海外駐在の前に3カ月間の語学漬け研修
――次に「若手社員の海外駐在」についてお聞かせください。従来の海外駐在員の準備研修はシンプルなもので、赴任前に1日か2日間の研修を受けただけで送り出していた。後は現地スタッフと本人にまかせるというものだった。これを中期経営計画が始まった2011年度にあらため、期間を3カ月と長期化した本格的な研修にした。すぐに赴任する者だけでなく、1、2年のうちに赴任する予定の者、海外との接触が多い部署の者も参加する。
最初の2日間はグローバルマインドセット研修を受講し、その後の3カ月間は英語と中国語コースに分かれ、外国人教師が教える語学漬けの毎日が始まる。
この研修への参加者は、職場推薦で選抜されることが多く、毎年50名弱が参加するが、本人の希望も認めている。この海外駐在員研修は、今年で3年目だが3カ月に集中するので育成効果は大きく、好評だ。
――日経新聞では「海外在住経験者」と書かれていますが、これが海外駐在員を意味しますか。
日経新聞の「海外在住経験者」は、弊社の海外駐在経験者に「海外実務派遣研修」の経験者を含めた表現だと思う。「海外実務派遣研修」はいわゆる海外トレーニー制度で、スタートしたのは2006年度。
海外現法に赴任して実務を通じた研修を受ける。年に10名程度が派遣され、期間は3カ月から2年で平均すると1年間だ。この海外実務派遣研修に選ばれた若手社員にも海外駐在向けの3カ月間の研修を受けさせている。
国内から海外に行くだけでなく、海外の現地法人から日本に来る研修もある。名称は同じ「海外実務派遣研修」だ。現地で雇用された人間が本社や国内の他の事業所で研修を受ける。人数はやはり10名ほどで、滞在期間は平均で1年間。テクニカルスタッフが多いが、最近はマーケティングや人事などアドミ部門の社員も受け入れている。
毎年日本から海外へ10名、海外から日本へ10名がトレーニーとして研修を受けるので、グループメンバー4名のうち1名は、実務研修業務に専任としてあたっている。
海外人事担当者との密接なコミュニケーション
――海外の現地法人との意思疎通が重要なのだと思いますが、その点はどのような施策を採っておられますか。いくつかの会議体を運営している。最も大きなものは、地域統括会社HR会議で、シンガポール、中国、アメリカ、ヨーロッパ、インドの5地域のHRマネジャーが本社に集まって施策を練る。
リージョンごとの人事担当者会議もあり、アジア・パシフィック(シンガポール)と中国の会議には本社からも参加する。
このような会議だけでなく、われわれグローバルHRグループのメンバーが積極的に海外に出かけることも大事だと思う。中期経営計画の初年度は現地法人に行って現地社員とコミュニケーションをとったが、2012年は制度設計や施策実行に忙しくてあまり行けなかった。
グローバル人材マネジメントのプラットフォームはほぼ整備できた。あとは実行を加速に向けて「魂を入れる」段階に来ていると考えている。今後も現地にどんどん行って、現地に「刺さり込み」たい。