DDI社の商品開発力は非常に高く、次々と日本へ新商品が送られてきました。海外派遣管理者向けのOMプログラムは、DDI社と協同で作成したのものですが、これは企業が海外に拠点を作る動きが盛んになった1977年頃から良く売れ始めました。
第17回 DDI社との交流とアセスメント・プログラムの動き
このようなDDI社の新商品やOMプログラムなどは、外国籍を持った講師の活用が有効でしたので、外国人講師を採用しようと思い立ちました。そこでDDI社へ紹介を仰いだり、また、新潟県の浦佐にある国際大学の卒業生やその友人達にも呼びかけたりなどして、次々と採用し、やがて10名を超える人数になりました。

国籍はアメリカが最も多く、その中には日系二世のバイリンガルも数名いたため、私たちには大助かりでした。そのほか、中国人や韓国人、それにバングラディッシュの方もいました。バングラディッシュの方は、DDI社が引き受けた国連職員のアセスメント・プログラムに、DDI社のメンバーと一緒に参加することが出来、その様子を私たちに聞かせてくれたのですが、その内容はまことに興味深いものでした。

異国籍の講師たちと働くと、時折、思いがけない発言に驚かされることがあります。「机の上は自分で拭いてね」と言うと「掃除は私の仕事ではない」と返されたり、何人かを一緒に同じ車両で出張させると「階層が違う人とでは…」と躊躇ったりするのです。最初、私たちにはその意味が理解出来なくて困りました。しかしながら、彼らの働きによって海外進出する日本企業の社員教育のプログラム普及と発展は大いに進みました。彼らは今、社内にはいませんが、必要な時にはやって来て助けてくれます。

2008年には、DDI社が日本にスタッフを駐在させ、DDI・ジャパンという組織がスタートし、MSCとの連繋を深めることにしました。やがてこの組織はMSCの中に入り、より細かく連繋を取るようになりました。

DDI社の創業は1970年です。1971年に、私たちはアメリカ電信電話会社を訪問してブレイ博士にお会いし、アセスメント技法に出会いました。翌1972年に、ブレイ博士と現DDI社会長のバイアム博士が来日し、日本にアセスメント技法を紹介すると同時に、MSCとの技術提携が始まりました。ですから、現在まで実に45年間のお付き合いということになります。

最初の15年間は、両博士が毎年1〜2回来日して、日本の各都市を巡回し、MSCが人材アセスメントを展開する上で大きな助けとなってくれました。のちにヒューマン・アセスメントと名付けられる本技法は、時代の動きもあって、1980年頃から、多くの企業が人事制度の一環として採用してくれるようになりました。以来、今日でもアセスメント技法は、MSCの主力商品となっています。

DDI社は今、この技法を米国内や欧州だけでなく、アジア地域に向けて展開を計り、支店をアジア各国に置いています。MSCもDDI社と一緒になって、アジア各国に拠点を持つ日本企業のお役に立つ努力しています。アジア地域では各国の歴史や文化が異なりますので、グローバルに仕事をすると言っても、一つひとつの国の実情を知らなければ仕事になりません。これからは、より一層きめ細かな情報収集の努力が必要になってきます。具体的には、現地企業のほうがMSCよりも十分な情報を持っていますので、MSCは更に頻繁に海外に出掛け、各企業が持ち合わせていない情報を幅広く得なければいけないでしょう。

DDI社のバイアム博士は、初期の15年以降も、絶えず来日してセミナーの主役になってくれ、MSCの35周年のフォーラムでは記念講演もしてくれました。また40周年のパーティーでは、ご夫妻揃ってお祝いに来てくれました。

MSCの幹部はアセスメント導入以降も、さらなる学びを得るため、毎年DDI社を訪れ、やがて幹部だけでなく、講師や営業部員もDDI社を多勢で訪れて相互交流を計るようになり、これまで多くのことを学んできました。その他、アセスメント国際会議やアジア・パシフィック会議、ASTD会議(アメリカン・ソサイエティ・オブ・トレーニング・ディレクター会議)などにも、MSC幹部の誰かが毎回必ず参加するようにしてきました。

MSCが30周年の時、DDI社は25周年でしたので、両社の幹部がハワイに集まり、ともに祝ったり遊んだりしました。長い付き合いを経て、何時の間にか仕事と遊び、両方をともにするようになっていました。

個人的にも、ブレイ博士の家に泊まったり、バイアム博士の家に出張の度にお世話になったりしているうちに、次第に、両博士と家族的な付き合いになりました。とりわけバイアム博士とは、博士のご両親とまで交流をさせて頂きましたし、一緒に船で長旅をしたり、冠婚葬祭にも伺ったりなど、気楽な交友関係を築くまでに至りました。それだからこそ、ここまで長いお付き合いを保てたのかもしれません。

最近では2017年に、バイアム博士の富士登山へもお付き合いしました。博士は来日するたびに私と一緒に1週間ほど、日本の各地への旅行を楽しむのですが、富士登山だけはまだだったのです。博士が「どうしても一緒に富士山に」と言われたのですが、高齢の私には登山は無理なので、登山口より先はガイドに同行して貰いました。

2016年は、MSCが創業50周年、DDI社は45周年の年でした。しかし、企業力は比べようもなく、とくに商品開発力において大きな差があります。MSCの今後の課題は、そうした商品開発力の強化と言えるでしょう。それには、自分の会社の中だけ見るのではなく、世の中の動きや、海外諸国の状況、ご同業他社の仕事内容など、すべてを幅広く、視線を前や横や後ろに、また、過去や未来に向けて考察し、自分も会社も更新し続けていかなければならないと思います。

MSCはこれまで50年続いてきましたが、これからは若い人たちが中心となって、新しい“次の50年”を創っていくのです。これまで追求してきた、女性の能力開発とアセスメント技法による人材能力評価の2つのテーマは、これから先も求められるでしょうし、DDI社との協業を続けながら一歩一歩前進していくことが大事です。

また昨今は、多くのご同業が様々なテーマにチャレンジしています。MSCでももちろん新しいテーマの研究は必要ですが、あまり左顧右眄することなく、これまで蓄積してきたテーマを更に深め、より高い専門性を維持していくのがよいと思います。
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