そこで、HR総研が行った各種の単独調査や共同調査の結果を基に、「新卒採用のニューノーマル」について議論しました。
講師
寺澤 康介
ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研 所長
1986年慶應義塾大学文学部卒業。同年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役等を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、2015年4月ProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。8万人以上の会員を持つ日本最大級の人事ポータルサイト「HRプロ」、約1万5千人が参加する日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」を運営する。
松岡 仁
ProFuture株式会社 取締役 / HR総研 主席研究員
1985年大学卒業。文化放送ブレーンで大手から中小まで幅広い企業の採用コンサルティングを行う。ソフトバンクヒューマンキャピタル、文化放送キャリアパートナーズで転職・就職サイトの企画・運営に 携った後、2009年より現職。各種調査の企画・分析を担当し、「東洋経済オンライン」「WEB労政時報」に 連載中。
久木田 亮子
ProFuture株式会社 HRサポート部/HR総研 主任研究員
2009年建設系企業に入社。研究開発および設計職に従事。2015年以降、シンクタンクにて地方創生に関する幅広い分野で調査研究を行う。2019年にHR総研(ProFuture株式会社)主任研究員に着任。人事関連分野に関する幅広い調査・分析を行う。企業動向だけでなく、新卒採用においては就活学生を対象とした調査の設計から分析までも担当する。
「就活ルールの廃止」と「就職ナビの地盤沈下」
寺澤 本日は『Withコロナ時代。新卒採用・ニューノーマルはこうなる』をテーマに、各種調査の結果報告と、それに基づいたディスカッションをお届けします。様々な「前例」が急ピッチで更新される今、企業はどう対応していくべきか。それを考えるヒントになればと思います。それでは久木田より、最初の調査結果をご紹介させていただきます。久木田 まず、今回の調査の概要についてご説明させていただきます。「企業向け調査」としましては、以下の3つを行いました。いずれの調査も、上場および未上場企業の人事・採用担当者を対象としております。
1.HR総研による「2021年卒&2022年卒採用動向に関する調査」(全2回実施、有効回答数414社)
2.i-plugとHR総研の共同調査による「Withコロナ時代における新卒採用の現状と未来に関する調査」(有効回答数734社)
3.HR総研による「新型コロナウイルス関連調査 第4弾」(有効回答数224社)
加えて「学生向け調査」と、本講演にお申し込みいただいた皆様を対象とした「事前調査」も実施させていただきました。
・楽天みん就とHR総研の共同調査「2021年卒学生の就職活動動向調査」(2回実施、有効回答数2,273名)
・「「Withコロナ時代。新卒採用・ニューノーマルはこうなる」(HR総研主催)
事前アンケート」(本講演にお申し込みの方が対象、有効回答数23名)
それでは「規制の廃止 時期にとらわれない自由競争」というテーマでの企業向け調査の結果をご紹介させていただきます。「採用ホームページの開設時期」 につきましては「今年3月」が19%でトップとなっていますが、「前年6月以前」という回答が僅差の18%となっています。また、過去3年の調査結果を比較しますと、この「前年6月以前」の占める割合が年々増加傾向にあることも特徴といっていいでしょう。
「内定出し開始時期」につきましては、文系学生 は昨年のピークとなっていた「4月後半」が、コロナ禍で16%から6%に減少。「7月以降」が前年よりも増加し、「8月以降」と回答した企業が23%で全体の2割以上を占める結果となっています。これは、理系学生についてもほぼ同傾向で 、昨年のピークとなっていた「4月前半」が15%から5%に減少、「8月以降」に持ち越す企業が22%に急増しました。
続きまして、「就職ナビの地盤沈下、採用手法の多様化」というテーマの調査結果をご紹介いたします。企業が「2022年卒採用でより重要になると思われる施策」 につきましては、「オンラインでの自社セミナー」がトップで42%、以降「オンライン面接」の38%、「自社採用ホームページ」の31%と、上位3位がオンライン対応という結果になりました。これまで3年連続トップだった「インターンシップ」は19%で8位に下降、「オンラインでのインターンシップ」は21%で6位にエントリーしています。
松岡 改めていうまでもなく、2020年は特殊な年で、本来なら7~9月にかけては「東京オリンピック・パラリンピック」が開催されるはずでした。ですから、企業としては「昨年よりも早く動き出さねば」という気持ちが当初から強かったと思います。
「採用ホームページの開設時期」における「前年6月以前」という回答や、「内定出し開始時期」における「前年11月以前」という回答が多かったことも、それを示しています。そこへコロナ禍の影響が重なり、「急なオンライン化に対応できた企業」と「対応できなかった企業」の二分化が顕在化しました。具体的には、内定出しに関して「8月以降」に持ち越した企業が後者にあたります。
そして「就職ナビの地盤沈下」について。言い方が悪いかもしれませんが、これまでの就活スケジュールは、就職ナビによって牛耳られていたと言っても過言ではありません。それほど就職ナビの影響力は大きいものでした。例年、3月1日は、アクセスの集中により、各種就職ナビサイトのサーバーダウンが起きるぐらいでしたから。しかし今年は、まったく起こらなかった。2020年現在、もはや就職ナビは「エントリーするためのサイト」ではなく、「インターンシップに応募するためのサイト」という意味合いが強くなっています。
寺澤 「就職ナビの地盤沈下」と「経団連による就活ルールの廃止」で、企業としては「やりたい時に自社で採用活動ができる」という状況ができあがったわけですね。
松岡 はい。現に大手企業の採用ページでは、インターンシップの募集のみならず、すでに2022年卒のエントリーが始まっているものもあります。従来では考えられなかったことですね。
寺澤 これまでは、企業は就職情報会社の言う通りに採用活動を行っていればよかったのですが、現在はそれぞれが多種多様な方法で活動するようになりました。これは、各企業が「自社の好きなように採用活動を展開できる」ことを意味しています。しかしその一方で、「自社ならではの採用戦略」の必要性が高まっていることも意味しています。
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