前回も書きましたが北陸の、というか金沢大学の学生は、今年も就活へのスタートが遅いようです。2月22日に実施したガイダンスに参加した学生の中から、インターンシップ関連も含めて合同企業説明会に参加したことのある学生を確認したのですが、おおよそ全体の4割弱でした。今年も3月の広報解禁と同時に就活を始める学生が多くなりそうです。
さてそんな状況の中、地元の若手人事担当者の皆様のご協力のもと、「就活なんでも相談会」というイベントを学内で開催いたしました。
広報解禁の直前のこの時期に、就活に関する悩み事や困りごとを若手人事の皆さんと一緒に考えてみよう、という趣旨で実施したのですが、実は、真の狙いは就活にネガティブな印象を持っている学生のマインドを前向きに変えよう、というものでした。
「就活に前向きになれないマインド」というのがどんな状況か、みなさんはイメージできるでしょうか?就活そのものが面倒であるとか、楽しい学生生活が終わるのがいや、とかいろいろあるのですが、社会に出ることそのものに対して、言いようのない恐怖感を持っている学生がとても多いように感じます。たとえば正社員になれなくて、もし非正規で働くことになったらどうしよう・・とか、就活に失敗してフリーターになってしまったらどうしようとか、「道を外れることに対する言いようのない恐怖と不安」と言い換えることができるかもしれません。
何か新しい環境に身を置くことになった場合、そうした不安が全くないはずはありませんので、このコラムを読んでいらっしゃる方々もそうした心理を理解できないことはないと思います。学生と色々話をしていて感じるのは、本当にこうした不安の塊に押しつぶされそうになっている学生がとても多い、ということです。ではなぜ就活や働くことに対してこんなに不安になってしまうのでしょうか?
ひとことで言うと、これまでの人生では道を外れていけない、道から外れないように親や先生のいうことを素直に聞いてその通りにしなければならない、としつけられてしまっているからだと思います。これまでは、周囲の大人たちに素直に従うようにしつけられ、そこから外れると叱られ、場合によってはいじめの対象にすらなってしまうような環境で過ごしてきた若者が、就活になると「正解探しをするな」、「自分の人生は自分で考えろ」と、就職ガイダンスで私たちから言われ、一方で自宅に帰ると、今までと同じような「親の期待に応えるような会社」に入ることを、親から暗に示唆されているような状況になっている学生も多いように感じます。これまで「こうやって生きていけばよい」と約20年間、周囲から刷り込まれ、そして周囲からの期待に応える形で信じてやってきた生き方や価値観とは全く別のことを言われるだけでなく、一方ではこれまで通りの生き方を示唆されているわけですから、これはもう何が何だか分からなくなるのも当然といえば当然ですよね。そしてそんな面倒くさいことをやらないといけない就活に対して恐怖感を持つことは、これも当たり前といえば当たり前のようにも感じてしまいます。
さてそうした不安を取り除くために何か良い方法がないか、ということで今回のイベントをやってみたわけですが、参加学生の中にはやはり前述のような不安を持った学生がとても多かったようです。まずは3-4人くらいのグループの中で、そうした各自が不安に思っていること、皆に相談したいことを出し合ってもらったのですが、業界の絞り方について不安を持っている学生もいれば、自分に合う会社の見つけ方について不安を持っている学生もおり、なかにはブラック企業につかまってしまったらどうしよう、という不安を持っている学生もいたりと、不安の理由はバラバラでした。こうした情報をシェアすることで、自分ではあまり気にならないことでも他人にとっては不安要素になることがある、という事実認識や多様性に気づけたようで、言い換えれば「正解は一つではない」ということへの認識を深めることになったように思います。
その中でテーマを決めて15分間、そのテーマについて人事担当者も含めていろいろ話をする、というスタイルで座談会を進めました。人事担当者には、一人で説明しない、説教しない、正解らしいことを言わないことと、出来るだけ学生同士で話を続けるような関わり方を持ってもらうこと、圧迫にならぬよう気をつけながら学生の発言の真意をさりげなく掘り下げ、発言した学生にも気づきを与えるような関わる、などを事前にお願いして実施しました(人事担当者向けには事前トレーニングも実施しました)。
いわゆるファシリテーションを意識した立ち居振る舞いを行っていただいたのですが、最初は学生も人事担当者も慣れないせいか、ちょっと雰囲気が硬かったものの、慣れてくるとどんどんいろんな話が出てきて、ものすごく盛り上がる形で終了することができました。
私も実際に学生たちと話をしてみたのですが、そこでわかったことがあります。本学の学生の場合は、ある程度論理的な思考で課題解決を行う思考プロセスは、これまでの学生生活の中で醸成できています。したがって自分の不安の原因を分析し、客観的に課題解決の思考プロセスに乗せて考えるように仕向けること、次にさまざまな他人の意見や視点をインプットすることで硬直化し、思い込んでしまっている自分の思考や視点をうまくストレッチするきっかけを与えることができると、学生側で自律的に不安を乗り越えるような思考が動き始めたように感じられました。
今回はあまり時間がなかったのでその部分について習慣化させるところまでの動機づけは与えられなかったように思いますが、そうやって不安を乗り越えていくという自律的な思考習慣が身についてくると、おそらく就活に対する恐怖感やマイナスイメージもかなり払しょくされるのではないか、という手ごたえを感じることができました。
また今回は、就活開始直前というタイミングで実施してみたのですが、もう少し早い時期にもこうした機会をつくるとよいかなと、感じています。とはいえ、気づきの場を設定する上では、ファシリテーションスキルを持った人材を育てていく必要があるのですが、これはこれでなかなか育成に手間と時間がかかるなあ・・・という印象です。
キャリア教育における一つの課題ととらえ、継続的に取り組んでいきたいと考えております。
広報解禁の直前のこの時期に、就活に関する悩み事や困りごとを若手人事の皆さんと一緒に考えてみよう、という趣旨で実施したのですが、実は、真の狙いは就活にネガティブな印象を持っている学生のマインドを前向きに変えよう、というものでした。
「就活に前向きになれないマインド」というのがどんな状況か、みなさんはイメージできるでしょうか?就活そのものが面倒であるとか、楽しい学生生活が終わるのがいや、とかいろいろあるのですが、社会に出ることそのものに対して、言いようのない恐怖感を持っている学生がとても多いように感じます。たとえば正社員になれなくて、もし非正規で働くことになったらどうしよう・・とか、就活に失敗してフリーターになってしまったらどうしようとか、「道を外れることに対する言いようのない恐怖と不安」と言い換えることができるかもしれません。
何か新しい環境に身を置くことになった場合、そうした不安が全くないはずはありませんので、このコラムを読んでいらっしゃる方々もそうした心理を理解できないことはないと思います。学生と色々話をしていて感じるのは、本当にこうした不安の塊に押しつぶされそうになっている学生がとても多い、ということです。ではなぜ就活や働くことに対してこんなに不安になってしまうのでしょうか?
ひとことで言うと、これまでの人生では道を外れていけない、道から外れないように親や先生のいうことを素直に聞いてその通りにしなければならない、としつけられてしまっているからだと思います。これまでは、周囲の大人たちに素直に従うようにしつけられ、そこから外れると叱られ、場合によってはいじめの対象にすらなってしまうような環境で過ごしてきた若者が、就活になると「正解探しをするな」、「自分の人生は自分で考えろ」と、就職ガイダンスで私たちから言われ、一方で自宅に帰ると、今までと同じような「親の期待に応えるような会社」に入ることを、親から暗に示唆されているような状況になっている学生も多いように感じます。これまで「こうやって生きていけばよい」と約20年間、周囲から刷り込まれ、そして周囲からの期待に応える形で信じてやってきた生き方や価値観とは全く別のことを言われるだけでなく、一方ではこれまで通りの生き方を示唆されているわけですから、これはもう何が何だか分からなくなるのも当然といえば当然ですよね。そしてそんな面倒くさいことをやらないといけない就活に対して恐怖感を持つことは、これも当たり前といえば当たり前のようにも感じてしまいます。
さてそうした不安を取り除くために何か良い方法がないか、ということで今回のイベントをやってみたわけですが、参加学生の中にはやはり前述のような不安を持った学生がとても多かったようです。まずは3-4人くらいのグループの中で、そうした各自が不安に思っていること、皆に相談したいことを出し合ってもらったのですが、業界の絞り方について不安を持っている学生もいれば、自分に合う会社の見つけ方について不安を持っている学生もおり、なかにはブラック企業につかまってしまったらどうしよう、という不安を持っている学生もいたりと、不安の理由はバラバラでした。こうした情報をシェアすることで、自分ではあまり気にならないことでも他人にとっては不安要素になることがある、という事実認識や多様性に気づけたようで、言い換えれば「正解は一つではない」ということへの認識を深めることになったように思います。
その中でテーマを決めて15分間、そのテーマについて人事担当者も含めていろいろ話をする、というスタイルで座談会を進めました。人事担当者には、一人で説明しない、説教しない、正解らしいことを言わないことと、出来るだけ学生同士で話を続けるような関わり方を持ってもらうこと、圧迫にならぬよう気をつけながら学生の発言の真意をさりげなく掘り下げ、発言した学生にも気づきを与えるような関わる、などを事前にお願いして実施しました(人事担当者向けには事前トレーニングも実施しました)。
いわゆるファシリテーションを意識した立ち居振る舞いを行っていただいたのですが、最初は学生も人事担当者も慣れないせいか、ちょっと雰囲気が硬かったものの、慣れてくるとどんどんいろんな話が出てきて、ものすごく盛り上がる形で終了することができました。
私も実際に学生たちと話をしてみたのですが、そこでわかったことがあります。本学の学生の場合は、ある程度論理的な思考で課題解決を行う思考プロセスは、これまでの学生生活の中で醸成できています。したがって自分の不安の原因を分析し、客観的に課題解決の思考プロセスに乗せて考えるように仕向けること、次にさまざまな他人の意見や視点をインプットすることで硬直化し、思い込んでしまっている自分の思考や視点をうまくストレッチするきっかけを与えることができると、学生側で自律的に不安を乗り越えるような思考が動き始めたように感じられました。
今回はあまり時間がなかったのでその部分について習慣化させるところまでの動機づけは与えられなかったように思いますが、そうやって不安を乗り越えていくという自律的な思考習慣が身についてくると、おそらく就活に対する恐怖感やマイナスイメージもかなり払しょくされるのではないか、という手ごたえを感じることができました。
また今回は、就活開始直前というタイミングで実施してみたのですが、もう少し早い時期にもこうした機会をつくるとよいかなと、感じています。とはいえ、気づきの場を設定する上では、ファシリテーションスキルを持った人材を育てていく必要があるのですが、これはこれでなかなか育成に手間と時間がかかるなあ・・・という印象です。
キャリア教育における一つの課題ととらえ、継続的に取り組んでいきたいと考えております。
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