世の中には、運の良い“ツイている”と言われる人が存在します。皆さんが働く会社でも、「この人ツイてるな」と思わせるような人がいるのではないでしょうか。組織において、「どうせならツイているリーダーについていきたい」と思う人は多いはずです。実際に、「ついていそうな人」の周りに人は集まるものでしょう。では、そもそも“運が良い人”と“運が悪い人”の違いは何なのでしょうか。また、努力しだいで運が良い人になることはできるのでしょうか。今回はそんなお話をしてみたいと思います。
運を決めているのは「予知能力」?
「運も実力のうち」といいますが、これについて真剣に研究した人がいます。英国の心理学者であるリチャード・ワイズマン博士です。ワイズマン博士はもともとマジシャンだったものの、「人の心理を読むこと」への興味が講じて学術の世界に転身した、異色の経歴を持っています。彼は、“常に運が良い人”と“常に運が悪い人”がいることに興味を抱きました。そこで、数百人の運が良い人と悪い人に対し、8年間にわたってインタビューを続けて実験したのです。
ワイズマン博士は実験開始当初、「運は予知能力ではないか?」という仮説を真面目に考えました。そこで運が良い人と悪い人の計700人に宝くじの当選番号を予想してもらったといいます。しかし結果として、それぞれの当選率はまったく同じ。つまり、運は予知能力ではなかったのです。
しかし、この実験では発見もありました。それは、「当選する自信がある」と答えていた人数について、運の良い人は悪い人の2倍以上だったという事実です。そこでワイズマン博士は、「運は自信と関係があるのでは?」と仮説を変更。考え方や行動を分析し始めました。その分析結果として発見した4つの法則を、彼の著書『運のいい人の法則』(角川文庫)にまとめています。
“運を鍛える”ための4つの行動・思考法
ワイズマン博士の結論=「運のいい人は自信がある」というものでした。この「自信」こそが、運の良さを招く、あるいは運を鍛える4つの思考・行動につながっているとワイズマン博士は言います。その4つの思考・行動とは、以下の通りです。
【運を鍛える4つの行動・思考法】
1.チャンスを最大限に広げる
2.虫の知らせを聞き逃さない
3.幸運を期待する
4.不運を幸運に変える
1.チャンスを最大限に広げる
2.虫の知らせを聞き逃さない
3.幸運を期待する
4.不運を幸運に変える
これらについて、以下で1つずつ見ていきましょう。
【第1法則:チャンスを最大限に広げる】
運が良い人は、日常生活で「運のネットワーク」を築き、それを広げています。多くの人と出会い、偶然のチャンスに出会う確率を高めているのです。人付き合いがよく、人から好かれる仕草や表情で人を惹き付けているということですね。
また、運が良い人は肩の力を抜いて日々を過ごしており、新しい経験を喜んで受け入れていることも分かりました。肩の力が抜けていることで視野が広がるとともに、身の回りに起こるさまざまな偶然に気づきやすくなり、その発見や出会いを積極的に受け入れていることを指しています。
【第2法則=虫の知らせを聞き逃さない】
運が良い人は、自分の直感と本能に頼ります。私たちが抱く直観が驚くほど頼りになるということは、みなさんも感じたことがあるかもしれません。
対して、運が悪い人は自分の直感を無視し、後で悔やみます。ここで大事なのは「これ、ヤバイかも」、「実は期待通りにならないのでは」という“虫の知らせ”を無視しないということ。虫の知らせとは、いわば「ヤバそうなことのセンサー」なのです。
また、運が良い人は、その直感を高める方法も知っています。気分転換や瞑想などがその代表例です。
【第3法則=幸運を期待する】
運が良い人は、楽観的です。「幸運が将来もずっと続く」と疑いなく信じ、期待しています。もし不運があっても、「この不運は長続きせず、すぐ終わる」と考え、少しでも可能性があれば良い方向に向かうよう努力し、手を替え品を替え挑戦するのです。
反対に運が悪い人は、「幸運な出来事はすぐ終わり、不運が起こる」と考え、悲観的です。「失敗する」と思い込み、努力も工夫もせず、結果として失敗が現実になってしまいます。
また、運が良い人は、対人関係についても「必ずうまくいく」と信じています。「自分の周りにいる人たちは、面白くて楽しく、良い人たちばかりだ」と思っており、そうした気持ちで周囲と接するのです。これによって、「類は友を呼ぶ」といった状況も招きやすいですし、本人が周囲の人たちから良いオーラを浴びることもできるでしょう。「良い気」は伝染しますし、「悪い気」も同様に伝染することがありますよね。
【第4法則=不運を幸運に変える】
運が良い人は、不運の中にも「プラスの側面」を見ています。また、「不運な出来事も長い目でみれば最高の結果になる」と信じています。
例として、ワイズマン博士の「銀行強盗に遭遇し腕を撃たれた。運が良いか? 悪いか?」という質問に、運の悪い人は「運が悪いに決まってる」と即答したといいます。しかし一方で、運の良い人は「運がいい。頭だと即死だったから、腕でよかった」と答えたそうです。
運の良い人は、悪いことがあってもより不運な可能性を考えてダメージを減らし、将来に高い期待を抱いて幸運になります。運の悪い人は、運の良い人と自分を比較して嘆き、ダメージを引きずるのです。
私が日々お付き合いいただいている経営者やリーダーの方々を見ていても、運が良さそうな経営者や、「あの人、何か持っているよね」というリーダーは、大抵この4つの法則の通りに考え、行動している人が多いです。ということは、今日からこの法則を念頭に行動すれば、運の良い上司になれること間違いないはずです。ぜひ実践してみてください。