講師
服部 泰宏 氏
神戸大学大学院経営学研究科 准教授
神戸大学大学院経営学研究科准教授。神奈川県生まれ。 国立大学法人滋賀大学専任講師、同准教授、国立大学法人横浜国立大学准教授を経て、2018年4月より現職。日本企業における組織と個人の関わりあいや、ビジネスパーソンの学びと知識の普及に関する研究、人材の採用や評価、育成に関する研究に従事。2010年に第26回組織学会高宮賞、2014年に人材育成学会論文賞などを受賞。
熊本 康孝 氏
株式会社スタジアム 執行役員
大学卒業後、株式会社リクルートに入社。主にホットペッパーグルメの法人企画・営業に7年間従事する。その後、経験を生かし2015年5月から現職。現在は事業責任者としてインタビューメーカーの普及に努めており、クライアントの人事・採用の課題解決の提案、WEB・スマホ面接の新たな価値を世の中に創出している。現在は年間1,000名以上の採用担当者様にインタビューメーカーの提案を行う。
寺澤 康介
ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研 所長
1986年慶應義塾大学文学部卒業。同年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役等を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、2015年4月ProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。8万人以上の会員を持つ日本最大級の人事ポータルサイト「HRプロ」、約1万5千人が参加する日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」を運営する。
2020年に急速に広まった「オンライン面接」
寺澤 現在は新型コロナウイルスの影響で、採用のオンライン化が様々なシーンで進んでいます。もっとも目立つ変化がオンライン面接の導入です。こうした中、採用プロセスや市場はどのように変わり、採用戦略全体にどのような影響を与えていくのか。また、オンライン面接をどのように効果的な採用に結びつけていくのか。服部先生と熊本さんを交え、客観的なデータを見ながら議論していきたいと思います。寺澤 まずはオンライン面接の広がりについて、データを提示します。HR総研が2020年6月に行った調査では、21年卒採用に関し、面接をオンラインのみで行った企業が全体の20%、オンラインと対面の併用が同じく34%となりました。このうち、企業規模が1,001名以上に限ると、68%がオンラインのみ、またはオンラインと対面の併用です。非常に多くの企業がオンライン面接を導入したと言えるでしょう。さらに、22年卒採用については、全体の54%がオンラインと対面の併用を予定しているとの回答になっています。
また、学生向けに行った調査では、オンライン面接をまったく受けたことのない学生は6%に留まり、94%の学生がオンライン面接を1社以上で経験しています。昨年の20年卒の学生は35%しかオンライン面接を経験していないとの調査結果もあり、この1年で急増したことがうかがえます。このほか、大学キャリアセンターに22年卒向けに強化したい就職指導を聞いたところ、「オンラインでのキャリア支援」が最多の73%でした。
服部氏 この結果を見ると、オンラインでコミュニケーションすることが、学生にも企業にも完全にインストールされたと感じました。今は面接をオンラインで行うのが当たり前となりましたが、一方、最終面接のみを対面で行う企業も一定数あり、学生からは「なぜ対面なのか」という疑問の声も挙がっています。企業としては、従来のスタンダードだった対面の面接を行うことについてロジックを持たなければいけない状況になっていることも、認識しなければならないでしょう。
熊本氏 オンライン面接の一般化が進んだことは、当社の扱うオンライン面接システム『インタビューメーカー』のデータを見ても明らかです。インタビューメーカーによるオンライン面接の実行件数は2019年から2020年にかけて6.6倍に急増しました。
寺澤 オンライン面接はある意味で急遽やらざるを得ないもので、企業側は、対面の面接と比較して遜色なく実施できるのか、ミスマッチが起きるのではないかと不安や戸惑いを抱えていることも少なくありません。
服部氏 実際に会わないと不安、会うことで納得感や安堵感を得られるとの声も多く挙がっているのは事実です。私たちはある意味で、深いレベルで対面でのやり取りがインストールされています。そのため、一度くらいは会っておきたいという思いも当然に湧き上がってきます。安心感を含め、会うことで得られたものをオンラインでどのように担保していくか。これも重要なポイントになるのではないでしょうか。
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