新型コロナウイルスの影響で多くの企業が逆風にさらされる中、未来を切り拓き、歩みを進め、そして生き残っていくためには、「イノベーション創出力」と「レジリエンス力」が鍵となります。果たして、これらを併せ持つ事業部門では、実際にどのような意思決定・マネジメントが行われ、どのような風土が醸成されているのでしょうか。そこで今回は、産業能率大学 総合研究所が、事業部門を担当する役員および事業部門長、所属する部長・課長・一般社員(3社/11事業部門/138人)を対象に実施した「イノベーション創出とレジリエンスに関する調査」の結果を一部ご紹介し、そこからwithコロナ時代に生き残る組織の要件について話し合いました。

講師

  • 飯塚

    飯塚 登 氏

    学校法人産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 戦略・ビジネスモデル研究センター長

    一橋大学経済学部卒業後、石油元売会社にて企画・マーケティング等に従事。民間シンクタンクにて新規事業、経営計画立案等に携わった後、コンサルティング会社勤務を経て、現職。中長期ビジョン・戦略の策定、新規事業立案コンサルティングに従事。



  • 田島

    田島 尚子 氏

    学校法人産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 組織・人材アセスメント研究センター プロジェクトリーダー

    横浜市立大学商学部卒業後、総合建材メーカーに勤務。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了後、2001年学校法人産業能率大学に入職。現在、組織・人材アセスメント研究センター所属。診断および研修の開発、組織診断を用いた経営体質改善や組織力強化等のコンサルティングに従事。また、「産業界における人材ニーズの調査分析(2003)」、「経済危機下の人材開発に関する実態調査(2010)」、「イノベーション創出に向けた人材マネジメント調査(2018)」など、企業の人事担当者を対象とした人材開発に関する調査に多数携わる。



  • 寺澤

    寺澤 康介

    ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研 所長

    1986年慶應義塾大学文学部卒業。同年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役等を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、2015年4月ProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。8万人以上の会員を持つ日本最大級の人事ポータルサイト「HRプロ」、約1万5千人が参加する日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」を運営する。

withコロナ時代に生き残る組織とは?~「イノベーション創出」「レジリエンス力」に関する調査から考える~

「イノベーション創出とレジリエンスに関する調査」結果報告

学校法人産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 組織・人材アセスメント研究センター プロジェクトリーダー 田島 尚子 氏

「幹部チームの機動力」や「チームの駆動力」、「個人の実践力」で大事な要素とは

まず私からは「事業部門(ビジネス・ユニット)のイノベーション創出とレジリエンスに関する調査」の結果についてご報告をさせていただきます。
調査内容に関しては、下記3つの観点より要素を抽出いたしました。
1.結果/イノベーションの創出、レジリエンスの発揮
2.先行指標/個人の実践力、チームの駆動力、幹部チームの機動力
3.「背景要因/外部環境の認識・スタンス、パーパス、事業戦略、人材マネジメント、組織風土、組織構造の柔軟性、業務構造の弾力性

では最初に、「イノベーションの創出とレジリエンスの発揮」に関する調査内容をご紹介します。「イノベーションの創出」では、以下の内容をお聞きしました。

・競合他社に比べてイノベーティブな商品・サービスを市場に出しているか。
・競合他社に比べて、売上高の成長率や利益率が高いか。
・競合他社に比べて、市場や業界構造を大きく組み換えるような商品・サービスを提供しているか。
・商品・サービスラインナップや販路の拡充を図っているか。
・業務プロセスを改善しているか。

一方の「レジリエンスの発揮」では、以下の設問を設定しました。

・新型コロナ禍による事業活動への悪影響を最小限に食い止めることができたか。
・新型コロナ禍への対策を速やかに行うことができたか。
・新型コロナ禍以降の環境を見据えた新たな事業機会が模索されているか。
・新型コロナ禍の経験から、事業や市場の見直しを積極的に行っているか。
・新型コロナ禍にあってもBCPが円滑に遂行されて、事業継続および早期復旧が可能となったか。
・新型コロナ禍のような激変があっても、“なんとか切り抜けることが出来る”という雰囲気があるか。

分析に関してですが、(1)「あてはまる」、(2)「ややあてはまる」、(3)「ややあてはまらない」、(4)「あてはまらない」という4つの形で回答いただき、これを数値に変換した上で、「イノベーションの創出とレジリエンスの発揮」の平均値を求め、それがともに3.0以上であれば“High群”、どちらか、もしくは両方が3.0未満であれば“Average群”に分けて、双方を比較していきます。

その結果の概略ですが、「背景要因」の「外部環境の認識・スタンス」に関してはHigh群がAverage群を下回る結果となりましたが、それ以外はすべてHigh群がAverage群を上回るという結果になりました。本日はこのうち差が大きかった5要素と、皆様の関心が高いであろう「人材マネジメント」、「組織風土」を加えた合計7つの要素について詳細をご紹介させていただきます。
withコロナ時代に生き残る組織とは?~「イノベーション創出」「レジリエンス力」に関する調査から考える~
【先行指標】
・『幹部チームの機動力』
この中では、「当事業部の幹部層はイノベーション創出の重要性をメンバーによく語っている」、「既存事業が時代の変化に取り残されていないかの確認を常に怠らない」といった項目で差が開いており、この結果からHigh群の幹部の方々は、イノベーションに対して自ら旗を掲げ、ともに汗をかいていることが分かります。

・『チームの駆動力』
「当事業部ではメンバーがやりたいことに取り組ませてもらえる」、「社員の成長を支援してもらえる」というように事業部の構成員が組織に対してプラスの感情を抱いており、また「当事者意識をもって業務に取り組んでいる」というようにオーナーシップやプライドを持って仕事をしている様子も伺えます。さらに「当事業部では仕事の進め方は個人に任せられている」、「業務をメンバーに任せきりにせず、マネジャーによる適切な支援・介入がなされている」というように自由と規律のバランスがうまく保たれていることもわかります。

・『個人の実践力』
「職場メンバーの価値観の多様さから良い刺激を受けている」、「職場メンバー各人の強みをよく知っている」、「仕事の相談が出来る組織外の人的ネットワークを持っている」といったように、周囲とうまくネットワークを構築している様子がわかります。また「楽しんで仕事をしている」、「仕事をしていると、わくわくすることが多い」、「時間を忘れて仕事に熱中することが多い」といったように、“高揚感”や“没入感”をもって仕事に臨んでいる様子も伺えます。
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