昨年末に日本を代表するいくつかの会社において、コーポレート・ガバナンスを揺るがすような大きな事件が起きたこともあり、再びコーポレート・ガバナンスに注目が集まっています。10年ほど前にさかのぼると、米国でエンロン事件以降、また直近では2008年の米国金融機関に端を発した経済危機が大きな契機となって、企業統治のあり方、経営の監督・監視のあり方が議論されてきました。
日本においても、ここ2-3年の大きな動きをかいつまんで見ても、2009年6月に発表された金融庁のスタディ・グループによる報告、経済産業省の企業統治研究会の報告書、2010年3月の金融庁による改正内閣府令、そして今年の5月から東証が独立役員に関する情報開示の拡充を中心とした見直しを行うといった動きがあります。
また注目すべき最近の大きな動きのひとつとして、法務省の会社法制部会における「監査・監督委員会設置会社」の検討をあげることができるでしょう。この検討に関し、法務省は昨年12月発表の「会社法制の見直しに関する中間試案」や、この5月発表の「企業統治の在り方に関する個別論点の検討」の中で、企業経営における「執行と監督の分離」を進め、取締役会の監督機能を強化するために、社外取締役を中心とした「監督・監査委員会(仮称)」という機関を設置することにある、と説明しています。
一方、こうした検討に対して、「中小企業にまでコストのかかる社外取締役の義務付けは反対だ」「それよりも現行の経営陣の意識・モラル向上が先だ」という意見もあるようです。
では、企業経営の監視・監督の強化を図るために、構造的な仕組み・形を導入することには、どんな意味があるのでしょうか? 果たして、仕組み・形の検討を行うことよりも「意識・モラル」の向上を優先すべきなのでしょうか?
武芸やスポーツの達人といわれる方の動きには、大変無駄がなく、極めて流麗な動き、スムーズな躍動を我々は眼にします。そうした達人も、最初からそのような動きができたわけではなく、基本の動き、先達の優れたフォームを何度も繰り返し真似ることによって、そうした動きが自然にできるようになったのだと思います。つまり、“カタチ”を真似ることから始め、真似ていることを忘れる境地にまで達して初めて自分のフォームとして自然に振舞える、ということなのでしょう。
とすれば、企業のコーポレート・ガバナンスにおいても、まず仕組み・形の検討を行い、その仕組み・形の精神を企業の中に浸透させた上で、その精神を、それぞれの企業ごとのあり方に即した形で、一層発展させていくことが必要ではないでしょうか。
具体的には、非業務執行役員(社外取締役、社外監査役)の充実を図り、「業務執行のあり方」「社内常識・慣習」に対するゼロベースからの問題提起・意見具申を促す仕組みを作ることが最初のステップになるでしょう。もちろん、非業務執行役員の独立性を確保する人選の仕組みや、業務執行の現場感をもたない非業務執行役員へ経営上の情報提供を行う仕組みについての検討も必要です。また、次のステップとしては、非業務執行役員が独自に情報収集を行い、業務執行役員の意思決定に対して異議を唱えることができるような環境作りも必要になるでしょう。
このように仕組み・形を整える検討を進めるためには、形の背景にある目的や精神への理解なくしては、検討を進めることができないことがわかります。コーポレート・ガバナンスの強化については、「意識・モラルが先」「仕組み・形が大事」という二項対立で捉えるのではなく、「意識・モラル」を具現化する仕組みを整備していくのだ、というスタンスで“カタチ”の整備・検討を進めていくことが必要です。
積極的にコーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでいる日本企業は、残念ながらまだ多くありません。企業経営のポイントが差別化にあるとすれば、今、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組むことは、大きな差別化要因になるものと思われます。
また注目すべき最近の大きな動きのひとつとして、法務省の会社法制部会における「監査・監督委員会設置会社」の検討をあげることができるでしょう。この検討に関し、法務省は昨年12月発表の「会社法制の見直しに関する中間試案」や、この5月発表の「企業統治の在り方に関する個別論点の検討」の中で、企業経営における「執行と監督の分離」を進め、取締役会の監督機能を強化するために、社外取締役を中心とした「監督・監査委員会(仮称)」という機関を設置することにある、と説明しています。
一方、こうした検討に対して、「中小企業にまでコストのかかる社外取締役の義務付けは反対だ」「それよりも現行の経営陣の意識・モラル向上が先だ」という意見もあるようです。
では、企業経営の監視・監督の強化を図るために、構造的な仕組み・形を導入することには、どんな意味があるのでしょうか? 果たして、仕組み・形の検討を行うことよりも「意識・モラル」の向上を優先すべきなのでしょうか?
武芸やスポーツの達人といわれる方の動きには、大変無駄がなく、極めて流麗な動き、スムーズな躍動を我々は眼にします。そうした達人も、最初からそのような動きができたわけではなく、基本の動き、先達の優れたフォームを何度も繰り返し真似ることによって、そうした動きが自然にできるようになったのだと思います。つまり、“カタチ”を真似ることから始め、真似ていることを忘れる境地にまで達して初めて自分のフォームとして自然に振舞える、ということなのでしょう。
とすれば、企業のコーポレート・ガバナンスにおいても、まず仕組み・形の検討を行い、その仕組み・形の精神を企業の中に浸透させた上で、その精神を、それぞれの企業ごとのあり方に即した形で、一層発展させていくことが必要ではないでしょうか。
具体的には、非業務執行役員(社外取締役、社外監査役)の充実を図り、「業務執行のあり方」「社内常識・慣習」に対するゼロベースからの問題提起・意見具申を促す仕組みを作ることが最初のステップになるでしょう。もちろん、非業務執行役員の独立性を確保する人選の仕組みや、業務執行の現場感をもたない非業務執行役員へ経営上の情報提供を行う仕組みについての検討も必要です。また、次のステップとしては、非業務執行役員が独自に情報収集を行い、業務執行役員の意思決定に対して異議を唱えることができるような環境作りも必要になるでしょう。
このように仕組み・形を整える検討を進めるためには、形の背景にある目的や精神への理解なくしては、検討を進めることができないことがわかります。コーポレート・ガバナンスの強化については、「意識・モラルが先」「仕組み・形が大事」という二項対立で捉えるのではなく、「意識・モラル」を具現化する仕組みを整備していくのだ、というスタンスで“カタチ”の整備・検討を進めていくことが必要です。
積極的にコーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでいる日本企業は、残念ながらまだ多くありません。企業経営のポイントが差別化にあるとすれば、今、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組むことは、大きな差別化要因になるものと思われます。
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