「終身雇用の限界」や「ジョブ型採用への移行」、「副業・兼業の容認」など、昨今、雇用の在り方が大きく変わりつつある。それに伴って、働く「個」と企業の関係性にも変化が見られるようになってきました。果たして、どう変わろうとしているのか。そして本当の信頼関係を築くためには何が必要なのでしょうか。今回、「実力主義型終身雇用」を標榜し、株式会社サイバーエージェントの先進的な人事の在り方を創り上げてきた曽山 哲人氏と、『ALLIANCE アライアンス――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』の監訳者であり、現在はエール株式会社取締役を務める篠田真貴子氏をお迎えして、「企業と働く個の関係はどう変わる?どう変える?」をテーマにパネルディスカッションを実施いたしました。

講師

  • 曽山

    曽山 哲人 氏

    株式会社サイバーエージェント 常務執行役員 人事統括

    1974年生まれ、上智大学文学部卒業。新卒で株式会社伊勢丹(現 株式会社三越伊勢丹ホールディングス)に入社し、紳士服販売とECサイト立ち上げに従事したのち、1999年にサイバーエージェントへ。インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。 現在は人事統括として採用・育成・活性化・適材適所に取り組む。著書に「強みを活かす」「最強のNo.2」「クリエイティブ人事」など。



  • 篠田

    篠田 真貴子 氏

    エール株式会社 取締役

    慶應義塾大学経済学部卒、米ペンシルバニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大国際関係論修士。日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年10月に(株)ほぼ日(旧・東京糸井重里事務所)に入社。2008 年 12 月より2018年11月まで同社取締役CFO。「ジョブレス」期間を経て、2020年3月よりオンライン1on1を提供するエール株式会社の取締役に就任。「ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」監訳。



  • 寺澤

    寺澤 康介

    ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研 所長

    1986年慶應義塾大学文学部卒業。同年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役等を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、2015年4月ProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。8万人以上の会員を持つ日本最大級の人事ポータルサイト「HRプロ」、約1万5千人が参加する日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」を運営する。

働く「個」と企業の関係は、どう変わるのか――終身信頼を築く、新しい関係性へ ~サイバーエージェント常務執行役員 曽山哲人氏、エール取締役 篠田真貴子氏と考える~

メンバーシップ型もジョブ型も一つの手段に過ぎない、大事なのは経営課題を先行させること

株式会社サイバーエージェント 常務執行役員 人事統括 曽山 哲人 氏 
エール株式会社 取締役 篠田 真貴子 氏 
ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研 所長 寺澤 康介(ファシリテーター)

寺澤 経団連は、今年1月に発表した経営労働政策特別委員会報告の中で、日本企業は現在、大きな雇用の転換期を迎えており、従来のメンバーシップ型を中心に据えつつも、職務給中心のジョブ型の雇用も併用・拡大すべきだと訴えました。つまり雇用の柔軟化、多様化、またキャリア形成や社員教育についても個々の自律性に基づいたものが必要だということだと思います。曽山さんはこうした状況をどのように捉えていらっしゃいますか?

曽山氏 メンバーシップ型もジョブ型も一つの手段に過ぎないので、有効活用できる分にはいいと思います。しかし、ややジョブ型偏重に向かっている現状に対して誰もが違和感を抱いているのではないでしょうか。なぜかというと、それは手段が先行しているからです。

つまりジョブ型を導入することが目的になってしまうと、その会社はうまくいかないのではないかと思います。大事なのは、経営課題が先行していること。経営が今何を目指していて、その目指しているものに足りない要素が何かを考えた時に、その中にジョブ型を含めた多様な選択肢があり、必要に応じて選ぶことが重要なのです。

寺澤 サイバーエージェントさんは「実力主義型終身雇用」を打ち出しておられます。この言葉だけ見ると、実力主義はジョブ型で、終身雇用はメンバーシップ型という印象があり、矛盾する二つのものを合体させているようにも感じますが、このユニークな施策は、どのような経営課題から導き出されたものなのでしょうか?

曽山氏 背景には、「21世紀を代表する会社を創る」という弊社のビジョンがありました。21世紀を代表する会社とは、一体どのような会社なのか。例えば、実力主義と年功序列ではどちらがいいのかというと、やっぱり実力で見てほしいという声がある一方で、人間関係も重要だし、チームとして一緒に成長していくほうが楽しいという人もたくさんいます。

つまり終身雇用も大事だということです。ただし、弊社の終身雇用には「有能な人材に限る」という条件がついているのです。要するにこの施策は、一緒に能力を磨いて頑張ってくれる人たちに長期の雇用を提供し、不安を減らしていきたいという思想のもとで作られました。そういう意味では、篠田さんが監訳された『ALLIANCE アライアンス』は共感できる部分が非常に多く、あの本の中にも「終身信頼」という考え方が出てきますが、これからの組織には従業員との信頼関係が極めて重要であると感じます。
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