昨今、人手不足による業務負担の増加を背景とした、長時間労働を削減する打ち手の一つとして、RPAが脚光を浴びている。RPAとは、「Robotic Process Automation」の略で、ソフトウェア型ロボットによる、PC業務自動化の取り組みのこと。これにより主にバックオフィスにおけるホワイトカラー業務の代行を担うことが期待できる。金融業界での入力作業などで導入が先行している印象だが、民間のみならず自治体でもRPAの活用が進められつつある。RPAツールを使いこなせる人材育成にまつわる課題など、複数の事例からRPA活用の今を追う。
2018年、RPAでビジネスは変わるか?地方、行政にも拡がる「業務自動化」

人材サービス事業を運営するヒューマンリソシア株式会社は、2017年11月に東京・銀座、2018年1月には大阪に、それぞれRPAを運用できる人材を育成する「RPAトレーニングセンター」を開設。今後も2018年6月までに、北海道から沖縄まで全国9拠点を設けることを発表している。各センターでは、操作手順を記録するシナリオ作成サポート担当を配置し、RPAの導入支援、管理者の育成、スタッフ派遣によるオンサイトでのRPA活用支援まで、ワンストップでRPAを活用した生産性向上支援サービスが提供される。

また、総合人材サービス・パーソルグループのパーソルプロセス&テクノロジー株式会社は、2017年4月にRPAの専門組織を立ち上げ、首都圏や関西エリアを中心とした企業にRPAのコンサルティングや導入、運用のご支援をしてきたが、都市圏以上に労働力不足が深刻化する地方においてもRPA導入をサポートするべく、2018年2月に仙台エリアでのサービス提供を開始。地方でRPAを普及させるのに足枷となる、ベンダーの出張費用負担や、物理的距離によるトラブル発生時のタイムラグなどの問題を解消することが期待されている。

民間企業だけでなく行政を担う自治体にも、RPA導入の波は広まっている。茨城県つくば市では、2018年1月から、株式会社NTTデータ、株式会社クニエ、日本電子計算株式会社と共同で、自治体業務においてRPAを活用するための研究が開始されている。この共同研究では、つくば市役所職員のアンケートやヒアリング結果をもとに、定型的かつ膨大な作業量が発生する業務を抽出し、業務量、難易度、RPAの作業特性等を評価したうえで、つくば市の既存システムにRPAソフトを導入。職員の稼働時間の削減やミスの軽減による業務品質向上等、改善効果の測定を行い、RPAの適合可能性の高い業務や処理を分析している。将来的には、こうしたつくば市のRPA活用をモデルケースとして、自治体向けRPA支援プログラムを構築する予定だ。

他にも、現在、ソフトバンク株式会社と株式会社コージェントラボが共同で、RPAとAI(人工知能)技術を活用した手書き書類のデジタル化ソリューションを開発中だ。顧客の契約申込書やアンケート回答、問診票、診断書、テスト答案などのような、手書きの文書がデジタルデータ化されれば、RPAによる業務自動化の範囲は格段に拡がるだろう。このように、AIをはじめとするさまざまな分野と連携研究・開発することで、今後RPAは、さらなる適用範囲の拡大が期待される。これまで想像もできなかった社会の到来が、すぐそこまできている。

この記事にリアクションをお願いします!