおっしゃっていました。この時点でおそらくこの指導員は
「一回り以上年下の若者と、何を話せばよいのだろう」
と気後れしていることは間違いありません。世代間ギャップを思いっきり感じているのでしょう。

確かに、育った環境、時代が違う人と話すときには、それこそ外国人と話すくらいの「文化的差異」を感じることはあります。言葉が違うわけではないのですが、判断基準がまったく違うので、服装マナーや言葉遣い、配慮の姿勢など、「とんでもないことをしでかす」「社会常識は、どうなっている?」という新人がいるのも事実です。

たとえば、
・制服なのに腰ばき
・お客様にタメ口
・研修ノートに落書き
・休憩時間に仕事机で漫画雑誌を読む
・社内メールなのにデコメール
・会社配布の携帯電話にデコレーション(「デコ電」というらしい)
・机に突っ伏して仮眠
・意味のない、わからない言語表現(超○○、鬼○○などの強調語など)
・語尾上げ言葉(疑問符をつける場合やあいまいな表現をしたい場合に使用)

他にも、
・郵便料金制度を知らない(地域で料金が変わると思っていた…宅配便かい…)
・会社の備品を平気で持って帰る
・新幹線や飛行機のチケットを買ったことがない、買えない
・メモを取る習慣がない、言っても何をメモするか、わからない
・遅刻に悪びれない
という新人がいました(すべて、あちこちでヒアリングした事実です。もっとすごい!ということがあれば、教えて下さい。もっとすごい新人がまだまだいそうな気がします)。

語尾上げ言葉の蔓延を考えると、こちらの常識が誤っているのか、世の中の常識が変わってしまったのか?という疑問を感じることすらあります。
そのような文化的差異を感じる新人と、きちんとしたコミュニケーションが取れるのでしょうか。

「鏡の法則」というように、受け入れる側が構えてしまっては、新入社員側にもそれがそのまま映し出され、「先輩の○○さんには、世代間ギャップを感じるよ」という結果になってしまいそうです。
だからこそ、受け入れ側は「世代間のコミュニケーションギャップは、たとえあったとしても簡単に乗り越えられる」と考えて対応するようにしたいものです。

ですが、実際、事例で上げたように、あまりにも育った環境が違い、物事の説明に時間のかかる新入社員がいるのも事実です。ひとつの業務を教えるのに、「こんなところ(一般常識)から教えなければいけないのか?」と思うこともしばしばあります。

では、何をきっかけにして、コミュニケーションを取っていけばよいのでしょうか?

人間ですし、同じ日本に住んでいるので、知識や生活環境(食事や学校生活など)に共通項がない、ということはありえません。同じ土俵に立てるような興味関心事を作り上げることができれば、話はできるわけです。

新入社員の話ではありませんが、秋月りすのコミック「OL進化論」の中で、次のような話があります。

管理者A「帰り道とか部下の女の子と二人きりになると困るだろ」
 (すみません、1995年頃の話ですので、「OL」に「女の子」表現です)
管理者B「どうして」
管理者A「ほら、共通の話題がないじゃないか。あまりプライベートな話はできないし」
管理者B「同じ人間同士だ。共通の話題なんてたくさんあるんじゃないかな」
管理者A「どんな?」
そう聞かれた、次のコマで
OL「わたし目玉焼きにはやっぱり、ウスターソースだと思うんですよ」
管理者B「そうか?しょうゆもいいぞ。マヨネーズちょっとおとして」
 (講談社『OL進化論6』 秋月りす)

管理者Aの思考は、OL(そのまま新入社員に入れ替えてください)とは話が合わない、できない、と最初に思っているわけです。これでは、会話はできません。管理者Bのように、「共通項はあるし、会話には困らない」という思考で行きたいものです。

“同じ価値観を共有していく”ができれば、「断絶状態」ということにはならないのではないでしょうか。

私の見聞きした経験では、基礎中の基礎を終えた後はできるだけ早く現場に入れ、指導者対新入社員が1対1程度の環境の中で(徒弟制度的に)みっちり教え込む職場の方が成長は早いようです。
話が通じないわけではないので、話をする。
   ↓
世間話ではなく、業務の話をする。
   ↓
業務を一緒に行う。
   ↓
同じ目標(業務完遂)を持つ。
   ↓
その過程で同じ価値観を形成していく。

今も昔も「最近の新入社員は・・・」と言われていたことは間違いありません。その根本は、「価値観の違い」にあったはずです。入社して時間が経つにつれ、違和感のない社員になっていくのは、さまざまな業務を一緒にやることによって、分かり合い、共通の価値観を持つようになるからではないでしょうか?育った環境によって価値観が違うのならば、入社してからの環境でも価値観は変わるはずです。

最初に「価値観が違うから、分かり合えない」と思ってしまったら、そこでおしまいです。人類はこれまでも人種・宗教・文化的背景の違う民族同士が理解しあう努力を重ねてきたはずです。
ならば、新入社員が父親くらいの年齢層の人を、先輩社員が子供くらいの新入社員を理解できない、などということは、ありませんよね。「目玉焼きの食べ方」からはじめた会話も、できるだけ早く「業務の改善・進め方」の会話ができるようになりたいですね。
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