第1章では、「新卒応募者の変化」と題し、応募者の減少、採用スケジュールの変化、応募者の価値観の変化について述べてきました。第2章では、そうした変化を受けてどうすれば「選んでもらえる企業」となるかについて考察します。

第2章 「選んでもらえる企業」となるための施策

1.「認知度を上げる」ための施策
 多くの企業が応募者を集めるために様々な施策を行っていますが、ここではユニークな選考方法を採用し、認知度を上げた企業事例をご紹介します。

・カフェテリア採用(三幸製菓株式会社)
 「就活は選べる時代へ」をキャッチフレーズに「カフェテリア採用」を実施しています。これは、一つの選考方法に拘らず、多様な募集方法で応募者を集めるもので、例えば、
◆「遠距離就活」・・最終選考まで採用担当者と応募者が直接会わずに、Skype等を利用し選考を行う。
◆「出前全員面接会」・・「応募者5人」と「面接会場確保」を条件に、面接担当者が全国どこでも出張して面接を行う。
といった選考を行っています。
第3回 「変革期の新卒採用対策」~「選んでもらえる企業」になるために~第2章
これにより、先進企業として人事労務専門書籍で大きく取り上げられるなど認知度を向上させています。

・ぜんいん人事部化計画(株式会社カヤック)
 社員が人事部員として、「ファストパス(書類選考免除券)」や、「ラストパス(いきなり最終面接に招待することができる券)」を持ち、応募者を集めた結果、社員紹介による面接数が2倍に増え、中途採用社員の採用コストが25%削減されています。この施策の結果、ヤフーニュースに取り上げられた他、人事情報サイトの年間アワードを受賞し、認知度を向上させました。
第3回 「変革期の新卒採用対策」~「選んでもらえる企業」になるために~第2章
以上から、企業が応募者を集めるためには、採用選考の場面で、
 ①企業としてのわかりやすさやユニークさの追求(例.カヤック)
 ②応募者目線での採用活動(例. 遠距離就活、出前全員面接会)
 ③選考方法の複線化=価値観多様化(ダイバーシティ)対応
など、他社と差別化できる様々な取り組みを行ったうえで、SNS・マスコミなどによる採用活動の拡散を行うことが有効であると考えます。

2.「応募者満足度を上げる」ための施策
 応募者は、選考期間短縮により今までのように1社に対して長い時間をかけることができなくなるため、「拘束時間が長い」「選考期間が長い」「交通費・宿泊費がかかる」「特殊な採用試験を行う」など応募者に負担をかける選考を行う企業・団体は敬遠します。(実際に選考期間が長くなる程、応募者の辞退率は上昇します。)従って、面接から採用決定までのプロセスを短くすること(ファスト化)が今後重要になってきます。

 具体的に採用プロセスを短くする手法としては、
 ・Skype等Web面接の活用
 ・面接回数の見直し
 ・採用アウトソーシングの活用による業務の効率化
 などが考えられます。
第3回 「変革期の新卒採用対策」~「選んでもらえる企業」になるために~第2章
また、文化放送キャリアパトナーズの『新卒採用戦線 総括2015』によると、選考過程で不快だったことが原因で辞退した経験がある応募者は、2014年(26.6%)から2015年(31.8%)にかけて、5.2%増加しています。こうした辞退を避けるためには、応募者との接点全てで応募者に不快を感じさせないための対策が必要となります。経営トップを含め、面接官・リクルーターとして活動する社員に対して応対基準を設定し、遵守を徹底させることが必要と考えます。

 以上のことから、「選んでもらえる」企業となるためには、
 ・トップ/採用担当者/社員の顔が見える
 ・上から目線でない、応募者目線での選考
 ・知りたい情報が何でもわかる(オープン)
 ・応募者の負担が少ない。(ファスト化)
 ・選考プロセスの透明化&フィードバック(例.不採用理由)
 を行っていくことが重要であると考えます。

3.企業の留意事項
 以上、「選んでもらえる企業」となるための施策について述べてきましたが、企業の認知度が上がり、応募者が増えれば採用のミスマッチが発生するリスクは逆に高まります。

 第3章では、ミスマッチ採用を防ぐための採用選考について述べたいと思います。
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