就職活動を始める前に、両親とじっくり話し合おう
基調講演に続いて、「ゲストの考える『キャリアオーナーシップ』とは」というテーマでパネルディスカッションが開催された。参加者はキタイエ代表取締役CEOの喜多恒介(きたこうすけ)氏、トヨタ自動車 調達本部 グループ長の川下俊輔(かわしたしゅんすけ)氏、ハピキラFACTORY代表取締役の正能茉優(しょうのうまゆ)氏、モデレーターは、ワンキャリアで経営企画と採用を担当している寺口浩大(てらぐちこうだい)氏。就職活動は長い一生においてはあくまで通過点の1つだ。その成否で人生の成功、失敗が決まる時代もあったが、現在はキャリアアップのためにほかの企業に活躍の場を求めるということも一般的なことになっている。自分自身のキャリア形成を考えたとき、就職活動というものに、どのように向かい合うべきかということについて、若手経営者や企業の採用担当者が議論を戦わせた。
ディスカッションで飛び出した意見の一部を紹介しよう。喜多氏は「就職活動が上手くいっていないという学生の話を聞くと、ほとんどの場合は両親との関係が上手くいっていない。両親を恨んでいたり、両親を邪魔だと思っていたりする。一方、上手くいっている学生は『両親から愛されている』と認識している。両親はあなたを『こう育ってほしい』という強い思いと愛情をもって育ててきたはず。学生が両親とコミュニケーションを取ろうとせず、自分のやりたいことも話さずにいれば、就職活動が上手くいかないのは当たり前。両親の思い、愛情に耳を傾け、自分自身の考えをぶつけてみることで、自分のやりたいこと、就職活動の方針が明確になる」と、自分のやりたいことが見つからないと悩む学生にアドバイスした。
また川下氏は、「企業やマスコミは就職活動に取り組んで、企業に入社した例として、あまりによくできた例ばかりを挙げている。現実というものはそうではない世界にある。そして、そこでも生き生きと働くことを楽しんでいる人たちがいる。自信を持って『平凡かも知れないけど、こんなに熱い毎日を送っているんですよ』というメッセージを学生に届けられれば、学生も自分のやりたいことについて現実味を持って考え、見つけられるのでは」と、企業側も改めるべき点があると指摘した。
6名程度のテーブルで3つのテーマについて議論
パネルディスカッションに続いては、200名ほどの参加者がテーブルごとに議論を交わした。参加者は、テーブル1つ当たり6~10名の少人数で意見を出し合った。議論のテーマは3つ。1つのテーマごとに15分の制限時間を設け、3つのテーマについて順に話し合った。1つ目のテーマは「人生100人時代、どう働きたい?」。最初のテーマでの議論が終わったら、1つのテーブルに2名の参加者を残して、ほかの参加者は別のテーブルに移動した。議論の参加者をがらりと変えて、2つ目のテーマは「理想的に働くために、働く場にどのような要素が欲しい?」。
2つ目のテーマでの議論が終了したら、それぞれのテーブルの参加者を1つ目のテーマと同じメンバーに戻して3つ目のテーマについて議論した。テーマは「理想の働き方につながる就活ってどんなもの?」。
参加者が議論で導き出した「これからの就活」
議論が終わったところで、それぞれ導き出した結論をテーブルごとに発表していった。学生の現状、企業や社会に現状を見据えた、地に足の付いた意見が多く出たことには少し驚いた。例えば、大学生から社会人へのキャップを問題視したテーブルの発表によると、学生は就職活動をして内定をもらい、3月に卒業したら4月からいきなり働くことになる。このときに自分を取り巻く環境が急変したこと、つまりギャップを感じてしまう人は多いし、そのギャップも決して小さなものではないという。
そして、このようなギャップがあると大学生のうちから考えられている学生と、そうでない学生のギャップも大きいという。発表者は「明確にしている学生は1%くらいではないだろうか」と体感値を披露しながら続ける。
このようなギャップは学生が「知る機会」が少ないことで発生するという。企業はもっと情報を提供するべきであり、社会人と学生が交流を持つ機会も、一部の学生だけでなく、すべての学生に提供する必要があるという。そして、大学こそが企業と学生を仲介し、このような機会を提供し、大学2年ごろからキャリアについて考える機会を与えていく必要があると訴えた。
ほかのテーブルは、3年生の夏から始まる就職活動では、個人にあった働き方、働く場を見つけることはできないと訴え、大学1年次から学生対象の講演会を企業が開催したり、インターンを受け入れたりといった活動で、学生と企業が接触すする機会をもっと作るべきだと訴える。1年次から接触することで、学生も企業も時間をかけて良い組み合わせに巡り会えるのではないかと問いかけた。