「HRテクノロジー」や「ピープルアナリティクス」が話題に上り始めて数年、日本企業において、年々、人材データ活用に注目が集まっています。しかしながら、組織体制や人材育成等、未だ多くの課題をはらんでいることは事実です。本セミナーでは、国内企業約250社のサーベイ結果をもとに、先進企業の取り組みの現状や日本企業の課題について、HRトランスフォーメーションを専門領域とするPwCコンサルティング合同会社 北崎茂氏にお話しいただきました。
講師
北崎 茂 氏
PwCコンサルティング合同会社 組織・人事コンサルティング パートナー
外資系IT会社を経て現職。人事コンサルティング領域に関して15年以上の経験を持つ。組織設計、中期人事戦略策定、人事制度設計から人事システム構築まで、組織/人事領域に関して広範なプロジェクト経験を有する。ピープルアナリティクスの領域においては、国内の第一人者として、日系から外資系に至るまでさまざまなプロジェクト導入・セミナー講演・寄稿を含め、国内でも有数の実績を誇る。現在は、人事部門構造改革(HR Transformation)、人事情報分析サービス(People Analytics)におけるPwCアジア地域の日本責任者として従事。
人事部門においても、データ分析は重要なケイパビリティに
私はPwCコンサルティングで20年ほどHRコンサルティング領域を担当しております。人事機能の強化にあたり、データ活用は現在の人事のキーリテラシーとなっています。その中で、ピープルアナリティクスや人事機能高度化のためにHRテクノロジーはどうあるべきか、という研究を2012年から進めています。本日は、まずHRテクノロジーやピープルアナリティクスが求められている背景についてお話しします。その後、本題である「ピープルアナリティクスサーベイ2019」の結果を紹介しながら、今の日本企業に起こっている、データドリブンHRと呼ばれる変化について解説いたします。
はじめに、人事部が直面している変化とHRテクノロジーの変遷についてお話しします。デジタル時代を迎え、人事部門は今、さまざまな変化に直面しています。ビジネス構造の急速な変化、人事ポートフォリオの多様化、デジタルテクノロジーの進化、働き方改革の推進がここ10年で急速に起こる中で、人事にも変化が必要です。もはや過去の経験や勘が100%活かされるような状況ではなく、非連続性の高い環境への対応が求められます。そこで重要なのが、データです。
世界79カ国、約1,200名の経営者や人事責任者に対し、人事部門に必要なスキルを聞いたところ、「データを活用した意思決定」の回答が最も多く寄せられました。世の中が変化し、先の見通しが立たない状況だからこそ、正しい意思決定が企業の命運を左右します。そのため、データという材料を備え、意思決定の精度を向上させようという意識が経営者の間で高まっていることが分かります。
一方、HRテクノロジーは2010年頃から複雑な発展を見せています。いくつかの流れがありますが、まずはピープルマネジメントです。HRテクノロジーのユーザーは人事だけでなく現場マネージャーにまで広がることにより、現場でも使いやすい機能へと進化してきました。次に、エンプロイーエクスペリエンスの考え方により、従業員が望むサービスツールが登場したのです。さらに、最近は現場の生産性やチームの一体感に寄与することが人事にも求められるようになってきました。そこで、HRテクノロジーにおいても生産性や共働を目的としたツールも出始めています。
そして、最近のHRテクノロジーの進化において注目されているのが、ピープルアナリティクスです。今、先進企業が目指すピープルアナリティクスは、ワークスタイルやビジネスデータ、各部門固有のデータなど、多様なデータを活用して、各部門や従業員の意思決定に活用していくこと。そして、ピープルアナリティクスは、現状において人材マネジメントのほとんどのシーンで活用されています。例えば、これまで日本ではピープルアナリティクスが新卒採用にのみ活用されていましたが、現在では人員計画やワークスタイルマネジメントなどにまで広がっています。
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