
とはいえ、各社を訪問して、女性社員の能力開発と活用を説いても、人事担当者の意見に失望させられるケースも多くありました。教育内容について、「女子社員にはマナー教育で十分」と言うのです。そうした男性担当者にとっては、女性は何年勤務しても「女子」、つまり「女の子」なのです。
新入女性社員教育ならば、マナーだけで良いでしょう。でも、2年目、3年目、ましてベテラン社員となったら、後輩指導、仕事の改善、グループの纏め役といった役割があります。そのため私達は「コミュニケーション論や人間関係、リーダーシップを発揮する女性リーダー育成などの教育内容が必要です」と説くのですが、なかなか受け入れられてもらえません。
いっこうに打破できない状況に業を煮やし、私は「米国企業ではどうなのか?」と考えました。 訪米して、女性社員教育や、女性の能力開発と活用の実情を見て来たい ―― そう考えた私は社長に願い出て、米国に出張することにしました。そこでまず、米国の大企業50社宛てに手紙を書きました。「私は日本企業で女性社員教育をしています。貴社の女性社員教育の企画を知りたいのです」といった内容です。
すると、運よく35社以上から返事が来ました。どの社も「我が社は男女別の教育企画はありませんが、是非ご来社ください」というように返してくれました。私は興奮と喜びを感じながら、その中から訪問先を12社に絞りました。1ドル360円の頃で、出張経費を考えると1ヵ月間の滞在が精一杯です。顧客各社に声を掛けると、4社が同行を決めてくれました。そこへIBM勤務の娘と旅行社の人も加えて計7人で出発です。
この渡米で、アメリカ電話電信会社(AT&T)の訪問時、期せずして、ダグラス・W・ブレイ博士の話を聞けたことは幸運でした。博士は著名な心理学者で、人材の能力評価を研究しており、当時、AT&T社の管理者選抜の仕事をされていました。この博士との出会いによって、MSCは「アセスメント・プログラム」という大きな商品を得ることになります。私にとっても、女性能力開発と活用のテーマに加え、生涯の研究課題となる「人材の能力発見と評価」という新テーマを得ることができたのでした。
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