「皆さんの会社は女性が活躍するための制度が整っていますか?」と問いかけると、「出来ています」と答えがかえってくる。産前産後休暇、育休、時短制度などを利用している人は多く、職場復帰も出来ているからだ、と言う。その運用ができているのだから、育児のためだけに在宅勤務制度を入れる必要はない、というのが多くの企業の経営層の意見である。
では、出産後、退職した人の人数を把握しているだろうか。
では、出産後、退職した人の人数を把握しているだろうか。
晩婚化の影響で、女性のライフイベントにも変化が出ている。第1子の平均出産年齢が30歳を超えたのである。これにより、体力のいる育児に専念をしたいと、出産をした女性全体の7割近い女性が退職をしている。残りの3割の女性が育休から復帰し継続して働いていることをもって、「対策ができている」と認識するのは、女性の就業人口を増やす上では誤りである。さらに、その他にも、育児中に介護をするWケアの確立が格段に上がることも想定されるだろう。
2016年4月1日に女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)が施行され、常時雇用する労働者の数が301人以上の一般事業主には、以下の事項が義務づけられている
この義務化による弊害について、以下のような相談を受けることがある。
【1】女性社員の比率を上げるため女性の新卒採用率をあげたケース
技術者などを多く雇用する企業で、社員の男女比の9割が男性社員であるため、女性比率が極端に低く、4割を下回っていた。男女雇用機会均等法のポジティブアクション(※)の対象となっているため、新卒採用で、100名の内99名を女性採用としたが、それに合わせた研修をどのように設計したらよいのか、また、この年代だけがほぼ女性社員となるため、出産する年齢になった時に、人員不足の状況に陥るのではないかという不安がある。
※ポジティブアクションとは、固定的な性別による男女の役割分担意識や過去の経緯から、営業職に女性はほとんどいない、課長以上の管理職は男性が大半を占めている等の差が男女労働者の間に生じている場合、このような差を解消しようと、個々の企業が行う自主的かつ積極的な取組をいう。
【2】女性管理職比率を上げるために、育休後の女性を突然部長にさせたケース
出産前は一般職であった女性に対して、子供のことで突然休むなど、子育て中は一般社員の時短勤務にしてほしいと頼んだが、他に丁度良い女性社員がいなかったため、数合わせで部長に昇進させられた。仕事をどこまでしたらよいのかわからない。
また上記とは逆に本人の希望により子育てが終わってキャリアを積みたい女性が管理職試験を受け管理職になったが、仕事は今まで通り、と「お飾り」にされたケースもある。どちらも本質的な管理職の役割は期待されておらず、知る必要のある会議の内容や重要事項は降りてこない等、女性管理職の人数を増やすための数合わせとなっている。
このように、会社の数合わせが女性のモチベーションを下げ、キャリアアップの為のロールモデルを失ってしまう要因になっている。
この数合わせで一番深刻なのは、数さえ確保できれば女性活躍推進法に則った対策ができているのだと誤認識してしまうことにある。
女性の働き方改革を行うにはこの誤認識を解決しなくてはならない。
2016年4月1日に女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)が施行され、常時雇用する労働者の数が301人以上の一般事業主には、以下の事項が義務づけられている
自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析正 | 状況把握の必須項目(省令で規定) (1)女性採用比率(2)勤続年数男女差(3)労働時間の状況 (4)女性管理職比率※任意項目についてさらに検討 (例:非正規雇用から正規雇用への転換状況等) |
状況把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出・公表 | 行動計画の必須記載事項 目標(定量的目標)→取組内容→実施時期→計画期間 |
女性の活躍に関する情報公表 | 情報公表の項目(※省令で規定) 女性の職業選択に資するよう、省令で定める情報(限定列挙)から事業主が適切と考えるものを公表 |
女性の活躍に関する情報公表 | 認定制度 認定基準(省令)は、業種毎・企業規模毎の特性等に配慮し、今後検討 |
女性の活躍に関する情報公表 | 厚生労働大臣(都道府県労働局長)による報告徴収・助言指導・勧告 |
この義務化による弊害について、以下のような相談を受けることがある。
【1】女性社員の比率を上げるため女性の新卒採用率をあげたケース
技術者などを多く雇用する企業で、社員の男女比の9割が男性社員であるため、女性比率が極端に低く、4割を下回っていた。男女雇用機会均等法のポジティブアクション(※)の対象となっているため、新卒採用で、100名の内99名を女性採用としたが、それに合わせた研修をどのように設計したらよいのか、また、この年代だけがほぼ女性社員となるため、出産する年齢になった時に、人員不足の状況に陥るのではないかという不安がある。
※ポジティブアクションとは、固定的な性別による男女の役割分担意識や過去の経緯から、営業職に女性はほとんどいない、課長以上の管理職は男性が大半を占めている等の差が男女労働者の間に生じている場合、このような差を解消しようと、個々の企業が行う自主的かつ積極的な取組をいう。
【2】女性管理職比率を上げるために、育休後の女性を突然部長にさせたケース
出産前は一般職であった女性に対して、子供のことで突然休むなど、子育て中は一般社員の時短勤務にしてほしいと頼んだが、他に丁度良い女性社員がいなかったため、数合わせで部長に昇進させられた。仕事をどこまでしたらよいのかわからない。
また上記とは逆に本人の希望により子育てが終わってキャリアを積みたい女性が管理職試験を受け管理職になったが、仕事は今まで通り、と「お飾り」にされたケースもある。どちらも本質的な管理職の役割は期待されておらず、知る必要のある会議の内容や重要事項は降りてこない等、女性管理職の人数を増やすための数合わせとなっている。
このように、会社の数合わせが女性のモチベーションを下げ、キャリアアップの為のロールモデルを失ってしまう要因になっている。
この数合わせで一番深刻なのは、数さえ確保できれば女性活躍推進法に則った対策ができているのだと誤認識してしまうことにある。
女性の働き方改革を行うにはこの誤認識を解決しなくてはならない。
育児休暇後のキャリアアップ、長時間労働がもたらすもの
管理職になりたくない女性は75.6%。子どものいる女性は、「長時間労働」がネックになっており、管理職になりたくない、と答える女性が多いと言われている。
上記の表にもあるように、「長時間労働=管理職」が女性のキャリア意識と職場の多様な働き方に影響を及ぼしている。
もう1つ問題となっているのは、ロールモデル・目標となる女性管理職がいないということである。
このロールモデルについて、企業はどの様な対策をしているのだろうか。
以前、ある企業に「女性社員が目標にできるような管理職を中途採用しないのですか?」ということを質問した。その問いに対し、「当社は現在、積極的な管理職の中途採用を行なっていない。過去に数名の女性の管理職採用を行ったが、企業風土に馴染めず全て退職してしまった。」と回答があった。
以前、ご紹介したテレワークでも風土の問題を取り上げたが、女性管理職についてもまた風土の問題がでてくる。
この風土を突破できない限り、数合わせの女性管理職という不幸な状況は改善されない。
これまで「女性管理職の募集・採用」は、男女雇用機会均等法に基づく指針において、総合職、一般職などそれぞれの雇用管理区分でみて、労働者に占める女性の割合が4割を下回っている場合のみ、特例として、女性のみを対象としたり、女性を有利に取り扱うことが認められていた。だが、男女雇用機会均等法に基づく指針が改正され、改正後は、上記の場合に加え、係長、課長、部長などそれぞれの役職でみて、その役職に占める女性の割合が4割を下回っている場合も、特例として、女性のみを募集対象としたり、女性を有利に取り扱うことが認められるようになった。これにより女性管理職を増やすという取り組みが行いやすくなった。
例えば、総合職に占める女性の割合が45%という企業では、総合職の募集・採用において、女性のみを対象としたり、女性を有利に取り扱うことはできなかったため、総合職である部長や課長等の管理職を女性限定で募集したり、女性を優先的に採用することはできなかった。しかし、指針の改正により、たとえ総合職での女性職員の割合が40%を超えていても、各管理職に占める女性割合が、40%を下回っている場合、当該管理職の募集・採用において、女性のみを対象としたり、女性を有利に取り扱うことができるようになった、ということだ。この場合、女性職員の割合が、係長:50%、課長:35%、部長:10%ならば、課長と部長はそういった採用をすることが可能である。
※引用元:厚生労働省・都道府県労働局
それではここで、女性活躍が失敗する理由を4つ挙げる。
(1)女性を採用・育成できない
優秀な女性を獲得できない、社内のロールモデルが少なく退社されてしまう。
(2)休業・時短勤務後の復職がうまくいかない
制度はあるが風土がない、復帰後にモチベーションを落とし、退職しやすい構造になっている。
(3) 長時間残業が恒常化している
働ける時間の制約があることにより「キャリアアップが望めない」とモチベーションが下がってしまう。
(4) 成果主義の定義を誤っている
時間当たりの生産性ではなく、月末や年度末で『仕事の質×量』が高かった人から評価の順位付をしている。
女性活躍を成功させるには下記3つのポイントが重要である。
(1)場所や時間を有効に活用できるテレワーク(道具)
(2)男女の分け隔てない研修と意識改革(風土)
(3)短時間正社員制度・在宅勤務(制度)
女性活躍推進のポイントは、施策の過渡期にある現在、育児期の女性が手厚い両立支援制度がなくてもフルタイム(*)で勤務でき、成果を上げられるような環境を整えることにある。すなわち、働き方改革を実行できるか否かにかかっている。
*テレワーク、特に在宅勤務制度などを使いながら8時間勤務できる仕組み。
時短制度で、「申し訳ない」という気持ちで勤務していれば、責任のある仕事を敬遠し、結果、成果を上げるチャンスを失うことになる。育児をしながらもフルタイムで仕事をできる環境がある事で、心理的負担が軽減され、成果を上げ、評価を受けることができれば自信を持ってキャリアアップができるのである。
また、男性管理職が女性管理職を育てられる様な研修を行うことも忘れてはならない。
女性活躍推進法施行年に入社した社員が管理職になるであろう2030年には、女性の就業人口が2014年比で初めてプラスになるシミュレーション結果が出ている。M字カーブが解消するのである。
男性管理職は、女性が「なりたい」と思う様な管理職のお手本になるよう意識を変え、残業しない管理職を目指すこと、育児中であることを色眼鏡で見ることなく、仕事を平等に与え、平等に評価するスキルを身に付けなくてはならない。
もう1つ問題となっているのは、ロールモデル・目標となる女性管理職がいないということである。
このロールモデルについて、企業はどの様な対策をしているのだろうか。
以前、ある企業に「女性社員が目標にできるような管理職を中途採用しないのですか?」ということを質問した。その問いに対し、「当社は現在、積極的な管理職の中途採用を行なっていない。過去に数名の女性の管理職採用を行ったが、企業風土に馴染めず全て退職してしまった。」と回答があった。
以前、ご紹介したテレワークでも風土の問題を取り上げたが、女性管理職についてもまた風土の問題がでてくる。
この風土を突破できない限り、数合わせの女性管理職という不幸な状況は改善されない。
これまで「女性管理職の募集・採用」は、男女雇用機会均等法に基づく指針において、総合職、一般職などそれぞれの雇用管理区分でみて、労働者に占める女性の割合が4割を下回っている場合のみ、特例として、女性のみを対象としたり、女性を有利に取り扱うことが認められていた。だが、男女雇用機会均等法に基づく指針が改正され、改正後は、上記の場合に加え、係長、課長、部長などそれぞれの役職でみて、その役職に占める女性の割合が4割を下回っている場合も、特例として、女性のみを募集対象としたり、女性を有利に取り扱うことが認められるようになった。これにより女性管理職を増やすという取り組みが行いやすくなった。
例えば、総合職に占める女性の割合が45%という企業では、総合職の募集・採用において、女性のみを対象としたり、女性を有利に取り扱うことはできなかったため、総合職である部長や課長等の管理職を女性限定で募集したり、女性を優先的に採用することはできなかった。しかし、指針の改正により、たとえ総合職での女性職員の割合が40%を超えていても、各管理職に占める女性割合が、40%を下回っている場合、当該管理職の募集・採用において、女性のみを対象としたり、女性を有利に取り扱うことができるようになった、ということだ。この場合、女性職員の割合が、係長:50%、課長:35%、部長:10%ならば、課長と部長はそういった採用をすることが可能である。
※引用元:厚生労働省・都道府県労働局
それではここで、女性活躍が失敗する理由を4つ挙げる。
(1)女性を採用・育成できない
優秀な女性を獲得できない、社内のロールモデルが少なく退社されてしまう。
(2)休業・時短勤務後の復職がうまくいかない
制度はあるが風土がない、復帰後にモチベーションを落とし、退職しやすい構造になっている。
(3) 長時間残業が恒常化している
働ける時間の制約があることにより「キャリアアップが望めない」とモチベーションが下がってしまう。
(4) 成果主義の定義を誤っている
時間当たりの生産性ではなく、月末や年度末で『仕事の質×量』が高かった人から評価の順位付をしている。
女性活躍を成功させるには下記3つのポイントが重要である。
(1)場所や時間を有効に活用できるテレワーク(道具)
(2)男女の分け隔てない研修と意識改革(風土)
(3)短時間正社員制度・在宅勤務(制度)
女性活躍推進のポイントは、施策の過渡期にある現在、育児期の女性が手厚い両立支援制度がなくてもフルタイム(*)で勤務でき、成果を上げられるような環境を整えることにある。すなわち、働き方改革を実行できるか否かにかかっている。
*テレワーク、特に在宅勤務制度などを使いながら8時間勤務できる仕組み。
時短制度で、「申し訳ない」という気持ちで勤務していれば、責任のある仕事を敬遠し、結果、成果を上げるチャンスを失うことになる。育児をしながらもフルタイムで仕事をできる環境がある事で、心理的負担が軽減され、成果を上げ、評価を受けることができれば自信を持ってキャリアアップができるのである。
また、男性管理職が女性管理職を育てられる様な研修を行うことも忘れてはならない。
女性活躍推進法施行年に入社した社員が管理職になるであろう2030年には、女性の就業人口が2014年比で初めてプラスになるシミュレーション結果が出ている。M字カーブが解消するのである。
男性管理職は、女性が「なりたい」と思う様な管理職のお手本になるよう意識を変え、残業しない管理職を目指すこと、育児中であることを色眼鏡で見ることなく、仕事を平等に与え、平等に評価するスキルを身に付けなくてはならない。
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