第38回:成功する人は“実行上手”で“学び上手”。自らの成長に必要な「自己効力感」を高める4つの方法とは

成功する人はみな、「成長上手」です。この「成長上手」とは、分解すると“実行上手”であり“学び上手”であると言えます。こうした人たちは他の人と比べて、いったい何が異なるのでしょう? そして、どんな行動を取っているのでしょう? 今回はその点を解明してみたいと思います。

知能の蓄積は「流動性知能」→「結晶性知能」化で行われる

私たちは普段から、何かを学び、身につけ、活かすことで、自身のパフォーマンスを向上させています。

かつてイリノイ大学やハワイ大学の教授を務めた、心理学者のレイモンド・キャッテルは、「私たちが身につける知能には2種類ある」としています。それは「流動性知能」と「結晶性知能」です。「流動性知能」とは、新しいことを学習する知能や、新しい環境に適応するための問題解決能力などのこと。対して「結晶性知能」とは、学校で受けた教育や、仕事・社会生活の中で得た経験に基づいた知能を指しています。

大掴みに理解するならば、初学のアクションで働かせるのが「流動性知能」であり、IQに近いものと思えばよいでしょう。計算する力や論理的に考える力、あるいは記憶する力、抽象化する力など、何かを為す能力そのものを指します。一方で、蓄積・累積されていくものが「結晶性知性」です。例えば、言葉の分析、単語力、語学能力などのほか、経験から学習されるスキル、編み出される類推力や思考力などは、この結晶性知能によって行われ、養われます。

つまり、私たちは「流動性知能」を日々働かせ、その蓄積によって「結晶性知能」が培われていくのです。

よく、「知能は若い頃をピークに衰えていく」と言われますね。実際にミドル・シニアになっていくにつれ、「昔は計算が早かったんだけど、最近はめっきりだめだねぇ」、「昔に比べて集中力や短時間で考え尽くす力が落ちた気がするなぁ」などという人が増えてきますが、これは流動性知能のことを言っています。実際に流動性知能は、25歳頃にピークを迎えると言われています。

しかし、それによってがっかりしたり、諦めたりする必要はありません。加齢とともに衰える流動性知能に対し、結晶性知能は生涯をかけて蓄積・開発が可能であると、様々な心理学実験で検証されています。瞬発力は20代をピークに減衰していくとしても、私たちは何歳になっても経験や学習の蓄積で、生涯に渡って知性を高めていくことができるのです。

「結果期待」+「効果期待」で知能蓄積のサイクルを回す

流動性知能を適切に使い、結晶性知能を蓄積していく——―このサイクルを次々と回すこと、回し続けていくことこそが、“成功する人”の条件なのです。

皆さんの周囲にも、何歳になっても好奇心旺盛で情報感度の高い人や、積極的に新しい場所・人との出会いに出向いていく人がいるのではないでしょうか。あるいは読書家や、芸術・教養関連の情報を貪欲にインプットしている人などもいるでしょう。こうした人たちは生涯、結晶性知性を高め続ける人たちです。

では、なぜ成功している人の中には、こうした結晶性知性を高める行動が身についている人が多いのでしょうか? それは彼らが、「結果期待」=「こうすればうまくいく」というイメージを持っており、かつ「効果期待」=「自分はその行動を常に取ることができる」と思えるマインドセットを身につけているからなのです。

例えばダイエットをするにあたって、「週に2~3回、1時間程度の有酸素・無酸素運動をして、食事を毎日2000キロカロリー以内に抑えれば、数ヵ月内に適正体重に戻すことができる」という「結果期待」を知っていて、これを「自分はいざとなったら実行することができる」という「効果期待」を持っていれば、その人はいつでもダイエットに成功することができるでしょう。行動をしっかり行い成果を得るためには、「結果期待」だけでなく、「効果期待」を持つことにこそカギがあるのです。

心理学者のアルバート・バンデューラは、望ましい行動を取るためには「効果期待」こそが大事だということを突き止め、それを「自己効力感」と名付けました。仕事の成功には自己効力感が大きく影響することがわかっているのです。

自己効力感を高める4つの方法

バンデューラいわく、自己効力感を高めるには以下の4つの方法があるといいます。

(1)成功体験(努力の上での直接的な成功体験)を与える
(2)モデリング(代理経験=間接的な成功体験)を与える
(3)説得する
(4)生理的・感情的状態をよくする(生理的高揚や肯定的な気分)


(1)の成功体験を得るには、安易な賞賛や低いレベルの達成ではダメです。大して努力をせずに褒められても自己効力感は高まらず、忍耐強い努力によって障害に打ち勝つ経験が必要です。「上司→部下」という観点では、多少困難な課題を与えつつ、サポートしながらなんとか成功に導く、といった仕組み・取組みが必要です。

(2)のモデリングは、先人の成功例を見る、理想のイメージとなる上司・先輩・メンターを持つなどによって、疑似体験=シミュレーションをすること。

(3)の説得とは、「自分はやればできる!」という自己説得(自己暗示)。当事者が上司なら、部下に「君ならできる」と言い聞かせることですね。

(4)の生理的・感情的状態をよくすることは、ベースのコンディション作りとして非常に重要です。健康的な精神状態であれば物事に積極的に取り組めますし、逆に落ち込んでいるようなネガティブ感情状況では、パフォーマンスが著しく落ちることはいうまでもないでしょう。

皆さんの周りの仕事のできる人、成功している経営者などを見れば、この4つを総出動できる人であることが分かると思います。あなたは、いくつ実行できていますか? 成長、成功する人は、「やれるだろう、やりたい!」→(実行)→「やれた!」のサイクルをどんどん回しながら、スパイラルアップしていく人なのです。