
教壇に立って見回すと、成る程、怖いような威厳のある男達が座っています。年齢は私より遥かに上の50歳前後、仕事経験も豊富な集団と思われ、その威圧感から教壇に立っていてもおのずと足が震えてしまいます。「30歳の小娘が、何を教えられるのだ?」。彼らの顔は言葉に出さずともそう語っています。
でも仕事です。やるしかありません。私は決心して恐る恐る、でも大声で言いました。「私はここに管理者訓練講師として来ました。そして、ここに新しい管理手法のテキストを持っています。ここに述べてある理論をきちんと皆様に伝えますが、実際の管理者経験は全くありません。でも懸命に伝えますから、皆様はご自分の経験と実績で、それに血や肉を付けて、補って聞いてください」。
すると、メンバーの中で特に大きくガッシリした男前の人が「気にいった。ネエちゃん。」と声を掛けてくれ、続いて全員の大きな笑い声に包まれました。「助かった!!」。私はホッとして肩で息をつき、胸が一杯になりました。
後で分かったのは、このとき声を掛けてくれたのは、キャプテン・乙部という、グループ中の大リーダーでした。彼の一言のおかげで、参加者達は優しい笑顔でいてくれ、やっとのことで私は初舞台を務めることができたのです。今になって振り返ってみれば、懸命に伝えるとは言ったものの、私の事前の勉強は不十分でした。しかし、その時思ったのは「初舞台は怖いが、逃げてはいけない。包み隠さず素直に、怖さも白状して、心を込めて言うこと。格好をつけることは無い」ということでした。
コンサルタントは参加者より未熟で物知らず、という場面は多いのです。そういう時でも、ありの儘の自分で、与えられたテーマを真剣に勉強し、仕事に取り組むことが大切です。その後も多くのコースで失敗経験を重ねましたが、結果としてそれが私の成長に繋りました。
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