日本の人事制度、特に賃金制度の特徴の一つに、”貢献”と”報酬”の関係性が薄いことが挙げられます。新卒で企業に入社した後、若い段階では育成をしながら次第に戦力になっていきます。この企業への貢献の曲線は若年段階では年齢と共に上昇していきます。22歳で入社した場合、職種によって異なりますが、年齢を重ねるごとに高い伸びで成長していきます。成長の角度も高く、入社数年である程度の業務が担当できるようになります。若年段階では年齢の上昇に比較して成長度合いが比較的高い傾向にあるということです。しかし報酬は入社時点の能力レベルからの成長度合いに比較して、あまり高くない上昇と感じることが多いのではないでしょうか。20歳台などは22歳時点の貢献(能力)と報酬、29歳時点での貢献と報酬の関係はすこしアンバランスになっており、29歳時点ではそればりの仕事はできるものの報酬はそんなに高くないと感じます。
職種によって“一人前”になる年齢は異なりますので一概には言えませんが、例えば生産現場における技能職社員などは35歳~40歳くらいで成長のピークに達します。その後は成長しないとは言いませんが、成長度合いは低く、50歳を過ぎると逆に気力体力的にパフォーマンスは低下傾向になります。このパフォーマンスによる企業への貢献の曲線と報酬の曲線が大きく異なることが大きな特徴であり、これはよい効果とよくない効果の両方が発生することになります。よい効果とは昔の貢献の蓄積が現在の高い給与の源泉であるということで、年齢が高くなっても安心して働くことができるということです。マイナス面はその逆で、現時点での断面で見ると35歳で貢献度が高い社員の報酬は安く、不満に感じることになるでしょう。
いわゆる総合職的社員は、将来管理職や経営者に成長していくための職種ですが、この職種の成長曲線は技能職社員よりも成長ピークが遅いと想定されます。成長のピークは人による違いもありますので一概に言えませんが、45歳から55歳くらいが最も成熟した年代と思われます。従って年齢の上昇ととも50歳程度まで給与が上昇することはあまり問題ではありませんが、問題は55歳以上の社員の報酬でしょう。今後65歳雇用の中ではさらに55歳以降の報酬のあり方が問われます。

情報産業における技術者などは全く異なる貢献曲線です。特に先端の技術やアミューズメント系の職場などでは30歳くらいがピークであると思われます。その後は新しい技術に追いつくことが困難になり、また発想や企画などの鋭敏さも減退していきます。貢献をそのまま報酬に当てはめた場合には、30歳まで報酬が上昇し、その後に65歳まで報酬が低下傾向にあるということになります。

米国流の職務主義的な人事制度ではこのような問題は発生しませんが、長期雇用を前提とした日本の人事では、貢献と報酬の関係がストレートに連動しないのです。変化する経営環境、今後の人事のトレンドからは、今後は職務主義的な人事制度への要請が強くなります。貢献と報酬の関係性、連動性が変化していくともいえます。
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