講師
山田 久氏
株式会社日本総合研究所 副理事長
1987年株式会社住友銀行(現三井住友銀行)入行。1991年(社)日本経済研究センター出向。1993年株式会社日本総合研究所調査部出向。1998年同主任研究員。2003年同経済研究センター所長。2005年同マクロ経済研究センター長。2007年同ビジネス戦略研究センター所長。2011年同調査部長/チーフエコノミスト、2015年京都大学 博士(経済学)、2017年日本総合研究所 理事、2019年10月から現職。
楠田 祐氏
HRエグゼクティブコンソーシアム 代表
NECなどエレクトロニクス関連企業3社を経験した後、ベンチャー企業を10年間社長として経営。中央大学 大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール)客員教授を7年経験した後、2017年4月より現職。2009年より年間数百社の人事部門を毎年訪問。人事部門の役割と人事のキャリアについて研究している。2016年より、毎週、Podcast「楠田祐の人事放送局~有名企業の人事部長にズバリ聞く!」(ProFuture)のパーソナリティを務める。主な著書に、『破壊と創造の人事』(Discover 21)、『内定力2017~就活生が知っておきたい企業の「採用基準」』(マイナビ)など。
新型コロナウイルス危機が経済に及ぼす影響と、Afterコロナに備えて日本企業が目指すべき人事制度改革 / 株式会社日本総合研究所 副理事長 山田 久氏
「半値戻し経済」あるいは「9割経済」がしばらく続く
まず、新型コロナウイルス危機が経済・雇用に与えている「マクロ的影響」についてお話ししたいと思います。新型コロナウイルスの感染者数の推移から第2波といえる状況に入り、今後の「経済」に目を向けると、「半値戻し経済」あるいは「9割経済」が続くとみています。リーマンショックのときは元の経済水準に戻るのに5年程度かかっています。今回も、最低でも2、3年はかかるとみておいた方がよいでしょう。そこでマクロ的に重要なのは、取引関係の中で物の価格に対する下落圧力、つまり「コストダウン圧力」がかかるということです。マクロの雇用情勢も悪化しています。「失業率」だけを見れば、現在、2.9%という水準ですが、就業者数は100万人ほど減少しているのです。失業率とは仕事を失った人のうち職を探している人のことですから、仕事を失ってもすぐ仕事を探していない人が一定程度いたり、自営業で休業はしていないが就労時間を短くせざるを得ない人がいたりするため、潜在的失業者はもっと多く、今後顕在化するリスクもあります。日本銀行では企業に「雇用人員が過剰か不足しているか」についてのアンケート調査を行っており、2019年までは「不足している」と答える企業が極めて多い状態だったのが、「過剰感がある」と答える企業が急速に増えています。さらに、「労働分配率」も急激に上がっています。リーマンショック後は4、5年かけて、特に製造業の雇用が減っていきました。今回も、マクロの経済水準は足元では一定程度戻ってきていますが、まだ1割ぐらい低い水準です。この先もなかなか元に戻らないとなると、特に大手企業では、しかたなく当面は赤字決算をするとしても、2021年、22年に向けて赤字を出し続けるわけにはいきませんから、取引関係の見直しや、人件費などのコスト削減に本格的に着手せざるを得なくなってきます。すでに雇用調整の動きは出ていますが、希望退職が実施されたり、あるいは中小企業にさまざまなコストダウン要請が行われたりするなど、じわじわと雇用情勢が悪化していくことが予測されます。
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