「一生涯のパートナー」を実現するためのDSR経営

本日は「DSR経営と経営理念を具現化するための経営の枠組み」についてお話します。
まずは当社の紹介から。事業内容は生命保険事業です。2010年4月1日に相互会社から株式会社になり、同時に東京証券取引所に上場しました。従業員は約5万7000人で、内勤職員が約1万2500人、営業職員が約4万4500人です。経営理念は「お客さま一主義」。生命保険という商品特性上、お客さまとの一生涯にわたる長期のお付き合いとなるため「一生涯のパートナー」を目指しています。
さて、DSR経営とは何か。当社が目指す「一生涯のパートナー」という願いを経営に落とし込んだものであり、「Dai-ichi’s Social Responsibility」の略です。CSRのCをDに入れ替えたものです。
ただ、よく言われるCSR経営とはやや異なり、当社のDSR経営はむしろ本業をベースとしたものです。日本の生命保険の世帯加入率は90%を超え、いまや国民の生活を守るインフラです。生命保険事業そのものが、国民の皆様の生活を守るという社会的責任を負っていると考えています。

東日本大震災で社員の意識は一変した

理念を浸透させる組織を変える人材戦略
私は、以前、当社の株式会社化・上場に向けた「株式会社化推進室」という組織に3年半ほど在籍していました。「株式会社となり上場すると会社は大きく変わるだろう」という期待がありました。しかし、株式会社になっても、上場しても社員のマインドに大きな変化がなかったというのが私の実感です。
ちょうどそんなとき、2011年3月11日、東日本大震災が起こりました。被災エリアには86万人もの当社のお客さまがいらっしゃいました。その時は、全社を挙げて被災地のお客さまの対応にあたりました。
私自身、このとき本当の意味で当社の経営理念を深く理解できましたし、おそらく。多くの社員も同じように感じたのではないかと思います。つまり、自身や会社の存在意義を改めて認識し、お客さまや社会に対する業務を通じての貢献意欲のようなものがより高まったのだと思います。

新たな成長を目指して

株式会社化・上場の事後業務が収束した後、私は人事部に異動してきました。ご周知のとおり、生命保険事業は少子高齢社会の影響を大きく受けますから事業環境としては決して良好とは言えませんし、また株式会社化・上場を機に新たな成長を目指していく必要があると考えていました。
人事部に異動して、改めて、当社の社員象や特性を分析しましたが、良くも悪くも生命保険事業の特性が表れているということです。現場対応力やPDCAサイクルを廻し改善を実施するのは強いのですが、一方で、イノベーション的な思考や行動はそれ程得意でないということです。勿論、これまでの事業の中ではイノベーションが必要となるような環境が少なかったためだと思います。

「働き方変革プログラム」の取組み

理念を浸透させる組織を変える人材戦略
そこで、2012年度から本格的に取組みを開始したので「働き方変革プログラム」です。従来の延長線上で仕事をするのではなく、「働き方変革」「行動変革」を起こして、新たな価値を社会に、そしてお客さまに提供し、会社としても成長していこうという、まさにDSR経営を実現するための人財育成面からの取組みです。
まず、着手したのが、目標水準と評価基準です。従来の目標設定は、ともするとまさに過去(前年度)からの延長線上で設定する傾向にありましたが、各組織、各人の最終ゴール、つまり「あるべき姿」「ビジョン」を描き、そこから当年度の目標を設定するようにし、これを「チャレンジング目標」と定義しました。また評価基準も、「チャレンジングな目標」を定め、これに果敢にチャレンジし、「働き方変革」「行動変革」を遂げた社員を積極的に評価することとしました。

具体的な研修や表彰制度でモデルを示す

目標水準や評価基準を変更しただけで、直ぐに働き方や行動が変わるというものではありません。そこで、まず2012年度には、ほぼ全ての管理職を対象とした「働き方変革研修」というものを実施しました。毎回、70~80名の管理職を招聘し全14回にわたる研修です。そこで、そもそも何故こうした取組みを行う必要があるのか、から始まり、行動変革の視点として、例えば社外ベンチマークについても、「業界内をベンチマークした相対比較」から「業界外もベンチマークした絶対比較」というように、働き方変革、行動変革の視点、切口の共有化を図りました。また、当社の中で日常的にありがちな行動を「ケーススタディー」にまとめ、改めて自身の行動を客観的に振り返る、評価させるようなことを実施しました。受講者からは相当の批判や反発が予想されたのですが、意外にも「気づきが多かった」という感想が多く寄せられました。

研修以外にも、「働き方改革MVP」という表彰制度も始め、社内への普及、浸透を図りました。いろいろな評価ポイントがあるでしょうが、初回は「前例踏襲でない」「イノベーティブ」という観点から選びました。モデルを示すことで、多くの社員に具体的に働き方をイメージしてもらえればと期待しています。また、働き方変革を実践している主人公が活躍するマンガも全4巻、作りました。

進んで新しいことに挑戦する社員が育った

  • 1
  • 2

この記事にリアクションをお願いします!