この選択の自由は働く側にとっては、全てを許される自由と認識しがちですが、実際には働く側も十分に注意しなければ大きなリスクを負うことになります。しかし最も重要であるのは働く側のマインドの常識性の問題かもしれません。多くの人が転職を前提とする社会は“期間の定めのなき雇用”と相入れません。企業側は終身雇用と思い雇用契約を合意せざるを得ませんが、働く側はそうは思っていないのが現実なのです。最近では“リセット的退職”のような、今までの雇用側の育成や処遇努力を、選択の自由という偏った認識のみで、全くリセットしてしまうような転職も増えています。すでに働く側の倫理や常識も大きく変化してきているのです。これは円滑な労働移動という観点である意味好ましいととらえるのか、逆に円滑すぎることにより企業の長期雇用意欲が低下してしまうととらえるか微妙です。このことは正社員雇用がすでに終身雇用であること自体が実体として合わなくなってきていることと同じです。企業側からみると選択の自由をことさら強調すること自体に大きな問題を感じざるを得ません。
ブラック企業の発生は、このような雇用側と雇用される側の実体から発生したかもしれません。解雇権の自由なども視野に入れて雇用のあり方や考え方自体が見直されるタイミングにきているではないでしょうか。労働流動化時代における雇用責任とは何か、また働く側の倫理とは何かが問い直されているのではないでしょうか。
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