高いモチベーションの女性社員、気負いすぎが心配

――一方、技術者として入社してくる女性たちの意識はどうですか。

 「ダムを造りたい」「大きな橋を架けたい」など、夢を持って入社してくる人がほとんどだ。就職活動の段階から意欲が違う。女子学生も狭き門と感じているし、実際、女性の技術者を採用する建設会社は多いわけではない。そのため入社した人達のモチベーションは非常に高い。

 ただし、「女性だから駄目だ」と言われたくないという気持ちが強いため、気負って頑張りすぎるのではないかという点が心配ではある。そのため、フォローもしている。日頃から、配属先の所長にその人らしく働けるようにしてほしいということを話しているほか、土木系の総合職社員については、毎年4月に、現場の女性管理職など、入社年次を超えた女性社員が参加して、互いに想いを聴き合い、悩みなどを共有する機会を設けている。

 当日は先輩女性社員からの体験談報告、入社年次をシャッフルしてのグループディスカッション、現場見学などが行われる。女性の総合職社員にとって、男性には当たり前にあるロールモデルとネットワークがない点が大きな問題だ。

 入社してくる女性技術者は、大学時代から男性が多い中で勉強してきたため、職場に男性が多いことにはあまり違和感を感じていない。そのため、男性の先輩社員に相談できないということはないのだが、結婚、出産、育児ということになると話は別だ。

 やはり、相談できる先輩社員の存在の有無は大きな要素となる。年次を超えた女性総合職社員が集まることで、ネットワークが作られ、ロールモデルとなる人のことも知ることができる。実際、これをきっかけに知り合うことになった先輩社員が、後輩の相談に乗るなど、細かいフォローをしてくれている。

育児休業から現場復帰の社員も

──出産、育児となると現場で働くのは難しそうですね。

 働く場所は建設現場だけではない。現場を支援する管理部門にも多くの仕事がある。育児期間は管理部門で現場支援をするという働き方もできる。中には、自宅近くに現場があったことが大きいが、育児休業明けからフレックス短時間勤務制度を利用して現場勤務をしている者もいる。

──育児休業などの制度面の整備で、何か力を入れていることはありますか。

 弊社でも育児支援制度や介護支援制度を整えている。しかし、制度を作ること以上にそれを使いやすい環境を作ることが重要だと考えている。育児支援制度、介護支援制度を利用しやすい環境作りは男性社員にとっても重要だ。

 制度を利用しやすい環境にするためには、やはり男性社員、特に管理職クラスの理解が不可欠だ。

 そのため、次期所長育成研修や初級管理者研修などにダイバーシティマネジメントの講義を盛り込み、その中で特に女性活躍推進やワーク・ライフ・バランスについて話をしている。今後も、女性活躍推進の内容を盛り込んだ研修の受講者層を広げたり、プログラムを見直すなどしたりして、意識改革に力をいれていきたいと考えている。

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