自分の行動理論を超客観的に知り改める

大切なことは、原理原則に徹することです。この事例の場合、原理原則は「お客様を大事にする」です。しかし頭では分かっても、実践は難しい。本人も、行動が難しいことはよく分かっているからこそ、それを避け、何となく効果がありそうな別の方法に飛び付いてしまう。その最たるものはダイエットでしょう。原理原則は、摂取エネルギーより消費エネルギーを大きくすること。運動すればいいのです。でも、なかなかできない。だからこそ「付けているだけで腹筋500回相当のカロリーを消費するベルト」など、取り組み易そうな方法に飛び付いてしまう。
頭で分かったことを行動に移す際に邪魔するものが、固定観念です。「A」を「エー」だと思い込む程度の固定観念なら罪はないですが、その人の行動を縛り、お客の望みと異なる行動を取らせる固定観念には罪がある。だからこそ、行動理論を変えていかないとならないのですが、その際にカギとなるのが「メタ認知」です。自分がどんな行動理論に基づき行動しているのか、どんな固定観念に縛られているのかを客観的に知ることです。自分の行動理論や固定観念を客観視するためには、普段は無自覚の行動理論に意識を向け、改めてその内容を検証し、自分の言葉で再定義することが大切です。
理念を言葉に起こし、行動をするためには、自分の言葉で理念を再定義することが大切です。

最初は「スタッフ全員にあいさつする」程度だった

「理念を体現する顧客接点部隊」の創り方
行動理論の再定義の次は、どんな小さなことでもいいから行動すること。初めは、やり慣れない行動には抵抗感があるでしょう。しかし、小さな一歩を踏み出すことで、変わっていけます。先の事例も、最初は「お店に行ったら店長以外のスタッフにもあいさつをする」だけでした。それが、いつの間にか相手からあいさつが返ってくるようになり、たまに缶コーヒーを差し入れてもらうようになり、「大変だね」と声を掛けてくれるようにもなりました。これは大きな変化です。当たり前のことをやっただけですが、結果としてメンテナンス契約を継続してくれるケースが増えました。

経営理念を軸にしたサービスコンセプトを作る

研修では「サービスコンセプト」を作ります。先の事例では「お客様を守る掛かり付けドクター」がそれです。サービスコンセプトは「我々のミッションは、誰にどんな価値を提供することか」を再定義したものです。サービスコンセプトの土台となるのは、経営理念です。さらには市場環境やライバルの動き、お客の動き、自社の強みも加味し、コンセプトを練り上げます。
この際、自分たちのことですが、自社の強みはなかなか出てこないものです。例えば、100社のマーケットで30社の顧客を抱える企業があるとします。シェア30%でナンバーワンです。でも、まだ70社は選んでくれてないわけだし、選んでくれた30社も、苦情や不満を言ってくるものです。こうしたネガティブシャワーを浴びていると、自分たちがせっかく持っている特性を強みと認識できなくなります。これって本当に強みなのか?と疑心暗鬼になってしまうのです。これは損です。

自分たちで作ることで言葉に重みが出る

「理念を体現する顧客接点部隊」の創り方
自分たちの特性を強みと認識するためには、ポジティブシャワーを浴びることが大切です。例えば「お客様から褒められる言葉は何ですか」という質問をすることで、自信を取り戻していけます。
先ほどの「お客様を守る掛かり付けドクター」というサービスコンセプトも、こうした研修の中で生まれました。その内容は「現像機については全て私にお任せください。プロの技術と親身な心で対応します」というものです。研修に参加した10名ほどで作りましたが、私は助言こそすれ、コンセプト作りには一切口出しをしていません。彼らが独自に作ったフレーズです。奇をてらった言葉でない、どこにでもある普通の言葉です。
ただ決定的に違うのは、「自分たちで作った」という点。自分たちで作ると、その言葉の裏には何倍もの重みがある。これが変化の原動力になり、自ずと行動につながっていくのです。
具体的な運用に関しては、60点主義でいいでしょう。最初から全員を巻き込むのは無理です。少しずつ巻き込む。抵抗勢力もあるでしょうが、徐々に賛同者を増やし、多数派にしていく。やってみると、だんだん組織が変わってくることを実感できるはずです。
頭脳や肉体は使うと鍛えられますが、使わないと衰えます。「A」を見たとき「エー」だけでなく、「エース」やその他の可能性も考えられるほど、頭脳は柔軟でありたいもの。この10年で日本人が失った能力は、漢字を書く能力と電話番号を覚える力といわれます。自由な発想力も衰えているのではないでしょうか。ぜひ、固定観念を打ち破る自由な発想ができるようになってください。
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