環境が変わる中で成果を出し続けるには、自分自身が変わり続けなければなりません。しかし、それは簡単ではありません。自己変革には2つのハードルがあります。1つは、自らの間違いに気づけるかどうかです。そして、たとえ気づけたとしても行動を変えられるかどうかは別問題です。頭では理解しても、行動に移せないことは多々あります。これが2つ目のハードルです。「自らの間違いに気づき、行動を変える」―このシンプルな課題を妨げているものは何なのでしょうか。どうすれば2つのハードルを乗り越えることができるのでしょうか。国内企業のミドルマネジャー1,031人への定量調査結果をもとに説明します。
第2部 気づいたことを行動に移すために
前編はこちらからトム・ソーヤの冒険という本があります。その著者であるマーク・トウェインは、このようなことを言ったそうです。
「禁煙なんて簡単だ。私はもう何千回もやっている。」
このコラムを読んでいる方々の中にも、禁煙をしなければと思っているのになかなかできない人がいるのではないでしょうか。あるデータによれば、食生活を改めたり運動をしなければ心臓病で死ぬと専門医に警告されても、そのようにする人は7人に1人しかいないそうです(注5)。人は変わらなければと思っても、行動に移せるとは限らないのです。
4. 仕事上の行動変容の阻害要因
ここでは禁煙ができない理由を分析しても仕方がありません。ビジネスの場面で行動変容ができない理由は、禁煙ができない理由とはおそらく異なるでしょう。ビジネスの世界では、ビジネス特有の障害があるはずです。そこで1,031人に対する定量調査を行い、その調査データを因子分析という手法で分析した結果、次の5つの障害が抽出されました。仕事上の行動変容を阻む5つの障害
●自分自身の迷い:なかなか強い意志を持てず、このままでもよいのではと思ってしまうこと
●通常業務での忙殺:日常業務に追われ、腰を据えて取り組む時間を確保できないこと
●現状の枠組みの弊害:現状の制度やルール、自分の権限や業務範囲と整合がとれないこと
●強固な反対:上司や利害関係者に認めてもらえなかったり、強い反対があること
●周囲の無関心:周りがこのままでもよい、面倒なことに巻き込まれたくないと思っていること
5. 障害を乗り越えて行動を変えるために
さて、これら5つの障害は、さらに3つに分類することができます。「自分自身の迷い」と「通常業務での忙殺」は“本人”に起因することです。そして「現状の枠組みの弊害」は“構造”に、また「強固な反対」と「周囲の無関心」は“周囲”に関することです。つまり、行動変容の障害を乗り越えるには、“本人のマネジメント”、“構造のマネジメント”、“周囲のマネジメント”、という3種類のマネジメントが必要になります。面白いことに、自己変革といいながら、マネジメントすべきものは自己だけではないのです。行動変容に必要な3つのマネジメント
●自分自身の迷い・通常業務での忙殺:本人のマネジメント
●現状の枠組みの弊害:構造のマネジメント
●強固な反対・周囲の無関心:周囲のマネジメント
それでは、この3種類のマネジメントのポイントは何でしょうか。それを考えるために、5つの障害をもう少し掘り下げることにします。どのくらい強い阻害要因になっているのかを属性別(男性・女性×一般社員・部課長)に整理したのが、図表4です。
この図表からは、いくつかの特徴が読み取れます。まずは、いずれの属性でも大きな障害になっているのが、「通常業務での忙殺」です。自分の行動ややり方を本当に変えるべきかを迷っている(「自分自身の迷い」)のではなく、迷いはないのだけれども実行に移すための十分な時間を確保できないことに悩まされているようです。“本人のマネジメント”では、時間を確保することがポイントになりそうです。
そして、「現状の枠組みの弊害」、「強固な反対」、「周囲の無関心」には、共通の傾向がみられます。下の2本の棒グラフよりも、上の2本の方が長くなっています。つまり、一般社員よりもマネジャーの方が、より強い阻害要因として感じているということです。“構造のマネジメント”と“周囲のマネジメント”は、特にマネジャーが意識しなければならないといえます。マネジャーともなれば、自己変革といえども“自己”だけで完結できないものがほとんどだからなのでしょう。既存の仕事の枠組み(構造)では収まりきれないものもあるでしょうし、周囲への影響も少なくないのでしょう。
こうした中では、具体的にどうすればよいのでしょうか。自分の間違いに気づけた後に、すぐに自分の行動を変えたり新しいやり方を導入するには、何に気をつければよいのでしょうか。ここからは、マネジャーを想定した上で、いくつかのヒントを提供します。
そして、「現状の枠組みの弊害」、「強固な反対」、「周囲の無関心」には、共通の傾向がみられます。下の2本の棒グラフよりも、上の2本の方が長くなっています。つまり、一般社員よりもマネジャーの方が、より強い阻害要因として感じているということです。“構造のマネジメント”と“周囲のマネジメント”は、特にマネジャーが意識しなければならないといえます。マネジャーともなれば、自己変革といえども“自己”だけで完結できないものがほとんどだからなのでしょう。既存の仕事の枠組み(構造)では収まりきれないものもあるでしょうし、周囲への影響も少なくないのでしょう。
こうした中では、具体的にどうすればよいのでしょうか。自分の間違いに気づけた後に、すぐに自分の行動を変えたり新しいやり方を導入するには、何に気をつければよいのでしょうか。ここからは、マネジャーを想定した上で、いくつかのヒントを提供します。