まとめ

マネジャーは部下を通して成果を上げることが求められており、そしてそのために働きかける相手は部下だけではありません。横の組織や上司にも働きかけなければなりません。本稿では、そのための効果的な方法を説明しました。
それらを整理したものが図表4-1です。そして、その中でも相手特有の動かし方に限定した場合は、次のように説明できるでしょう。
なぜ周りは動いてくれないのか
●部下を動かすためには、部下の主観に訴えることが効果的です。他の相手と比較した場合、“会社にとって”ではなく“自分にとって”を重視する傾向が相対的に大きいからです。

●横の組織から協力を取り付けるためには、相手のメリットを訴えることが大切です。同じライン上である上司や部下とは異なり、横の組織は利害が一致しないことが多いでしょう。そのような状況では自分の主張だけを訴えていても話は進展しません。

●上司から承認を得るためには“会社にとって”がすべてです。そのため、その提案が会社のためになることを、客観的、合理的に訴えることが大切です。さらに言えば、あらかじめ上司と何度も意見交換を繰り返しておくことが肝になります。

このように、他者を動かすポイントは、相手によって異なります。マネジャーは上手く使い分けなければなりません。
例えば、マネジャーが部門の戦略を考えたとします。その戦略を上司に説明する際には、恐らくデータを使いながら、上手くいく可能性を合理的に説明するでしょう。そして上司の承認がとれた後に部下に説明する際も、同じスライドを使って、同じように説明する人が多いでしょう。それが一番やってはいけないことです。戦略の根拠となるデータを列挙することではなく、あるいは会社の業績向上を訴えることではなく、部下にとってどんな意味があるのかを強調すべきなのです。
周囲を動かしながらものごとを進めていくためには、こうした使い分けが必要です。
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富士ゼロックス総合教育研究所では、1994年より人材開発問題の時宜を得たテーマを選択して調査・研究を行い、『人材開発白書』として発刊しています。
2011年から4年間にわたり、「なぜ戦略は実行されないのか」という問題意識のもと、ミドルマネジャーの役割に焦点を当て、6種類の定量・定性調査を実施しました。分析結果は、各年の『人材開発白書』で報告され、また『戦略の実行とミドルのマネジメント』(同文舘出版)にまとめられています。
本コラムは、これらにもとづいて書かれています。なお、『人材開発白書』のバックナンバーは、弊社のホームページ(http://www.fxli.co.jp/)よりダウンロードできます。

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