学生の動きには大きな変化はなし
注目は学生の動きで、企業ほど大きな変化は見られないという。OfferBoxへの新規登録時期は3年次の2月が最も多く、この時期に近づくにつれて新規登録者数が増え、離れると新規登録者数が減っていくという傾向は3年間変わっていない。また、OfferBox 登録から内々定承諾までの期間の平均を見ても、2017年卒は6.2カ月、2018年卒は6カ月、2019年卒は5.9カ月と大きな変化は確認できない。数週間短くなった程度だ。ただし、就活ルールが定める選考開始時期(4年次の6月)から学生が内々定を承諾するまでの期間の平均を見ると、異なる事情が見えてくる(下図参照)。2017年卒は42日だったが、2018年卒は30日、2019年卒は29日と、2018年卒を境にぐっと短くなっている。これは学生の就職活動が早期化した結果ではなく、企業の採用活動早期化が大きく影響していると考えられるという。
この結果から、i-plugの代表取締役CEOを務める中野智哉氏は「過去のデータを分析すると、就職活動は長期化していない。むしろわずかに短期化している」と、活動期間ついての見解を述べた。
採用活動開始時期の前倒しにも限界が
では、就職活動の時期は今後早まっていくのではないかとも考えられるが、中野氏は「前倒しにも限界がある」と語る。下図は学生がオファーを受けた時期に対して内々定を承諾した人数を示したものだ。経団連の就活ルールが定める広報活動解禁時期である3年次の3月の承諾人数を「1」として、それに対する比率で表している。
この図を見ると、広報活動解禁時期前の5カ月間(図中の赤い破線で囲んだ部分)はオファー数に対して多数の学生から内々定の承諾を得られていることが分かる。しかし、これより前の時期になると内々定を得られる効率が急速に落ちている。このデータから中野氏は「就活ルールが廃止になったとしても、企業が採用活動開始時期を大きく前倒しにすることは考えにくい」と指摘する。
「自分に合う企業を探す」期間の効率化が課題
これらの調査結果から中野氏は「企業の選考を受け、入社を決意するまでの期間は短く、ほぼ一定であると考えられる」とし、「就職活動が長期化する要因があるのなら、その前の段階、つまりインターンなどに参加して『自分に合う企業を探す』期間も就活という言葉に含まれていることにあるのではないか」という仮説を提示した。そして、その仮説を裏付けるデータとして、学生が企業からオファーを受けてから、内々定を承諾するまでの平均期間の値を示した。具体的な値を見ると、2017年卒の学生は3.3カ月、2018年卒の学生は3.2カ月、2019年卒の学生は3.3カ月と3年間にわたってほとんど変化がない。中野氏は2つの結果から「選考スケジュールの見直しが就職活動に関する問題をすべて解決するわけではない。今は『自分に合う企業を探す』という活動を効率化していくことが必要だ」と指摘した。
中野氏の発言を受け、説明会にゲストとして招かれていた法政大学キャリアデザイン学部准教授の松浦民恵氏も「選考を長引かせても、企業、学生ともに消耗するだけ」と就職活動期間の長期化には意味がないと訴えた。
そして中野氏は、「自分に合う企業を探す」という活動を効率化する具体的な方法として、“Web会議システムを活用した企業説明会の開催や面談・面接”を提案した。この方法なら、学生はどこにいても企業説明会への参加が可能となる。授業の合間に面接を受けられ、学業への影響を軽減できる。地方の大学に在籍していて、「会社訪問のたびに長い時間をかけて上京しなければならず、交通費も高額になってしまう」と嘆く学生には、特に有効な方法と言えるだろう。
さらに両氏は、企業のインターンシップが、「学生が“自分に合う企業を探す”という面でも、“選考”という面でもうまく機能していない」という問題にも言及。企業が学生インターンを受け入れ、実際の業務を体験してもらって、自身に合っているかどうかを確かめるのがインターンシップのあるべき姿だが、実際はインターンを受け入れても、任せられる業務を企業が用意できないということが多い。その結果、学生が企業探しのつもりでインターンシップに参加したところ、選考が始まってしまうということも良くある。
この点について松浦氏は、「現在のところ企業にとって、業務体験型のインターンシップは、実施するインセンティブが乏しい一方で負担が大きい」という問題点を指摘。その結果、インターンシップが選考につながってしまう現状は「ある程度は仕方ない」という。
中野氏は「インターンシップを会社のファンを増やすCSR活動とするか、あるいは選考目的とするか、どちらかに割り切ってしまうのも1つの方法」としながらも、「本来は、企業にとってインターンを受け入れた方が良いという状態を作っていく必要がある」とインターンシップ制度を改善する必要があることを訴えた。
さらに両氏は、企業のインターンシップが、「学生が“自分に合う企業を探す”という面でも、“選考”という面でもうまく機能していない」という問題にも言及。企業が学生インターンを受け入れ、実際の業務を体験してもらって、自身に合っているかどうかを確かめるのがインターンシップのあるべき姿だが、実際はインターンを受け入れても、任せられる業務を企業が用意できないということが多い。その結果、学生が企業探しのつもりでインターンシップに参加したところ、選考が始まってしまうということも良くある。
この点について松浦氏は、「現在のところ企業にとって、業務体験型のインターンシップは、実施するインセンティブが乏しい一方で負担が大きい」という問題点を指摘。その結果、インターンシップが選考につながってしまう現状は「ある程度は仕方ない」という。
中野氏は「インターンシップを会社のファンを増やすCSR活動とするか、あるいは選考目的とするか、どちらかに割り切ってしまうのも1つの方法」としながらも、「本来は、企業にとってインターンを受け入れた方が良いという状態を作っていく必要がある」とインターンシップ制度を改善する必要があることを訴えた。
今後は入社後の状態なども合わせて調査の予定
今回の調査で、学生が企業からオファーを受信してから、内々定を承諾するまでの平均期間にほとんど差がないという結果が明らかになったが、個々の学生によってこの期間が変わるのではないかと考え、性別(性自認)、文系/理系の別、部活やサークル、大学の所在エリア、出身校、性格診断の6項目について調査してみたという。しかし、有意差があると認められるのは性別(性自認)と出身校の2項目のみだった。企業からのオファー受信から、内々定承諾までの平均期間を見ると、男性が95日で、女性が104日と、女性の方が10日ほど長いという結果が出たという。出身校別に見ると、旧帝大・早慶クラスの学生が内々定受諾までの期間が最も長く、平均3.5カ月。続いてMARCH・関関同立クラスが平均3.4カ月、その他国公立と日東駒専・産近甲龍クラスがどちらも平均3.3カ月で、その他の大学になると平均3.1カ月になるという。この点については、内々定を承諾する相手となる企業の違いも関係するのではないかと考えており、追加調査を実施することを明らかにした。
さらに中野氏は、入社後の在職期間、組織への適合度、社内での活躍度合いと、内々定承諾までの期間との関係についても調査する意向を示した。
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