しかし、この5W1Hの中で抜けがちなものがあります。それはWhy(なぜ)です。
この指示の中にはWhyは一言も入っていません。そのため、指示されたメンバーからすると「なぜ(Why)新商品を専務に説明するのだろうか?」と思う人もいるはずです。
どうして、Why(なぜ)を言わないのでしょうか?
◆「分かっている」という思い込み
一つ目の理由は、「それくらい、メンバーも分かっているだろう」という思い込みです。自分が分かっていることは、メンバーも分かっていると思いがちなのです。しかし、そうとは限りません。メンバーは指示された意味が分からず、「なんで、こんなことをやらなくてはいけないのだ・・・」と困惑しているかもしれません。もしかすると、「意味が分からないことをやらされている」と強い不満を抱いていることさえ考えられます。
◆指示だけになっており、「育成」になっていない
二つ目の理由は、「指示=やらせる」という感覚で止まっているということです。そこには、育成の観点が入っていません。「指示=やらせることで育てる」という感覚の上司は指示の中にWhy(なぜ)を入れることを意識します。
以前ある会社で、退職する直前の若手社員に「なぜ辞めるのか?」と理由を聞いたところ、「上司から意味の分からない指示が多く嫌気が指した」と言っていました。どのような指示か聞いたところ、「今日は、〇〇駅付近のビルに飛び込み営業してきてくれ」と言われたとのこと。私が若手の頃は、そのような上司の指示は日常茶飯事だったので、「え?それで辞めるの・・・」と少しびっくりしました。ただ、確かに育成の観点はありません。
◆メンバーを育成するなら、「Why」を意識した指示を
本当に育成を考えているなら「今日は、〇〇駅付近のビルに飛び込み営業してきてくれ。あの辺は、メーカーが多いから話をするだけで勉強になる(Why)。あと、今の時期に飛び込み営業をやって説明を繰り返すと、商品知識が早く身に付く(Why)。慣れないうちは大変だと思うけど、勉強のつもりで!」等と、Whyを伝えるのではないでしょうか。
特に、若手育成で悩んでいるマネジャーと話をすると、自分自身が体育会系で育ち、「やって当然」という感覚でメンバーに指示を出している人も多いようです。Whyが伝わらずにメンバーが納得せずに動きを起こさなかったり、モチベーションが下がってなかなか成長しないのです。
「なぜ、その仕事をやるのか」「なぜ、その行動が成長につながるのか」「なぜ、今日中にやらないといけないのか」等、Why(なぜ)を考えてメンバーとコミュニケーションを図っている上司は、メンバーを成長させることができます。さらに、「この上司の言うことは納得感がある」「私たちのことを考えてくれている」と感じてもらえ、信頼関係も深まるはずです。
5W1Hの「Why」はただのお飾りではありません。私たち上司にとっては最も重要なポイントです。
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