「HR Tech」に注目が集まっている近年、人事関連でのデータ活用や、データマネジメントの導入を進めようという流れがあります。人事管理や組織管理、目標管理、採用管理など、各種管理業務のクラウドツールも多く出回り、「AI採用」、「AI社員管理」などがバズワードになっています。
「HR Tech」に注目が集まっている近年、人事関連でのデータ活用や、データマネジメントの導入を進めようという流れがあります。人事管理や組織管理、目標管理、採用管理など、各種管理業務のクラウドツールも多く出回り、「AI採用」、「AI社員管理」などがバズワードになっています。
人事業務で用いるクラウドツールには様々なアセスメントが組み込まれていたりしますが、読者の皆さんの会社では、採用や社員管理において導入されている性格検査および適性検査(=性格検査+能力検査)はあるでしょうか。あるいは、ご自身で受けた性格検査や適性検査もあるかもしれませんね。
人事においてデータ活用を進めるにあたっては、「元となるデータの信憑性」が鍵を握ります。その観点で、性格検査では“パーソナリティ検査の最終回答”と言われている「ビッグファイブ(特性5因子)」の活用をお勧めします。これは、1990年代に心理学者のルイス・R・ゴールドバーグが、『パーソナリティの特性論(性格分析)』において「人間が持つさまざまな性格は5つの要素の組み合わせで構成される」としたものです。今回はこの「ビッグファイブ(特性5因子)理論」をご紹介します。
人事業務で用いるクラウドツールには様々なアセスメントが組み込まれていたりしますが、読者の皆さんの会社では、採用や社員管理において導入されている性格検査および適性検査(=性格検査+能力検査)はあるでしょうか。あるいは、ご自身で受けた性格検査や適性検査もあるかもしれませんね。
人事においてデータ活用を進めるにあたっては、「元となるデータの信憑性」が鍵を握ります。その観点で、性格検査では“パーソナリティ検査の最終回答”と言われている「ビッグファイブ(特性5因子)」の活用をお勧めします。これは、1990年代に心理学者のルイス・R・ゴールドバーグが、『パーソナリティの特性論(性格分析)』において「人間が持つさまざまな性格は5つの要素の組み合わせで構成される」としたものです。今回はこの「ビッグファイブ(特性5因子)理論」をご紹介します。
従業員の性格を説明できる“5つの因子”とは
ビッグファイブの5つの因子とは、「Extraversion(外向性)」、「Neuroticism(神経症的傾向)」、「Conscientiousness(誠実性)」、「Agreeableness(協調性)」、「Openness(開放性)」です。誰もがこの5つの因子を持っていますが、ビッグファイブの学説が主張することとしては、「人によってこの5つの因子の強弱が違うため、人の性格や振る舞いに違いが出る」とされています。そもそも、このビッグファイブが“パーソナリティ検査の最終回答”と言われる所以は、これまで存在してきた様々な性格検査が、この5つの因子のいずれかに統合される、もしくは関連づけられることを証明したためです。
さて、それではこの「ビッグファイブの5つの因子」をそれぞれ詳しくご紹介しましょう。
(1)「Extraversion(外向性)」
心的エネルギーが外に向いているかを判定
【キーワード:外向的、話し好き、明るい性格】
(2)「Neuroticism(神経症的傾向)」
精神的バランスが安定しているかを判定
【キーワード:感情の安定、くよくよしない、情緒安定】
(3)「Conscientiousness(誠実性)」
プロ意識を持ち、向上心があり、努力家か。中途半端を好まず、徹底的に行動するタイプを判定
【キーワード:徹底さ、正確さ、努力、プロ意識】
(4)「Agreeableness(協調性)」
周囲と上手くチームを組んで活動できるタイプか否かを判定
【キーワード:チームワーク、仲間意識、団体行動、協力行動】
(5)「Openness(開放性)」
知的好奇心が強く、新しい事に挑戦し、経験や知識を増やしているかを判定
【キーワード:知的好奇心、知性、新奇欲求、探究心、経験の開放】
※『パーソナリティを科学する』(書籍)および、『パーソナリティ理論を応用した5つの性格診断 ビッグファイブ プラス』等を参考に筆者作成
つまり、私たちの性格はこの5つの因子で構成され、決まっているのです。ただしここまでの説明では、「なるほど」とすぐに捉えられる人もいれば、「そうなの? 本当にこの5つだけで全部網羅されているの?」といまひとつ腑に落ち切らない人もいるのではないかと思います。
これも専門的な話であるため、概要だけ理解頂ければと思いますが、私たちが目にする多くの性格検査には「特性論」と「類型論」があります。
「類型論」は、「このタイプの人は、このような性格です」のようなかたちで表すパターンのもの(クレッチマーの「循環気質」、「分裂気質」、「粘着気質」といった気質類型や、ユングの「外向型」、「内向型」に分ける機能類型など)です。メジャーなものとしては、「DiSC理論」や「Social Style(ソーシャルスタイル)理論」などがありますが、心理学的な信憑性に目をつぶれば、皆さんがよく知る「血液型」や「動物占い」などもこの類型論に当たりますね。これらはタイプ別に表現されるため、「なるほど、そうか」となんとなく分かった気になります。ただ、「○○に似ています」と分類されるだけなので、「それで結局どういう性格なの?」ということになってしまうのも類型論の特徴です。
対して「特性論」とは、性格をいくつかの構成要素に分解し、それぞれの要素が量的に「どの程度備わっているか」という側面から性格を理解しようという考え方です。ビッグファイブは、この「特性論」にあたります。因子ごとの理解なため、全体感は持ちにくいかもしれませんが、そのぶん因子ごとの特徴・傾向を正確に把握できます。
ビッグファイブは、「全部高スコアなら良い」というわけではありません。そもそも、そのような人は稀です。それぞれの因子ごとにスコアが高くても低くても、それぞれに“ポジティブな側面”と“ネガティブな側面”があります。私たちがそれぞれどのような生活を送り、どのようなコミュニティに属し、またどのような仕事をしているかによって、向き・不向きや発揮すべき因子要素が異なります。大切なのは、可能な限り「自分らしいスタイル」が適している場に所属することです。その観点で、幹部人材の配置、組織マネジメントでも活用できるものであると言えます。
経営幹部が身につけたい、“5つの因子の強弱”による部下のマネジメント方法
では、実際にビッグファイブをどのように使えばよいのでしょうか。経営幹部のための「5因子の強弱から推し量る部下の適切な活かし方」という視点で、簡単にご紹介してみましょう。(1)「Extraversion(外向性)」
「外向性」は、周囲の人たちとのかかわりや新しい出会いなどに対して、どう反応するかを示しています。
このスコアが高い人は「楽観的で調子のいいタイプ」、低い人は「落ち着いているタイプ」となります。放っておいても自分から話しかけてくるため、自由にさせてあげるのがよいでしょう。
一方でスコアが低い人は、相手からコミュニケーションをとってくれるのを待つ傾向があります。そのため、こちらからコミュニケーションのきっかけを作ってあげることが、「外向性」の低い部下と良好な関係性を築くコツになります。
(2)「Neuroticism(神経症的傾向)」
「神経症的傾向」は、プレッシャーのかかる仕事や不安になるようなトラブルなど、“ネガティブな出来事”に対してどう反応するかを示します。
このスコアが高い人は、ネガティブな出来事に遭遇した際、動揺しやすいが傾向があります。そのため、上司から安全性の担保やリスク回避の具体策を提供してあげることが必要です。しかし、感受性が高く、繊細な気配りができる人でもあるため、その良さを活かした仕事を与えることが望ましいですね。
一方でスコアが低い人は、物事に動じず、冷静に判断を下すことができるため、タフな局面に頼もしい部下です。そのため、変革を要するような仕事のリーダーとして抜擢すると、本人にとってもやりがいある仕事になります。ただし、「自分に近づく危険に気づくのが遅い」という側面もあるため、仕事があまりに調子よく進んでいるときなどはリスクチェックを促してあげるとよいでしょう。
(3)「Conscientiousness(誠実性)」
「誠実性」は、目の前で起きた出来事や定められた目標に対して、どう対応していくかを示します。
このスコアが高い人は、一点集中型で、目の前の問題解決や目標達成に向けて誠実に取り組む性質を持っています。長期的な計画を立てて遂行することも得意で、公私ともに安定感のある人として頼られる存在になりうるでしょう。しっかりテーマを与えて仕事に取り組んでもらうことが大切です。
一方、スコアが低い人は、注意散漫で飽きっぽい性質を持っていたりもします。ただし衝動的な分、さまざまなものに興味を持ち、行動力を発揮する能力も兼ね備えているため、新規開拓や新規事業などにおいて力を発揮してもらう場を検討するのもよいですね。
(4)「Agreeableness(協調性)」
「協調性」は共感能力、チームワーク力と言い換えることができます。
このスコアが高い人は共感能力に優れ、面倒見のいい人物として周囲から信頼されているでしょう。このタイプの部下には、部署内で折々発生する各種のプロジェクトワークで取りまとめ役の担当リーダーを務めてもらいたいですね。
一方、スコアが低い人は、相手の感情に寄り添うのが苦手で、周囲の人の誤解を招くことも少なくありません。ただし同時に、このタイプは理詰めで物事を判断し、すばやく決断する能力を備えているため、カリスマ性のあるリーダーとなる可能性も秘めています。いわゆる一匹狼タイプなので、個人の仕事力が高い限りは、大きなゴールだけ定め、あとは委譲して自由にやらせてあげることで爆発力に期待できるでしょう。
(5)「Openness(開放性)」
「開放性」は、想像力の広がり、拡散的思考、芸術的感受性を示します。
このスコアが高くなればなるほど、感性を刺激する創造的なものや抽象的なもの、芸術的なものへの関心が強くなっていきます。まだ見ぬ新しい世界に対して、好奇心を持って行動に移すような、新しいものを求める“探求性”があるタイプですので、担当している職務の中に、何か適した要素が織り込まれているかどうかを確認し、業務をアサインしましょう。そのような要素がなければ、このタイプは仕事がつまらなくなってしまいます。
逆に、このスコアが低ければ低いほど、安定志向で保守的な性質が表に出てきます。ルーティンを担当してもらうのには適していると言えますが、あまりに保守的で仕事の成長が見られなかったり、業務の改善力に欠けていたりした場合は、適度にチャレンジさせることも忘れないようにしましょう。
いかがでしょうか。上記の通りにビッグファイブを使うことで、経営幹部のマネジメント力を底上げすることが可能です。また、経営幹部自身のビッグファイブを把握し、役員・上席マネジメントとしてどの役割を担ってもらうかを決めることも効果的でしょう。
さらにチームとしてみた時に、自社の事業成功のために欠かせない因子や、チームの業務遂行において優先順位の高い因子を探してみましょう。事業内容や業務内容と、構成員のパーソナリティとがしっかり噛み合っている組織が、活気ある強い組織です。ぜひチェックしてみてください。
適性因子の活用において注意すべきは「あくまで目安である」こと
改めてですが、本稿で紹介した適性因子は、自分や他者を理解するためのものであり、傾向を類推するもの、およびそれに対して望ましいと思われるコミュニケーションを図るためのものです。自分や他者の性格タイプを把握するのに便利なツールですが、HRデータマネジメントがトレンドである昨今では、「適性因子だけでその人の性格や行動がすべて決定づけられる訳ではない」ということに留意しなくてはいけません。経験による変化や、加齢に伴う経年変化もあります。お互いが、どのような特質を持ちつつ、それをどのように活かして働いていくのか。自社の経営幹部には、そうしたことも頭の片隅においてマネジメントにあたってもらうことが望ましいです。これは、組織エンゲージメントの観点からも、リモートワークやワーケーションなどの導入、またダイバーシティの関連からも、これからの時代に非常に大切なことだと言えるでしょう。
なお、ビッグファイブは、サイト上で無料診断できるものも公開されています。数分で完了し、すぐに結果が見られますので、自己理解の一つとしてぜひ受検してみてください。