事業の成長を実現させる戦略人事に変わる必要性を強く感じながらも、実際にはオペレーション業務に追われ、戦略人事に取り組む時間の余裕がない人事は少なくない。アウトソーシングの導入は、コア業務に集中するための有効な施策のひとつだ。今回は、給与計算業務アウトソーシングのパイオニアとして、国内最多、249社88万人の受託実績を持つ株式会社ペイロール取締役の香川憲昭氏にインタビューを実施。企業の人事変革パートナーとして同社が提案している戦略的アウトソーシングの内容や、香川氏自身が取り組んできた人事変革の経験、デジタル時代において人事が事業に貢献するために必要なことなどについてお聞きした。
人と組織がビジネスの成長についていけないための停滞に直面
寺澤 香川さんは、現在、株式会社ペイロール取締役でいらっしゃいますが、過去には成長企業の人事改革を陣頭指揮されたこともあるそうですね。これまでのキャリアで経験してこられたことをお聞かせいただけますか。香川 私は約20年、企業の成長にコミットする立場でキャリアを築いてきました。非常に大きな経験だったと思うのは、以前、ある小売業の、店舗数が100を超えてさらに成長拡大の過程にある企業に在籍し、事業開発を最前線で担っていた時です。当時、経営トップから新たに課せられたのが、人事組織を変革せよとのミッションでした。ビジネスをスピーディに成長の軌道に乗せるためには、ビジネスと同じスピードで人と組織も成長することが求められます。人事組織の変革が遅れると、人と組織がビジネスの成長についていけず、足を引っ張る要因になってしまうのです。その企業も当時、そのような軋みが起き始めていました。小売業の場合は特に、ビジネスの成長は店舗の成長であり、店舗の成長は店舗のリーダーの技量で8割以上が決まります。もうこれ以上放置できないタイミングだということで、早急にリーダー人材の育成、人と組織の変革が求められたのです。そこで、この改革に2011年から取り組み、人事の専門知識が全くない状態から必要な施策を練り上げ、実行し、何とかビジネスを成長の軌道に戻すことができました。
寺澤 事業部門から人事部門に仕事が変わられたときに、違いを感じたことはありましたか。
香川 最初に気付いたのは、ビジネスサイドと人事サイドの常識には隔たりがあるということでした。人事サイドは専門性が非常に高く、方法論が確立されていて、それをルール通りに回していくことが求められるためか、失敗をきわめて恐れる傾向があると感じます。対して、ビジネスサイドはリスクを取りながらビジネスを成長させることが、思考と行動の両面で求められます。そのギャップにとまどいながら最適解を探す中で、海外のグローバル企業では人と組織についてどのような施策を打って経営に貢献しているのだろうかとケーススタディーを重ね、最適解に近いイメージをつかむことができたのが2012年から2013年あたりでした。
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