今から25年前、インターネットの登場に合わせ、就職ナビがスタートしました。それから4半世紀を経た2020年、「働き方改革」が叫ばれても、なかなか進まなかったテレワークがコロナ禍の影響で一気に浸透したと同じく、「採用プロセスのオンライン化」も一気に加速しています。個別化・多様化・通年化が進む「大変革」の中で、企業はいかに学生と向き合うべきなのでしょうか。今回は、逆求人型就活サイト『OfferBox』を提供する株式会社i-plugとHR総研が共同で実施した『Withコロナ時代における新卒採用の現状と未来に関する調査』結果をもとに、これからの新卒採用のあり方について話し合いました。
講師
直木 英訓 氏
株式会社i-plug 取締役 COO
1981年石川県生まれ。2004年立命館大学政策科学部卒業。2016年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。新卒で株式会社インテリジェンス(現パーソルグループ)に入社。アルバイト・パート事業で営業と企画のマネジメントを務めた後、新卒紹介事業の責任者に就任。2014年i-plugの取締役に就任し東京オフィスの立上げに従事。現在は営業、マーケティングを統括。
松岡 仁
ProFuture株式会社 取締役 / HR総研 主席研究員
1985年大学卒業。文化放送ブレーンで大手から中小まで幅広い企業の採用コンサルティングを行う。ソフトバンクヒューマンキャピタル、文化放送キャリアパートナーズで転職・就職サイトの企画・運営に 携った後、2009年より現職。各種調査の企画・分析を担当し、「東洋経済オンライン」「WEB労政時報」に 連載中。
コロナ禍で面接方法や採用スケジュールに大きな影響
松岡 共同調査の結果から主要な項目をいくつかピックアップしてご紹介いたします。まずは、「コロナ禍における新卒採用業務の影響」について聞いたところ、影響範囲は、「面接方法の見直し・再設計(オンライン面接への移行)」(75%)と「採用スケジュール」(64%)に集中しました。特に大企業では、「面接方法の見直し・再設計」は9割に上っています。また、3位には「インターンシップ」(37%)が入っていますが、2022年卒採用に向けたインターンシップの実施時期については、直木さんはどのように見られていますか?
直木氏 確かに、コロナウイルスの影響により、2021年卒採用の遅れもあって、夏のインターン実施企業は大幅に減少しているようです。実際、弊社が行ったアンケート調査でも、昨年よりも夏のインターンは後ろ倒し傾向が見られます。また、8月時点での2022年卒
の夏のインターンの実施状況に関しても、4割の企業は「実施しない」と答えています。
松岡 続いて、今後注力していく予定の「母集団形成手法」について聞いたところ、「自社採用ホームページ」(47%)が最も多く、次いで「逆求人型サービス」となりました。これは、就職ナビによる採用情報の発信やプレエントリーの受付が「3月1日解禁」に縛られるのに対し、上位2つの手法については制約がなく、早期から学生にアプローチ出来ることが大きな要因でしょう。中でも近年、「逆求人型サービス」は、企業規模を問わず広く支持されています。直木さんは、なぜこれだけ注目されているとお考えですか?
直木氏 WEBですべて完結できる点が、コロナ禍において非常に相性が良いといえるでしょう。そして、もう1つの理由としては、「学生の利用が増えている」という実感も大きいのではないでしょうか。つまり、学生との接点を持つために、多くの企業は学生が今どんなサービスを利用しているのかを気にされていると思うのです。例えば、弊社のサービス『OfferBox』の場合、2021年卒の登録者数は14万3,000人と、就職希望学生の3人に1人に使っていただいています。そうした情報は確実に企業の耳にも届いているはずです。加えて、母集団の質的向上」というニーズが増えていることも背景としてあると思います。
松岡 続いて、2022年卒に向けたインターンシップの取り組みに関して、「オンラインの活用状況」を聞いたところ、「未計画」の企業がまだ多いものの、大企業では53%、中堅企業では37%、中小企業では23%の企業が、全部または一部をオンラインで実施すると答えました。一方、「全てオフラインで実施する」と答えた企業は2割にも満たない状況です。では、実際にオンラインでどのような内容のインターンシップを行っているのでしょうか。最も多い回答は、「会社説明会」(64%)となっています。やはりオンラインインターンシップは半日や1日タイプのプログラムが多く、「会社説明会」や「人事・先輩社員との個別面談や少数座談会」が多いようです。直木さんは、オンライン化によって採用プロセスやインターンシップの何が変わるのか、企業にとってのメリットやデメリットは何だとお考えですか?
直木氏 採用プロセスのオンライン化によって起こることとしては、次の5つが予測されます。1つ目は「人や場が競争優位になりにくく、発信するコンテンツ力が問われる」、2つ目は「時間と場所の制約が緩和し、接点数が増加する」、3つ目は「オペレーション上の課題からグループ選考の難易度が上がる」、4つ目は「取得可能情報(学生のパーソナル情報)が減るため、見極めの難易度が上がる」、そして5つ目は「感情を動かしにくくなるため、フォロー工数がさらに増える」です。
インターンシップのオンライン化によるメリットは、全体的に学生との接点が増えることや、開催・準備にかかるコスト・リソースの削減が挙げられます。一方、デメリットとしては、やはり見極めの難易度が上がること。今まで応募が少なかった企業にとっては良いトレンドになると思いますが、ある程度応募があった企業にとっては、見極め難易度が上がる中で初期接点が増えるため、見極め工数の増加が予測されます。
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