定量分析を行うための視点
定量分析を行うための視点としては、総額人件費が適正であるか、人員数・人員構成にゆがみがないか、賃金水準が適正であるか、人事制度とその運用が乖離していないか、将来どのような課題が起こってくるか、などがあげられます。実際の分析では、それぞれの課題について細分化した分析項目を設けて、全体で通常30~40項目ほどについて分析し診断をしていきます。まず、人事の課題として大きなものに、総額人件費投下の妥当性があります。儲かっているときは問題にはならないことも多いのですが、人件費が経営を圧迫するような状態では困ります。低成長経済のもとでは、人件費が適正であるかどうかは特に重要な経営課題となります。過度な人件費を投下しているようなら、人件費を抑制する必要も生じてきます。抑制するには人件費単価だけでなく、人数を調整する必要も生じます。また、等級と能力のミスマッチなど人事制度やその運用に起因するものなどの分析も必要です。
代表的な分析手法をご紹介しますと、まず人件費連動性があげられます。これは、会社の業績が伸びているときは、人件費を投下していることは問題になりません。ところが業績がさがっているときには、人件費を抑制していかなければいけない。このように業績にあわせて総人件費がコントロールされているかどうかが人件費連動性です。
例えば、最近5年度の売り上げ増減率を横軸に、総人件費増減率を縦軸にしてグラフ化してみて、プロットが右上に位置していれば問題ないということになります。あるいは左下に位置している場合にも、売り上げが減っているのに対応して人件費が抑制できているということですから大きな問題はないということです。ところが、左上や右下に位置している場合には、問題があるということになります。例えば、業績が下がっているのに人件費は変わらないとすれば経営を圧迫することになり大問題です。