前回は、人財マネジメントの本質とは何かを理解しました。高いパフォーマンスを発揮する人物を大切にするだけでは真の人財マネジメントにはなりません。短期の事業戦略は達成できても、中長期的な経営戦略を実現する人物かどうかは分からないからです。
前回は、人財マネジメントの本質とは何かを理解しました。高いパフォーマンスを発揮する人物を大切にするだけでは真の人財マネジメントにはなりません。短期の事業戦略は達成できても、中長期的な経営戦略を実現する人物かどうかは分からないからです。
また、長期的雇用を前提とした、事業戦略を実現する人物と同時に、企業の成長戦略にもマッチした人物を採用、配置、処遇という総合的で、統合的な人事制度と人財マネジメントの実現が必要であることを理解してきました。
今回は、タレントマネジメントを実現させるための戦略について前編・後編の2回に分けて説明したいと思います。
戦略を策定する前にまず、タレントマネジメントを導入する目的、意義を明確にしておく必要があります。さらに人事部の役割についても、新たな役割をどこまで任せるか、経営としての決断が求められます。まず前半では、戦略を立案するための限定条件について説明します。
また、長期的雇用を前提とした、事業戦略を実現する人物と同時に、企業の成長戦略にもマッチした人物を採用、配置、処遇という総合的で、統合的な人事制度と人財マネジメントの実現が必要であることを理解してきました。
今回は、タレントマネジメントを実現させるための戦略について前編・後編の2回に分けて説明したいと思います。
戦略を策定する前にまず、タレントマネジメントを導入する目的、意義を明確にしておく必要があります。さらに人事部の役割についても、新たな役割をどこまで任せるか、経営としての決断が求められます。まず前半では、戦略を立案するための限定条件について説明します。
タレントマネジメントの導入目的を明らかにする
タレントマネジメント導入の目的とは、企業における人財の在り方を問うものであり、原点となるものです。この目的を明確にすることは、単にタレントマネジメントという箱物を導入するのではなく、この仕組みを通して経営者として何を実現させたいのか、なぜ実現させたいのかを明確にすることになります。タレントマネジメントを導入し、構築していくことは人事部の責任ですが、従業員を人財として、どのような価値として経営として活用するのか、それを長期的な視点を持って、将来どのような姿になることを目指しているのかを明確にすることは、経営者の基本的な役割といえます。
これまで、タレントマネジメントの一般的な意味を、定義などを通して理解することはできました。今度は、これらの仕組みを使って、自社で何を実現したいのかを決めていきます。
そのためにはまず、経営者としてタレントマネジメントの意味、意義、目的は何か、この仕組みをどのように社内で活かすのか、これを明文化しておく必要があります。さらに、タレントマネジメントを導入し、構築し、運用管理するためには、人事部の役割も見直す必要があります。
人事部の新たな役割についても、すでに理解してきました。先のタレントマネジメントの導入と同様に、今度は自社の人事部について検討をしなければなりません。人事部にどのような役割を期待しているのかを明確にすることも、経営者の基本的な役割といえます。
人事部の現状確認と分析
タレントマネジメントの意義と併せて、人事部の新たな役割(あるべき姿)が明文化されたら、次は現状の確認と分析が必要となります。この作業そのものは、人事部に任せます。人事部のあるべき姿と現状を比較し、差異を確認します。さらに、人事機能、人事プロセスにおける確認、人事部の要員の能力、経験、価値観、資格、知識などにおいても力量分析をします。力量分析は、要員別の分析となります。
さらに、SWOT分析による外部環境と内部環境の確認と分析も行います。ここではSWOT分析の詳しい解説は割愛しますが、人事部のあるべき姿を十分に理解したうえで、SWOT分析を行います。人事の取り巻く環境も変化が激しく、それらを漏れなく認識していることも確認します。
これらの分析を通して、どのような課題があるのかを整理し、重点課題とその施策を検討します。以上をまとめてみると、
Step1 人事部の新たな役割(あるべき姿)を具現化する
Step2 人事部の現状確認(人事機能、人事プロセス)
Step3 人事要員の力量分析を行う
Step4 SWOT分析により、外部環境と内部環境を分析する
Step5 分析結果の課題を整理し、重点課題とその施策を検討する
経営戦略、各事業の戦略の確認と分析
人事部の役割、機能、要員力量の現状分析ができたら、次は、人事部の顧客である従業員、マネージャ、経営者という3つの異なるニーズも把握し、ニーズに対応するための課題を整理し、検討します。経営者ニーズ、マネージャのニーズを確認する際は、経営目標・戦略、各部門の事業目標・戦略、中期計画、事業の成長戦略の確認と理解、分析を行います。組織図とその構成要員の把握も行います。従業員のニーズの確認も行います。
タレントマネジメントの対象は、全従業員です。経営者だけでなく、また、優秀な従業員だけでもなく、マネージャだけでもありません。すなわち、人事部の顧客は経営者、マネージャ、従業員という顧客で構成されています。本社の従業員だけでなく、グローバル、グループに及びます。
Step1 人事の顧客(従業員、マネージャ、経営者)ニーズを把握する
Step2 経営目標・戦略、各部門の事業目標・戦略、中期計画、成長戦略を理解する
Step3 課題を整理し、重点課題に対する重点施策を検討する
全従業員の情報の把握と分析
タレントマネジメントの対象とする従業員は全従業員です。人事部は、全従業員の必要な情報を正確に把握する必要があります。適材適所に基づいた人事異動、新規事業の担当者、プロジェクト結成の担当者などでは特に重要です。それぞれの従業員の特性や強み、キャリアパス、業績、経験、資格などを考慮し、配置させることが求められるからです。さらに、ITを使うことができれば、タイムリーに正確な情報を検索することができるので、人事部が経営に対して、マネージャに対して、戦略的パートナーとなることができます。
たとえば、経営で新規事業を立ち上げる時、誰が適切かを短時間に決めなければなりません。今までは、本社にいる経営陣の記憶力を頼りに、彼らが指名する人に任せていたかもしれません。
しかし、グループ企業にも、海外拠点の企業にも適任者がいるはずです。
企業規模が全国、グループ企業、さらに、海外拠点の企業から適任者を選別し、全体最適化するとなると、ITの力が必要となります。
いずれにしても、タレントマネジメントの目的が、グローバル、グループ企業を対象とし、その従業員の最大活用を目指すのであれば、どのような情報を把握する必要があるのかを十分に検討し、それを構築しなければなりません。そして、従業員の現状の能力レベル、経験、知識、パフォーマンス、適性、強み・弱み、価値観、キャリアパスなどの個人別の正しい情報の把握が必要となります。
求める人物像と現状の力量を分析することにより、採用の検討、教育研修の検討、人事異動の検討、処遇の検討などにつながります。
Step1 求める人物像を明文化する
Step2 求める人物像で定義された項目毎に全従業員の情報を収集し、登録する
Step3 差異に応じて、採用計画、教育研修計画などの検討資料とする
次回の第8回は、タレントマネジメント戦略の本質の後半として、タレントマネジメント戦略の構成について解説します。